落合陽一が偶然性の中で捉えたもの 写真展「情念との反芻 - ひかりのこだま、イメージの霊感 -」を開催

落合陽一が偶然性の中で捉えたもの 写真展「情念との反芻 - ひかりのこだま、イメージの霊感 -」を開催
2019/09/18 08:00

 ライカカメラジャパンは、メディアアーティスト・落合陽一さんの写真展 「情念との反芻 - ひかりのこだま、イメージの霊感 -」を、東京・銀座にあるライカプロフェッショナルストア東京にて2019年9月5日から10月12日まで開催している。開催に先立ち、プレス関係者向けの内覧会が行われた。

滲みやボケの表現

 今回の写真展「情念との反芻 - ひかりのこだま、イメージの霊感 -」では、解像度の高いカメラや優れた照明設備がたくさんある現代において、偶然性の中から生まれるような光の回り込みやボケ、物理現象の事態でそもそも滲んでいるようなものをどのように表現していくか、に力が注がれている。

 今年の1月に行われた写真展「質量への憧憬 ~前計算機自然のパースペクティブ~」ではおよそ1,000点の作品が展示されたが、それとは対象的に今回は、ライカM10-P、ライカM10-D、ライカSLと1966年製のライカレンズで撮影された17点に、プラチナプリント3点、立体作品1点をくわえた計21点が展示されている。

メディアアーティスト 落合陽一さん

メディアアーティスト 落合陽一さん

 メインとなる会場へ続く廊下に最初に飾られているのは、1964年に開催された東京オリンピックの公式記録映画の脚本。たまたま収録で野村萬斎さんが持っているものを、落合さんが撮影したものだ。そこから、複製絵画の村としても知られる深センの大芬村や、ロンドンの電話ボックス、マカオのイベントハウスなどが収められた作品が続いていく。

(C)Yoichi Ochiai『水の上を飛ぶ人』2019(写真手前)

(C)Yoichi Ochiai 『水の上を飛ぶ人』2019 ※手前の作品

 それらをたどりながら会場の中に入ると、右手にあるのは、中国・珠海の海を泳ぐイルカや香港の街並みなどの作品。先述した廊下に飾られた作品群と会場内にあるこれらの作品は、壁を一枚挟んでちょうど裏側にあり、この内側と外側では、ちょうど対になるかのように、それぞれ似たイメージの作品が掲載されている。

 たとえば、廊下にある『水の上を飛ぶ人』の裏側に配置されているのは、『計算機自然の天然蝶と人口蝶』。「飛ぶ」というイメージが一致しているからである。また、会場外にあるロンドンの電話ボックスが収められた『人の生活と石・電話ボックス・WIFI』の裏には、香港の熱気をありありと感じる『アジアの多彩な湿気の中で』が。こんな共通項にも注目だ。

 そのまま会場内を左手に進んでいくと、プラチナプリントの展示スペースがある。落合さんが小中学生と岡山の無人島にて行ったワークショップで、海洋プラスチックのブイを作品にした際、そのまま飾ると作品がいずれ朽ちて壊れてしまうため、それを写真に保存し、作品とした『光を纏う海洋プラスチック』などが飾られている。

 その展示スペースを背にしたちょうど正面のあたり、会場の中央にあるショーウィンドウには、落合さんが普段使っているというライカのカメラやレンズが収められている。工業製品としてのカメラそのものと出会うところから個展が始まるというのも、落合さんのひとつのこだわりだ。

 会場のさらに奥には、立体作品が展示されている。この展示物は、ポジフィルムのスライドプロジェクターと、カメラに触れることなくシャッターを押すことができるレリーズのカメラを用い、ロボットカムが映しだしたものをもう一度写真に撮りなおすことができるというもの。ちなみにここに映し出されているのは、落合さんのプライベートな写真たちである。

 今回の写真展で、いちばん大きなスペースに飾られている作品は、『複製画の村の少女』、『湿った光に絡みつく情念と自然』、『桟橋と記憶』の3つだ。

 奥にうっすらと写りこんでいる複製画の村で売られている絵や、植物と光がごちゃごちゃと混ざりあっている香港。インフラを象徴するかのような桟橋が自然に負けていく瀬戸内海。これらの作品には、社会的なコンテクストよりも、落合さんの「好き」や「おもしろい」が至るところに散りばめられている。ぜひ“細部まで”じっくり見てみほしい。

(C)Yoichi Ochiai『複製画の村の少女』2019
(C)Yoichi Ochiai『複製画の村の少女』2019
(C)Yoichi Ochiai『湿った光に絡みつく情念と自然』2019
(C)Yoichi Ochiai『湿った光に絡みつく情念と自然』2019
(C)Yoichi Ochiai『桟橋の記憶』2019
(C)Yoichi Ochiai『桟橋の記憶』2019

 会場の外にも展示は続く。会場をでて右側の廊下には、写真とともにコメントが添えられた5つの作品が展示されている。noteで書いている写真つきのブログと同じようなイメージだというそれらの作品の中には、秋葉原の電気街と、いまやそれ以上にきらびやかな電飾が並ぶ香港の町並みとが隣り合わせに飾られている。

(C)Yoichi Ochiai 写真手前は『ドラゴン花火の残骸と』2019

(C)Yoichi Ochiai 『ドラゴン花火の残骸と』2019 ※手前の写真

 なお、本写真展は10月12日(土)まで開催されており、今回の開催を記念し、展示しているプラチナプリントのプロセスを落合さんとともに体験するワークショップも、9月28日(土)に写真展会場のライカプロフェッショナルストア東京にて行われる。(※本ワークショップの受付は終了)

 年間で10万枚ほど写真を撮影するという落合さんが、偶然の中でしか撮れない不思議な光のふるまいや、滲んだ光にフォーカスしたという今回の写真展。その裏側にあるコンテクストに、思いを馳せてみてはいかがだろうか。