プロリクから生まれた3つの委員会
ひとつめの委員会は「CDC(Creative Design Committee)」だ。ゆめみのクリエイティブを創出することを目的とした委員会で、デザイナーを中心にエンジニアやプロジェクトマネージャーなど約50名のメンバーが所属している。
CDCの活動は「学ぶ」「Designトレーニング」「蓄える」の3つに分類される。第1ステップの「学ぶ」は、国内外の大規模カンファレンスに参加して刺激を受けるだけでなく、今回のような場で登壇する経験も含まれる。
Designトレーニングの一貫として行われた「アプリ作ろうぜ!」というイベントは、CDCのメンバーを3つにわけて自由にアプリの企画を行うというもの。企画段階から入らなければ真の意味でUI設計はできない、というデザイナーの課題意識から生まれたイベントであったが、そこで企画されたアプリが社内エンジニアの開発意欲をかき立て、ハッカソン実施の話も持ちあがっているという。
CDCの立ち上げメンバーである小川段氏が「個人的に最重要視している」と語るのが、第3ステップである「蓄える」だ。デザイナーは個別の案件にアサインされたり、各自がイベントに参加したりすることでナレッジを得るが、その学びをほかのメンバーやプロジェクトに共有し、個としてだけでなく“ゆめみ”という企業としても成長するためにはナレッジを蓄える必要がある。ゆめみではデザインデータベースを構築し、今春の運用開始に向けて動いているということだ。
「案件だけでも独学だけでも学べない、デザイナーだけでもエンジニアだけでも作り出せない、ゆめみらしいクリエイティブを創出したいという想いから、こういった活動をしています」(小川氏)
ふたつめの委員会は「mirai labs」だ。未来に向けた研究開発とビジネス開発を目的とし、最先端技術の研究や実験の場となっている。
アクションを起こすときは事業化を考えず、自身のときめきを優先することがこの委員会の基本方針となる。いままでに使ったことのないフレームワークや言語を使ってなにかおもしろいものを作ってみたいエンジニアや、商品化に向けた調査やユーザビリティテストを行いたい営業やデザイナー、ディレクターも歓迎される。実験はひとりで行うのではなく、自然と集まったメンバーや声をかけて集めたメンバーがプロジェクトをサポートする体制ができあがっている。
この委員会を通して実装されたプロジェクトのひとつが「社内CO2濃度測定サービス」だ。より良いオフィス環境を作ろうというメンバーの雑談から始まり、Alexaのスキルを用いてCO2の濃度を測定するアプリが作られた。そこから発展してグラフ化された測定結果がウェブ上に公開され、測定結果をしらせるSlack Botも作られた。
mirai labsのメンバーである池村和剛氏は、活動を通して「業務とはまったく関係のない技術に挑戦するチャレンジ精神と、普段の業務では関わることのない人たちと交流する機会を得た」と話す。
「これまでは、触ったことのない技術やツールを使ってモノを作る時に躊躇していましたが、今は『まずやろう』という精神で動いています。また、mirai labsではあえて普段関わることのない人たちとチームを組むようにしているので、彼らが日頃何をしているのか、どういう考えかたを持っているのかが垣間見えて、良い刺激になっています」(池村氏)
3つめの委員会は「Liberal Arts Lab」だ。創設メンバーである吉田理穂氏は、普段プランナーとして業務にあたっている。デジタルが世の中のインフラとなった現在において、たとえばシェアリングエコノミーやキャッシュレス、スマートシティといったさまざまなサービスや概念が生まれている。だが、それらの技術仕様について語れる人はいても、サービスが生まれた背景や文化的なコンテクストを語れる人が少ないことに課題を感じていたという。
開発会社であるゆめみはさまざまな領域のクライアントと取引を行うため、テクノロジーだけでなく、各領域のコンテクストも汲み取り網羅する必要があると考えた吉田氏は、プロリクを通してさまざまな「教養」を身につける場として、Liberal Arts Labを立ち上げた。
Liberal Arts Lab創設後は委員会予算を使ってスイスとイタリアのアートイベントを視察。そのほかにも、IT業界で数少ないリベラルアーツ勉強会を開き、「エキスパートとの壮大な雑談」というコンセプトのもと、経済や宗教、建築といったさまざまな分野のゲストを招いて対話と議論を行っている。
「Liberal Arts Labは僕の内発的動機を起点に創立しましたが、ほかの会社で同じことを実現するのは難しいように思います。ゆめみの場合は、個人の内発的な動機を尊重してくれて、そこからほかのメンバーの共感を得るためのアプローチも手厚くサポートしてくれるので、とても心強いです」(吉田氏)