生成系AIのトレンドを生み出した「Stable Diffusion XL」開発元であるStability AI Japanと、国内のAI/ブロックチェーン有識者らが共同で設立したアニメチェーンは、アニメ業界向け生成系AIの共同研究の検討を開始した。
今回の共同研究で検討中の制作支援ツールは、アニメーションを制作工程から深く学習し、アニメーターの意図を理解することで、創造性を最大限に引き出すことを目的としている。このツールは、既存のAIや生成系AIとは異なり、絵を描く自動機械として仕事を奪うものではなく、制作プロセスをサポートすることでクリエイターの創造性を最大限に引き出すことを目指している。
同ツールでは本来のアニメ制作工程をそのままに、2D・3D間で異なる作業フォーマットを整備したり、作画ミスを発見し修正を指示するなどの補助作業をおこない、アニメーターが煩雑な作業から解放され、より自由にアイデアを具現化できるようにする。さらに、新人アニメーターの教育を支援し、制作スキルの向上を促進することで、業界全体の発展に寄与する。
制作現場に寄り添い、アニメ作品の品質向上を目指した支援ツールの共同開発は2024年春を目処に開始し、「アニメチェーン協議会」を通じて制作現場の声を直接聞きながら、適切な方針に基づいて研究・開発を目指す。
「アニメチェーン構想」とは
「アニメチェーン構想」は、コンテンツ・エコシステムを拡大し、来たるAI時代においてもクリエイターが継続した制作活動をおこなえ、その収益を最大化していくことを目的としている。
1.クリエイターのための安心・安全な環境整備
クリエイターの権利の尊重を目的として、基盤モデルを含むすべての学習を、権利者の許諾を受けた「オプトイン素材」を使用して再構築した生成系AIおよび関連ツールを提供。さらに、生成系AIの透明性と正当性を確保するため、その開発プロセスをブロックチェーンに記録する。これにより、生成系AIに関連する著作権問題と同時に倫理的問題の解決も図っていく。
2.コンテンツ産業の“人手不足”解消
日本のコンテンツ産業、特にアニメ産業は、世界的な需要が高まっている状況にもかかわらず、制作現場における“人手不足”が深刻な問題となっている。この切迫した状況に対処するため、ブロックチェーンを活用した正当な系譜を持つ生成系AIの導入は必要不可欠と考えている。限られた人員のもとでも、高品質なコンテンツをより迅速に制作できる環境を構築し、“人手不足”による産業の停滞を防ぎ、持続可能な成長を目指す。
クリエイター収益の最大化
生成系AIで作られたコンテンツの収益を、制作したクリエイターのほか、ブロックチェーン上の生成経緯に基づき学習データを提供した権利者へも還元していくことを想定。クリエイターが学習データに用いる原画や画像の制作過程を提供することで、収益を最大化でき、よりクリエイティブな制作活動に専念できると考えている。
ビジョン
本構想のビジョンは、日本が誇るアニメ・漫画・ゲーム・VTuberなど、エンタメ・コンテンツ業界を健やかに発展させ、持続可能性を高めることにある。
コンテンツ・エコシステムをより一層拡大させるため、今後加わっていく支援パートナーと共に、アニメキャラクターの積極的な広告活用、広告クライアントとのマッチング、ローカライズのためのマーケティング支援、ファンからのニーズ収集など、業界全体として、現在カバーしきれていないプロダクトやサービスの提供も予定している。
独自のエコシステムトークンなどを用いて、支援パートナーや貢献者に対しインセンティブを付与することで仲間を増やし、早期にビジョンを達成することを目指す。