子どもも“クリエイター”になれる時代の現実
YouTubeやTikTokで、「うちの子が人気者に」「親子でSNS発信して収益化したい」といった夢を抱くクリエイターや親は少なくない。撮影機材も編集ツールも手軽になり、ウェブデザイナーやエンジニアといったクリエイティブ職の人々が、家庭で「ちょっとしたチャンネル」を立ち上げることのハードルもいっそう下がっている。
だがその一方、未成年のSNS出演が“仕事”になることで生じる問題が、今世界的に議論の的となっている。多くの親は善意から子どもの才能や楽しみを伸ばそうとしており、家族の活動としてSNSに取り組んでいるが、その過程で子どもの負担や法的なリスクを十分に認識していないケースも少なくないのだ。
子どもインフルエンサーの急増とその影響
SNSの普及により、かつてはテレビや雑誌の世界に限られていた“芸能的成功”が、一般家庭の子どもにも開かれる時代となった。YouTubeやTikTok、Instagramでは、幼い子どもがカメラに向かって元気に喋り、遊び、商品を紹介する動画が人気を博している。いわゆる「子どもインフルエンサー」だ。
たとえばオランダでは、6歳の少女クェニーシャ(Quenisha)が約28万人のフォロワーを持ち、ファッションブランドを展開。YouTubeチャンネル「De Bellinga's」は62万人超の登録者を抱え、家族ぐるみでコンテンツ発信を行っている。
こうしたファミリーチャンネルは広告や企業案件を通じて月に数千ユーロ以上の収益を得ているとされる。2020年比で子どもインフルエンサーの数は約3倍に増え、200人以上が登録されているとの報道もある。

だが、華やかさの陰で指摘されるのが、報酬管理の不透明さ、学業や自由な時間の制限、演出による精神的プレッシャー、そして何より「子どもが本当に同意できているのか?」という根本的な問題である。
オランダ政府の対応と規制の方向性
こうした状況に対し、2025年5月、オランダ内閣は明確な対応を打ち出した。社会問題担当国務長官ユルゲン・ノーベルは「子どもを利益モデルにすべきではない。これは“現代の児童労働”に近い」と警鐘を鳴らし、SNSでの子どもの露出が精神的健康に与える影響にも懸念を示している。また「単なる情報提供では不十分。罰則の強化を含む制度整備が必要だ」とも語る。SNS上の活動も正式に「労働」とみなす方針を示し、一定のルール整備に着手したのだ。おもな内容は次のとおりである。
- 保護者による搾取を防ぐため、収益の一定割合を子どもの信託口座に預ける義務
- 労働時間と露出時間の制限
- SNS活動の届け出義務