凸版印刷と3dig(スリーディグ)は、高解像実測データを活用し、高精細なバーチャルヒューマン領域で協業開始したことを発表した。
同協業では、凸版印刷の持つ「トッパンバーチャルヒューマンラボ」(顔計測データを始めとした、さまざまな人体情報データ活用に関する研究/用途開発を推進する施設)内の「ライトステージ」(南カリフォルニア大学が開発した、高精度の顔計測が可能な装置)を用いて計測した高精度な人体に関する実測データを教師データ(機械学習で学習に用いる、「例題」と「正解」がペアになっている形式の学習データセット)として、3digの持つAIによるバーチャルヒューマンの自動生成システム「anma(アンマ)」に適用することで、フォトリアルなバーチャルヒューマンを作成。AIが生成した実在しない人物を用い、企業広告や動画コンテンツなどで肖像権フリーのコンテンツ制作を実現する。
近年、実在する人物をバーチャル化したアバターや、3DCGで制作されるバーチャルヒューマンを活用した企業広告や各種動画コンテンツが注目を集めている。また、AI技術の発展拡大にともない、受付や施設案内など、簡易業務でも活用され、バーチャルヒューマン関連技術は重要な技術のひとつとして期待されているという。
しかし、バーチャルヒューマンはこれまで、表情や動きの不自然さや、印刷物や高解像度ディスプレイでは粗さが目立つなどの課題があった。また、人間に模した高解像度のものでは制作費用が高くなるだけでなく、表情やしぐさが繊細になるに従って見る人に薄気味悪さを与えてしまう、いわゆる「不気味の谷現象」といった課題が生まれていた。ほかにも、実在する人物を起用すると、肖像権などの権利処理やそれに基づくコンテンツの管理で費用を要するだけでなく、起用した人物に問題が発生した場合、そのコンテンツが使用できなくなるというリスクを抱えていた。
これを受け両社は、AIが生成した実在しない人物を用い、肖像権フリーのコンテンツ制作で協業を開始。凸版印刷の持つ「トッパンバーチャルヒューマンラボ」内の「ライトステージ」を用いて計測した高精度な人体に関する実測データと、3digの持つAIによるバーチャルヒューマンの自動生成システム「anma」によって、フォトリアルなバーチャルヒューマンを安価に作成する。AIが生成した実在しない人物など、肖像権フリーのコンテンツを広告代理店や地方自治体などに提供することで、新たなモデルエージェンシービジネスを目指す。
同協業の具体的な内容は、次のとおり。
高解像実測データのデータセット化
「トッパンバーチャルヒューマンラボ」内の「ライトステージ」を用いて、高精度な人体に関する実測データを収集し、「人体情報プラットフォーム」上で管理・運用。また蓄積したデータを教師データとして活用するために、データの分類や適切な形式への加工など、実測データのデータセット化を行う。
フォトリアルなバーチャルヒューマンの作成
AIによるバーチャルヒューマンの自動生成システム「anma」に、実測データからなる教師データを用いることで、「不気味の谷現象」を起こさず、ヒトの自然な表情やしぐさを再現したフォトリアルなバーチャルヒューマンを作成することが可能となる。
2社の役割
凸版印刷
2020年に開設した「トッパンバーチャルヒューマンラボ」内に導入した「ライトステージ」を用いて人体を精密に測定し、人体に関する各種実測データを蓄積。高セキュリティ下で管理・運用してきた。この蓄積データを加工し、「人体情報プラットフォーム」上にデータセットを構築し、3digへ提供する。また、3digの提供するanmaを活用し、肖像権フリーのバーチャルヒューマンを用いたコンテンツ制作など、新たなモデルエージェンシービジネスを目指す。
3dig
これまで3DCG×AIの分野で研究開発を行ってきた知見を活かして開発したバーチャルヒューマンの自動生成システム「anma」に、凸版印刷が提供する高解像度実測データのデータセットを組み込むことで、フォトリアルなバーチャルヒューマンの高品質化を実現。「anma」を核とした、安価かつ高品質なバーチャルヒューマンの生成プラットフォームのビジネスに取り組む。
今後の展開
教師データを構築し、「人体情報プラットフォーム」上でのデータセット運用を2022年に開始。2022年4月までに肖像権フリーでフォトリアルなバーチャルヒューマンを自動作成するプラットフォームを構築し、広告業界や地方自治体に向けに提供する。