ソニーAI、レシピ創作支援アプリや調理支援ロボの研究開発やコミュニティでの共創活動プロジェクトを開始

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2020/12/18 06:00

 ソニーは、人工知能(AI)の基礎的な研究開発を推進するべく、日米欧グローバルに拠点を置くSony AIを2019年11月に発足。その組織をもとに2020年4月、ソニーAIを設立した。

 同社はソニーの既存事業領域である「ゲーム」と「イメージング&センシング」に加え、新規探索領域として「ガストロノミー」をその研究開発のフラグシップテーマに設定。今回「ガストロノミー・フラグシップ プロジェクト」において、シェフの創造力や調理能力向上に貢献するレシピ創作支援AIアプリや調理支援ロボティクスの研究開発と、これら活動の礎となるコミュニティによる共創活動を本格的に始動した。

 同社はゲームや音楽、映画と同様にガストロノミーもシェフであるクリエイターと人を結ぶ、グローバルなクリエイティブエンタテインメントの領域と位置づけており、その機会を捉えるため研究開発と各種パートナーシップを推進していく考え。

レシピ創作支援AIアプリ

 食材の組み合わせには無限の可能性があり、また土地や風土、季節、人の健康状態や食への嗜好などの制約条件も考慮する必要があるため、AIの研究テーマとして非常に難易度の高いものだという。

 同社では、食のレシピや食材に関するさまざまなデータ(味や香り、風味、分子構造、栄養素など)をもとに独自の解析アルゴリズムと世界トップクラスのシェフも納得する新たな食材のペアリングや、レシピ・メニューの創作を支援するアプリを開発。料理の味が美味しいことに加え、人の健康に寄与し、環境のサステナビリティにも貢献するレシピ提案ができるものを目指し、その開発においては世界トップクラスのシェフとの対話から得られる知見や、食材に関するさまざまなデータを提供するパートナーとの協力関係を築きながら推進していく。

イメージ例/中心にあるチョコレートと大吟醸酒という組み合わせを人が選択した場合、それに最適な食材(このケースではカリフラワーや、 海苔、雲丹など)をAIが提案

イメージ例/中心にあるチョコレートと大吟醸酒という組み合わせを人が選択した場合、
それに最適な食材(このケースではカリフラワーや、 海苔、雲丹など)をAIが提案

調理支援ロボティクス

 同社は、高度かつ精密な調理支援ロボットの研究開発を推進。調理には、形状や特性の異なる食材の下準備やさまざまなツールを用いることで素材の物理的変化をともなう調理作業、そしてそのあとの盛り付け(プレイティング) など複雑な工程がある。世界トップクラスのシェフとのコラボレーションを通じて、シェフの技術をセンシングやAIを活用しロボットに学習させることで調理から盛り付けまでの全工程でシェフを支援することを目指す。

 さらに、リモートの技術を用いた遠隔でのロボット操作も研究開発の対象に。たとえば、遠隔地においてより多くの人にシェフの料理を提供することなども視野に入れている。

コミュニティによる共創活動

 新たなレシピやメニューの創作・調理には、シェフが持つ知見や経験とクリエイティビティがベースにある。また、これら創作された料理の楽しみは、パンデミックの影響を強く受けたガストロノミーコミュニティの健全性の上に成り立っている。このコミュニティの長期的な持続可能性に貢献することを目的として、同社はシェフのコミュニティとの関係強化を図るとともに、これらの領域において最先端の研究を行う大学や研究機関、企業とともに多方面から研究開発を推進していく。

 今回、シェフとの関係を構築する第1弾として、「シェフ・インタビュー・シリーズ」を同社サイトにて公開。総勢18名のシェフや食の専門家へのインタビューをリモートで行い、新たなメニュー開発における発想の原点やプロセス、テクノロジーの活用に加えて、サステナビリティなど今後の食を取り巻く環境で欠かせないトレンドについてのヒアリングを行った。今後も食に携わる幅広いジャンルのクリエイターや 見識者との対話を続け、そこから創出される知見をAIアプリおよびロボットの開発に役立てていくとのこと。