キャラクタービジネス、コロナ禍で店頭販売減とインバウンド需要縮小 市場規模は減少予測/矢野経済研究所

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2020/07/23 05:00

 矢野経済研究所は、国内のキャラクタービジネス市場を調査し、セグメント別の市場規模推移、キャラクター別の動向、将来展望を明らかにした。

市場概況

 2019年度のキャラクタービジネス市場規模(商品化権、版権)は前年度比101.8%の2兆5,340億円と成長した。令和最初のメガヒット作ともいわれる「鬼滅の刃」を中心に、アニメ化されたキャラクターが好調に推移した。

 キャラクタービジネス市場は商品化権と版権とで構成され、2019年度の商品化権市場(小売金額ベース)は前年度比101.2%の1兆2,540億円、版権市場(契約金額ベース)は同102.4%の1兆2,800億円となり、商品化権市場、版権市場ともにプラス成長となった。

 内訳をみると商品分野別構成比で49.0%と大きなシェアを占める玩具の好調を背景として、商品化権市場全体はプラスに。近年、玩具メーカーやゲーム会社を中心としたマルチメディア戦略の推進により、市場は底上げが進んでいる。2019年度はSNSでファンの心を掴んだ新キャラクターの台頭により、ぬいぐるみや雑貨などグッズ販売が好調となった。また、「おしりたんてい」「チコちゃん」などユニークなキャラクターも、話題先行から徐々に商品販売へとつながっていった。

 一方、版権市場は、Netflixなど定額制動画配信サービスの普及もあってアニメキャラクターが浸透する機会が増え、それによってキャラクターの価値が上がり、プロモーションなどで起用の機会も増加傾向にある。漫画やTVアニメ、映画、ゲーム、さまざまな商品展開など長期的な視点でのメディアミックスが丁寧に推し進められていることも市場拡大の要因となっていると推察される。

注目トピック

2.5次元ミュージカルによるキャラクターの2次活用

 近年、漫画やアニメ原作を舞台化した「2.5次元ミュージカル」市場が拡大を続けている。

 会場限定グッズ販売や、作品によっては親子・ファミリーで足を運んでもらう機会が増加するなど収益向上や新たなファン層の獲得につながっている。

 キャラクターが発信する情報力・情報量が高まり、キャラクターの鮮度を保つことができるうえ、出演する若手俳優・タレントの売り出しといった相乗的な効果が期待できる。

将来展望

 2020年度のキャラクタービジネス市場(商品化権、版権)は新型コロナウイルスの影響により、キャラクターショップやテーマパークなど店頭におけるキャラクターグッズの販売減少に加え、これまで市場を牽引してきたインバウンド(訪日外国人客)需要の縮小、広告宣伝費の削減などにより、前年度比95.2%の2兆4,130億円になる予測。

 コロナ禍によるビジネス機会損失で市場規模は減少する見通しだが、人気キャラクターは変らず好調であることや外出自粛によってアニメ視聴が増えたという声もあり、キャラクタービジネスにとってはプラスに働く可能性もあり、中長期的にみると市場は活発なマーケットを形成していくものと考えられる。

調査概要
  • 調査期間:2020年4⽉〜6⽉
  • 調査対象:キャラクタービジネス関連企業(メーカー、卸などいわゆるライセンサー、ライセンシー、及び⼩売・流通業等)
  • 調査⽅法:当社専⾨研究員による直接⾯談、電話・e-mailによるヒアリング、アンケート調査、ならびに⽂献調査併⽤