こんにちは!Cosmowayが組織するデジタルプロダクション「factory4」のUI/UXデザイナー新谷です。今回は「AIエージェントが生活に溶け込み始めたことにともなうUXの変化」をテーマに、身近な事例や社会的背景、そしてデザイナーとして直面している課題や可能性にフォーカスしました。
冷蔵庫から提案される朝、生成AIとともに「創る」時代の到来、そして私たちの暮らしの中に少しずつ忍び込んできた「AIとの生活感」(寄り添ってきた、と言うべきでしょうか)。そんな現在のリアルな風景を、紐解いていきたいと思います。
数年前、AIは“プロ”のツールだった
ChatGPTやMidjourney、CopilotといったAIサービスは、つい数年前まではエンジニアやデザイナー向けの未来を感じさせる「作業アシスタント」として扱われ、コードの補完、デザインのアイデア出し、UXリサーチの効率化などに用いられていました。それらは、専門知識を持つ人々だけが「上手く扱える道具」だったように思います。

しかし、状況は急変。マスメディアにも頻繁にAIが取り上げられ、画像生成「ジブリ風のわたし」がSNS上でバズり、買い物リストや旅行のプランに至るまでAIが作成することが珍しいことではなくなりました。気づけばAIは誰かの部下や同僚ではなく、家族の一員のように生活に溶け込み始めています。
そして、AIは“待っている”存在から“対話する”存在になり、それはスマホやPCの中だけでなく、リビングやキッチンのなかでも存在感を発揮するように。「AIが生活に寄り添う」ことが、文字通り「表現」になった今、私たちデザイナーはどのようなUXと向き合っているのでしょうか。
冷蔵庫に提案された朝に
「じゃがいもと玉ねぎ、そろそろ使い切りませんか?簡単カレーのレシピをご提案します」。そうやって、保存することだけが役割だった冷蔵庫が生活のリズムに寄り添ってくるような体験は、家電が「機能」から「関係」へと変わり始めた瞬間とも言えるのではないでしょうか。
10年前の自分に話しても、おそらく信じることはできないでしょう。しかし先述した例のように、冷蔵庫は単なる保冷庫としての役割を超えつつあります。AIが常駐し、野菜の種類を認識したり、在庫状況や消費スケジュールを管理したり、料理の提案までしてくれたりする。
そこにあるのは、SFのようなテクノロジーではなく、生活に自然に溶け込む「気づきのデザイン」です。AIはただの道具ではなく、私たちの日常に寄り添い、そっと背中を押してくれる「隣人」のような存在になりつつあります。
次の動画をご覧ください。AIで野菜を画像認識する様子です。
ブラウザの「窓」がAIエージェントになる日
かつてブラウザは、情報を取りにいく「窓」でした。Googleで検索し、複数のタブを開き、必要な情報を自分でピックアップしていく。そこには、ある種の「自力感」と「達成感」がありました。しかし現在はその窓が「エージェント」に変わり始めています。つまり、ユーザーが情報を「探す」のではなく、AIが「持ってくる」。しかも、その人の状況や履歴までもふまえてくれるのです。
たとえば「Perplexity」
Perplexityは、検索というよりも「会話型ナレッジアシスタント」がイメージに近いでしょうか。従来の検索結果の羅列ではなく、ウェブ全体から根拠のある情報をもとに要約し、質問を重ねることで文脈を深めてくれます。もはや検索バーは、対話型エージェントとの相談窓口になっています。

あるいは「XのGrok」
ブラウザとは少し異なりますが、X(旧Twitter)が開発したAIアシスタント「Grok」では、SNSのタイムラインに寄り添うような情報補足や要約を提供。ニュースやトレンドの背景解説をその場で読み取って提示してくれるほか、投稿文の意図を汲み取り、ユーモアや皮肉で返す「文脈的な賢さ」も話題です。従来の検索やコマンド入力とは異なり、「今見ているもの」をそのまま理解し、対話の中で手助けするというUXが、日常のSNS内に溶け込んでいます。

Edge CopilotやChatGPT Desktopなども
Edgeのサイドバーに常駐するCopilotやChatGPTのデスクトップ版のように、AIが「画面のそばに控えている」設計は、作業中ユーザーがふと頼りたくなった瞬間、邪魔にならずサッと手を差し伸べてくれる「距離感」がポイントです。これは、いわば「能動的に呼び出す検索」と「受動的に支えてくれるアシスト」の中間にあるUX。ツールとしての主張は控えめでも、ユーザーの思考や作業フローを中断させず、必要なときに自然と入り込む“気配のある”インターフェイスとも言えます。
UX設計の観点からは、
- 常時表示でも圧迫感を与えないUIの透明度や配置
- 入力フィールドにフォーカスした瞬間にだけ応答するミニマムなトリガー設計
- 「何ができるか」「今の文脈でどう使えるか」を自然に気づかせるライトなヒント表示
など、「UIの存在感と気配感の絶妙なバランス」が工夫のしどころです。
