今改めて注目される、デジタル広告のクリエイティブ――新たに求められているものと3つの環境変化とは

今改めて注目される、デジタル広告のクリエイティブ――新たに求められているものと3つの環境変化とは
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2021/10/15 08:00

クリエイティブテックカンパニー「リチカ」の最高マーケティング責任者・CMOをつとめる田岡凌さんが、クリエイティブ運用クラウド「リチカ クラウドスタジオ」で得た知見を活かし、デジタル広告のクリエイティブについてマーケティング目線でお伝えしていきます。第2回のテーマは「デジタル広告を取り巻く変化とクリエイティブの重要性」です。

デジタル広告を取り巻く3つの環境変化

 近年、デジタル広告は大きな外部環境の変化を迎えています。捉えきれないほどのスピードで今までになく大きな変化が起きており、先行きも不透明な状況と言えます。こうした変化に、クリエイターはいかに対応すべきでしょうか。

 今回は、まず、クリエイターも知っておくべきデジタル広告において重要な3つの変化をご紹介します。

 ひとつめは、「プライバシー保護強化」への対応です。プライバシー保護の代表的な動きとして挙げられるのが「クッキー規制」。これはサードパーティークッキーと呼ばれる、ブラウザに記録されるユーザー情報を企業が利用するのを制限するという動きです。現在、GoogleやFacebookなど大手プラットフォームがこのクッキー規制を行うという意思表明をしています。さまざまな代替技術が想定されているものの、中長期で考えると、従来型のターゲティングに依存したデジタルマーケティングは難しくなってくると考えられます。

 ふたつめの変化は、スマートフォンでの「アプリのトラッキングの透明性」機能導入です。Appleは2021年より、App Storeに掲載されるアプリに対して、パーソナライズされた広告であるとの理由から、トラッキングを許可するかどうか、ユーザーの承認を得ることを義務化しました。これにより、リマーケティング広告配信の減少、コンバージョン計測の困難化、ターゲティング精度の悪化といった影響が考えられます。ひとつめと同様、先行きが不透明な状況で、従来型のターゲティングはさらに難しくなると想定できます。

 3つめは、コロナ禍による顧客や顧客接点の多様化です。顧客のライフスタイル、働きかた、価値観などが多様化し変化する中で、企業はマーケティング活動において、顧客セグメントや顧客接点をより細かく捉えなければなりません。いつ、どこで、どのように接点を持つかまでデザインする必要が生まれました。

 さらに、音声メディア、コネクティドTV、エレベーター広告などの新しい顧客接点も生まれており、こうした接点のデザインはさらに難しくなってきています。こうした背景からも、顧客それぞれに対するコミュニケーションにおいて、最適なクリエイティブを開発することの重要性は増していると言えるでしょう。まさに、顧客ごとに5W1Hを最適化したマーケティング活動を実現していく必要があると考えられます。

 そんな今だからこそ、改めて注目されているのが「クリエイティブ」です。元来、デジタル広告においてクリエイティブはもっとも重要な要素でした。現に、前回記事でもご紹介したとおり、クリエイティブは、デジタル広告のさまざまな要素の中で、購買行動に貢献した割合がもっとも大きいと言われています。そして、従来型のターゲティングによる成果向上に不安がある今、クリエイティブの重要度が増していると考えています。

重要なのは、クリエイティブの「最適化」×「運用」

 こうしたなかでクリエイティブに新たに求められているのが、クリエイティブの「最適化」と「運用」ではないでしょうか。

 クリエイティブの最適化とは、前述したとおり、顧客ごとに5W1Hを最適化したクリエイティブを作ること。顧客や顧客接点が多様化した今、顧客セグメントやタッチポイントごとに最適化したメッセージを開発することが大切です。

 あわせて陥りやすいのが、配信面最適化のワナ。配信面やメニューが多様化する中で、最適化しきれていないクリエイティブが多く配信されているのが現状です。だからこそ、クリエイティブの最適化は差がつく要素だと言えるのです。

 また、クリエイティブの運用も、今以上に重要になっていきます。

 静止画でも動画でも、それぞれの配信面ごとにどのようなメッセージやデザインが成果につながるのか。クリエイティブを量産しながら、継続的にテストしていくことで、勝ちクリエイティブを見つける必要があります。ただし、動画広告が主流になる中で、こうした運用を行うことは難しくなっています。

 リチカでは、大手事業会社を中心にデジタルマーケのクリエイティブ運用の支援をしていますが、この運用体制が整っているか、勝ちクリエイティブを見つけられているかのふたつが、成果をだすことができるかどうかの大きな差につながっている印象があります。

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