キヤノン、VR映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」専用レンズとPCソフトウエアを発売

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2021/10/12 05:00

 キヤノンは、VR映像撮影システム「EOS VR SYSTEM」を新たに立ち上げ、専用のレンズ1機種とPCソフトウエア2本を2021年12月下旬に発売・公開する。

 現在、VRはエンターテインメントや観光、教育など幅広い産業において活用が広がっている。このような背景のもと、同社は、レンズ交換式カメラEOSシリーズなどで培ってきた光学技術を生かし、高画質な映像と効率的なワークフローを実現するVR映像撮影システムを立ち上げた。

 同システムは、ミラーレスカメラと専用のレンズ、PCソフトウエアで構成しており、カメラに新発売の専用レンズを装着することで、VR映像の撮影を実現しています。また、新公開のPCソフトウエアにて撮影映像のVR規格形式への変換から簡易的な編集までを行うことができる。

 同社は、同システムを立ち上げることで、映像クリエイターや制作プロダクション、新たにVR映像撮影を始めたいと考えるユーザーまで幅広いニーズに応えていく。

高画質な3Dの180度VR映像を実現する専用レンズ

 新製品「RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYE」は、ふたつの魚眼レンズを備え、左右の視差を利用した3Dの180度VR映像を撮影することができる専用のRFレンズ。ミラーレスカメラ「EOS R5」に装着することで、8Kを生かした没入感のある高精細な映像を出力することができる。また、特殊コーティングの採用により、逆光時での撮影も快適に行うことができる。

撮影から編集まで効率的なワークフローの実現

 同製品の2眼レンズそれぞれから入射する光を単一のCMOSセンサーを通じて記録することができるため、撮影前のカメラ位置の調整や同期設定、撮影後に映像をつなぎ合わせる作業(スティッチ作業)が不要となり、映像制作ワークフローを効率化している。また、ユーザーの制作環境に合わせて、PC アプリ「EOS VR Utility」と「Adobe Premiere Pro」(別売)専用プラグイン「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」のいずれかのデータ変換ソフトウエアを選択することができ、映像制作をサポートする。

 同製品の主な特徴は次のとおり。

RF5.2mm F2.8 L DUAL FISHEYEの主な特徴

「Lレンズ」ならではの高画質な3Dの180度VR映像を実現

  • ふたつの魚眼レンズを備え、左右の視差を利用した3Dの180度VR映像を撮影することが可能。
  • 180度VR映像は、360度映像と比較して視野が半分となり、データ容量が少ないため、高精細な映像も扱いやすく、臨場感を演出する映像表現に好適。また、撮影者が映りこむことがないため、撮影に集中して取り組むことが可能。
  • 描写性能や操作性、堅牢(けんろう)性などで最高水準の性能を追求した「L(Luxury)」レンズ。開放F値2.8の大口径により、明るく高画質な撮影が可能。
  • 「RFマウント」の特徴であるショートバックフォーカスを生かしながら、ふたつの魚眼レンズそれぞれにおいて「UDレンズ」2枚を効果的に配置したレンズ構成により、高画質を達成。また、レンズ構成を光路折り曲げに最適化させたことで、基線長60mmの自然な視差を実現。
  • 電動虹彩絞り「EMD(Electro-magnetic Diaphragm)」を左右それぞれのレンズに対して搭載。電子的に絞り口径を制御。
  • ゼラチンフィルターホルダーを搭載し、NDフィルターの装着が可能。日中の屋外撮影など、高輝度時にシャッタースピードが意図せず速くなってしまうシーンでも、光量を抑制し、滑らかな動画撮影を実現。
  • マウント部やフォーカスリングに防滴シーリングを採用。
  • 特殊コーティング「SWC(Subwavelength Structure Coating)」を採用。レンズの表面に可視光の波長よりも小さいナノサイズのくさび状の構造物を無数に並べることで、光の反射を抑制。レンズ内の光の反射が撮影画像に入り込んでしまうゴーストを低減することが可能。光の入射角の広いVR映像撮影用のレンズにおいて、逆光時などでも快適な撮影を実現。

8K出力などミラーレスカメラ「EOS R5」との組み合わせによる高画質な撮影

  • 「EOS R5」との組み合わせにより、高精細な8Kの180度VR映像を出力することができ、高い没入感を実現。
  • 開放F値2.8の明るさと、「EOS R5」の高感度CMOSセンサー、映像エンジン「DIGIC X」の連携による高いノイズ処理能力により、薄暗いシーンや意図的に光量を落とした表現をするシーンでも、高画質な撮影を実現。

撮影から編集まで効率的なワークフローを実現

  • 2眼レンズそれぞれから入射する光を単一のCMOSセンサーを通じて記録することが可能。撮影前のカメラ位置の調整や同期設定、撮影後に映像をつなぎ合わせる編集(スティッチ作業)が不要となり、映像制作ワークフローを効率化。
  • PCでカメラ設定や画像転送ができるアプリ「EOS Utility」と、スマホで画像確認や設定変更ができるアプリ「Camera Connect」のいずれかを使用することで、VR映像制作において撮影頻度の高いリモートでの撮影が可能。

PCソフトウエア(2本)の主な特徴

 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に映像を表示し、3DのVR映像をユーザーが見るためには、カメラで撮影した映像を専用のデータ形式に変換する必要がある。そのため、VR映像制作ワークフローには、一般的な映像の撮影、確認、編集に、データ変換を加えた4つの工程がある。

 同社のVR映像撮影システムでは、ひとつのCMOSセンサーを搭載した1台のカメラで映像の撮影をするため、カメラを2台使用した場合に発生する撮影前の左右カメラ位置の調整や同期設定が不要に。また、データ変換の前に映像をつなぎ合わせる作業(スティッチ作業)も不要だという。

 さらに、データ変換においては、PCアプリ「EOS VR Utility」と「Adobe Premiere Pro」(別売)専用プラグイン「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」を使用することで、データ変換をしながら、レンズの視差/水平補正を自動で行うことができ、効率的なワークフローを実現している。

 データ変換で使用する両PCソフトウエアは、ともに VR 映像の標準フォーマットとなる正距円筒図法への画像変換に対応しています。「EOS VR Utility」は、撮影した映像のデータ変換から、編集までを行うことできる。編集・再生環境に合わせ、画質や映像ファイルフォーマットの出力を柔軟に設定することもできる。一方、「EOS VR Plugin for Adobe Premiere Pro」は、動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」内でデータ変換から、編集までをワンストップで行うワークフローを実現する。