電通、仮想市場でマーケティングを事前検証する「People Simulator」開発

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2025/05/30 12:00

 電通は、企業が行うさまざまなマーケティングのシナリオを事前に検証し、KGI(重要目標達成指標)達成に向けた効果的なマーケティングを実現する新たなシミュレーションモデル「People Simulator」を開発。顧客向けサービスとして提供を開始する。

 マーケティング基盤となる「People Simulator」において、生活者1人ひとりの消費行動を精緻に再現した仮想空間(市場)を構築し、事前に複数のマーケティングシナリオを多角的に検証。これにより、プランニングの高度化やマーケティングの投資対効果(mROI)の最大化に貢献する。

「People Simulator」イメージ
「People Simulator」イメージ

 昨今、企業のマーケティング施策においては適切な予算設定・配分がいっそう重要となり、mROIの向上が求められている。一方、生活者関連のデータは膨大で多種多様化しており、データを活用したマーケティング施策の高度化も着実に進展しているが、生活者の意識や行動の実態を十分に理解した上でのマーケティングは容易ではなかった。

 このため同社は、2005年から「人」を基点とした各種データにもとづくマーケット手法の開発を進め、自動車や飲料などの分野で検証を重ねることで、独自の手法を構築してきた経緯がある。そして誕生した「People Simulator」は、「エージェント・ベース・モデル(Agent-Based Model)」にもとづいて仮想市場を構築し、生活者1人ひとりを「エージェント」としてモデル化することで、複雑な消費行動を再現するシミュレーションモデルとなった。独自調査に加え、同社が保有する生活者のパネルデータや広告統計データを掛け合わせることで、生活者1人ひとりの意識や行動を精緻に再現できるため、市場全体の把握に加え、セグメントごとのシェアや個人の購入意向などの検証が行える。

 時間軸を考慮したシミュレーションも可能で、自社ブランドや競合ブランドのコンディションに合わせて、伝えるメッセージや施策の最適な順番などのプランニングに生かすことができる。プランニングの段階から、オフラインとオンライン、ブランドイメージの形成など、分断されがちな各マーケティング施策をシームレスなマルチシナリオとして比較検討することが可能なため、KGI達成に向けてもっともmROIが高いと見込まれるプランを選択することができる。

 さらに今後は、同社グループの大規模調査データと生成AI技術を掛け合わせて構築した「1億人のペルソナ」を仮想的に再現した「People Model」との連携を行い、さまざまなカテゴリーでモデル化を推進する。また同時に、「People Simulator」のAI化を図ることで、さらなる機能拡張を推進していく。

「People Simulator」を活用したアウトプット例
「People Simulator」を活用したアウトプット例

 同社は今後も、マーケティング活動を支援する技術やソリューションの提供を通じて、顧客の事業成長に貢献していく。