今までにない体験で「住む」を自由に NOT A HOTELのCXOが、取り組みとその意図を語る

今までにない体験で「住む」を自由に NOT A HOTELのCXOが、取り組みとその意図を語る
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2022/06/06 09:00

 CDOやCXOとして活躍するクリエイターに日々の取り組みなどについて取材することで、クリエイティブのこれからを考える本コーナー。第5回は、「世界中に自宅がある、あたらしい暮らし」づくりを目指すNOT A HOTELでCXO(Chief Experience Officer)をつとめる井上雅意さんにお話を伺いました。

サムスン、ヤフー、メルカリを経てNOT A HOTELに 入社を決めた背景とは

――まず、NOT A HOTELのコンセプトや事業概要からお聞かせいただけますか?

僕たちがつくった建物を購入したオーナーさんは自身で住むこともできますが、家を離れているときにそこをホテルとしてNOT A HOTELが運営することで、家を使用していないときにも収益化できることが特徴です。必ずしも毎日そこに住む必要はなく、アプリ上で自宅とホテルを自由に切り替えることが可能。家の中もタブレットひとつで操作できるようにIoT化されており、どこのNOT A HOTELに行っても同じ使い勝手になるよう設計しています。

僕たちは、世界中に自宅があるような体験を目指しています。賃貸でも一度借りてしまうと、なかなか長期で家を離れる気にはなりづらいなど、家を買う、借りるという行為の自由度は非常に低い。衣食住の「住む」だけ、やたら不自由だということを代表の濱渦が感じていたんです。もっと「住む」ということが自由になれば人の生活が楽しくなるのではないか――。それがサービス誕生のきっかけとなった思いです。

[NOT A HOTEL NASU]那須に広がる16万坪の牧場。20頭の馬が暮らす広大な自然を望む全2棟。
[NOT A HOTEL NASU]那須に広がる16万坪の牧場。20頭の馬が暮らす広大な自然を望む全2棟。

――NOT A HOTELに入社した経緯を教えてください。

当時具体的に転職しようとは考えていなかったものの、所属していたメルカリのフェーズが進んでいき、自分がもっとも得意なフェーズから離れていく感覚を持ったため、自身で何か事業をおこすことも視野に入れ、次を決めずに退職。そのときにたまたま知人のつながりで濱渦さんと話したことが、最初のきっかけです。NOT A HOTELのことはnoteやTwitterで何度か見かけたことがあり存在は知っていましたが、決め手となったのは、NOT A HOTELが建つ前の那須の土地を、濱渦さんと見に行ったことが大きいかもしれません。ただの芝生と山だったのですが、この広大な土地に5~6棟しか建たないなんてそんな贅沢はないなと。そこに住むこと自体も非常に楽しそうだなと感じ、会社創業の7ヵ月後、2020年11月にCXOとしてジョインしました。

――前職のメルカリでもCXOをつとめていましたが、そのときはどういったことに取り組んでいたのですか?

最初はメルカリで新規事業を行う子会社・ソウゾウにひとりめのデザイナーとしてジョインしましたが、しばらくして新規事業づくりに関わりたいとの思いから、メルチャリの立ち上げを担当。その後CXOもつとめました。当時メルカリとしても、デザインを組織化し、本腰を入れて取り組まなければいけないという機運が高まっていたなか、声がかかった形です。

僕が所属していたのはホールディングスだったのですが、そのCXOとして最初に取り組んだのはブランディングです。当時すでに、ある程度メルカリも規模が大きくなっていました。ただメルペイはまだリリースされておらず、メルカリがデジタル上だけでなく、決済をはじめとしたリアルな場にでていこうというタイミングだった。そこでまず組織として力を入れるべきはブランディングだと考え、メルペイが世にでるタイミングとあわせてロゴを刷新。あくまでロゴは表層ではありますが、より使いたいという気持ちを喚起する面でも非常に重要だと考えたからです。それ以外には、メルカリやメルペイといったプロダクトの土台となるデザインシステムの構築などにも着手しました。

NOT A HOTEL株式会社 執行役員 CXO 井上雅意さん
NOT A HOTEL株式会社 執行役員 CXO 井上雅意さん

その前はヤフーでアプリの立ち上げに関わったり、サムスンのデザインチームで、ガラケーのUIやアプリ・サービスの提案などを行っていましたが、もともと大学でもデザインを勉強していたわけではありません。通っていた大学でUIに出会い、情報の設計が人の使いやすさを左右するところが非常におもしろいと思い、デザインの道へ進むことを決意。それ以来、デザインを生業にしています。

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