VTuberマーケティングを活用した「地方創生」の可能性と成功のカギ

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VTuberマーケティングを活用した地域創生が成功するワケ

 このようにVTuberマーケティングを活用した地方創生は少しずつ歩みを始めたばかりですが、こういった取り組みが地域に根ざすようになるための理解を得ること、そして結果を出していくことはできるのでしょうか。

 それに対して私は「ある一定の条件を満たせば可能」だと考えています。それはVTuber業界の“お隣さん”の業界で、成功事例が増え始めているからです。

 IPとタレントの両側面の良さを備えているVTuberですが、IP(アニメ・マンガなど)もネットタレント(YouTuberなど)も、地域に結果を残し始めた分野です。たとえば、人気アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』は、アニメ内の舞台が静岡県沼津市です。

出典:沼津観光ポータル
出典:沼津観光ポータル

 それをきっかけに、自治体や地元の事業者が協力して『ラブライブ!サンシャイン!!』とコラボした取り組みが頻繁に実施されている印象です。また作中には沼津市を彷彿させるようなシーンが多々見られることから、「聖地巡礼」として多くのファンが沼津市に訪れています。

 なかには、『ラブライブ!サンシャイン!!』好きが高じて沼津に移住する方も増えてきているようで、沼津市の地方創生にプラスの効果を与えていることがわかります。

 また人気YouTuberグループ 東海オンエアも地方創生に貢献しています。東海オンエアはチャンネル登録者数700万人以上の人気YouTuberであり、愛知県岡崎市を拠点に活動しています。実際に愛知県岡崎市で動画の撮影を行うことが多いことから、ファンは撮影場所を「東海オンエアの聖地」として巡礼。東海オンエアのファンの聖地巡礼の経済効果は、年間約40億円もの大きなインパクトを与えていると言われています。

 また自治体や地元事業者との取り組みも定期的に行われ、「岡崎市=東海オンエア」という印象が定着しつつあります。

 このようにVTuberの近隣とも言える業界では、地方創生が成功しているケースが多々あるため、VTuber業界でも地方創生を成功させる可能性があると考えています。

地方創生の成功に共通するふたつのポイント

 先ほど紹介したふたつの成功事例に共通するのは、「街全体が協力した取り組みを継続的かつ定期的に行っている」点です。

 まず『ラブライブ!サンシャイン!!』と静岡県沼津市においては、作中に登場するアイドルグループ「Aqours」を「燦々ぬまづ大使」に任命するほか、関連する企画やイベントが定期的に開催されています。また沼津市の至る所にポスターや看板が掲示され、「ラブライブ!サンシャイン!!」がプリントされたタクシーやバス、鉄道が街中を走行しています。

 ほかにも『ラブライブ!サンシャイン!!』のイベントを開催するそばで、沼津市への移住相談会を実施し、自治体がファンの沼津市への移住サポートを行ったりもしています。

出典:沼津市
出典:沼津市

 次に東海オンエアと愛知県岡崎市においては、東海オンエアを「岡崎観光伝道師」に任命するほか、岡崎市で企画やイベントが定期的に開催されています。なかでも、岡崎市は自治体が東海オンエアとの取り組みに非常に力を入れており、岡崎市役所では東海オンエアの特設ブース設置やYouTube動画の撮影協力も行っています。

 また自治体だけではなく、地域のお店も東海オンエアに撮影協力を行ったりと、地域で応援する体制が生まれつつあります。

 このように、ある地域を舞台にすることで聖地巡礼として観光客が訪れるようになり、それが地方創生にもつながりますが、それだけでは限界があります。自然に生まれるものだけではなく、何かしらの施策を定期的に打ち続け、またそこに行きたいと思ってもらうことがとても重要です。先ほど紹介した成功事例をみても、街全体が地方創生に協力的かつ定期的に施策が打てるような体制づくりが、地域創生の成功につながっていることがわかるでしょう。

 よって、VTuber業界でもそのような「体制づくり」が、本当の意味で地域創生を成功させるためのポイントなのではないかと考えています。