自治体が抱える課題とVTuberを活用した地方創生の今
少子高齢化や東京一極集中が問題視されるなか、多くの自治体が地方創生に力を入れています。地方ごとに多種多様な課題がありますが、さまざまな自治体が地方創生を図り、最新技術や流行・トレンドを取り入れた施策を打ち出しています。
たとえば福岡県福岡市は、精力的に地方創生の取り組みを推進した結果、多くの自治体が人口減少で悩むなか人口が増え続け、全国でも人口増加トップクラスの都市となりました。また千葉県流山市も同じく自治体が地方創生に力を入れており、近年の人口増加率の高さから知名度が上がった都市としても有名です。
そんななか、地方創生のための施策として「VTuberマーケティング」の活用も注目されています。VTuberマーケティングは、10代〜30代をターゲットとしたマーケティング手法であり、VTuberマーケティングによって若い世代への認知拡大や消費行動を促すことができます。
多くの自治体が街に若い人たちを誘致したり、移住を増やしたりする施策を求めています。そのため、「若年層」をターゲットとし、よりインターネットを介して大きな影響を及ぼす訴求手法として、VTuberマーケティングに期待が寄せられているのではないでしょうか。
ただ地方自治体が抱えている課題は、短期的に解決できるものではありません。地元の人たちの支持を得ながら長期的に取り組むことができなければ、街をあげて大々的に地方創生を行うフェーズまで至らないからです。
VTuber業界は、最初のバーチャルYouTuberが登場してから約8年、上場企業が生まれてからまだ3年も経っていません。まだ歴史の浅い業界であるため、短期的に見るとVTuberを活用した“地域を盛り上げる施策”は成功していますが、長期的に見れば明確に成功したと言える事例がないのが現状です。
とはいえ、VTuberを活用した地方創生の取り組みは数多く実施されていますので、今回の記事では「今後VTuberマーケティングを活用した地方創生は成功するのか」を考察したいと思います。
VTuberマーケティングを活用した地方創生の例
ここ数年、VTuberを活用した地方創生の取り組みは増えてきました。
近年の目立った事例としては「志摩スペイン村」が挙げられるでしょう。三重県のテーマパーク「志摩スペイン村」は来場者の集客に大きな課題を持っていました。そんななか、にじさんじ所属のVTuberである周央サンゴさんを起用したコラボ企画を実施したところ、地上波テレビで大きく取り上げられるなどの盛り上がりを見せました。
テーマパークへの来場者数も急増したことから、志摩スペイン村が所在する三重県志摩市に訪れる観光客数も増加し、市の観光客誘致に貢献しました。
埼玉県では、個人勢VTuberの春日部つくしさんを「埼玉バーチャル観光大使」として起用し、春日部つくしさん出演の動画やSNSを活用した発信活動やイベント・企画を開催しています。
観光大使の取り組みのひとつとして、生配信で埼玉市の特産品を春日部つくしさんが紹介したところ、販売サイトへのアクセスが集中しサーバーがダウンしてしまうといった事態に。またつくしさんがツアーガイトを行うバスツアー企画では、チケットが販売から1時間半で完売。全国各地から参加者が集まり、なかには韓国から参加する方もいらっしゃったそうです。
また沖縄県のご当地バーチャルタレントである根間ういさんは、VTuberとして配信活動を行いながら地域のイベントにも出演するなど、沖縄県にまつわる取り組みで活躍しています。根間ういさんの沖縄県内での認知度が66%というデータも発表され、県民からも非常に愛されるバーチャルタレントであることが明らかに。
その知名度を活かし、確定申告PRアンバサダーを務めたり、沖縄県産品受賞商品のPRを任されたりと、地域の魅力発信に貢献しています。
長崎県の魅力を発信するVTuberグループ「V-NYAREN」は、2024年に長崎創生プロジェクト事業として県に認可されました。VTuberグループが県の事業として認可されることは非常に珍しく、新しい取り組みとして話題になりました。