「実力のあるクリエイターと出会えない」を解決するopusrから見えた、クリエイティブを取り巻く課題の本質

「実力のあるクリエイターと出会えない」を解決するopusrから見えた、クリエイティブを取り巻く課題の本質
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2023/08/23 12:00

 作品から企業とクリエイターが繋がるマッチングサービス「opusr(オプサー)」。ベータ版をリリースして約半年が経過するが、PR施策や広告出稿を行うことなく、上場企業や大手スタートアップを中心に100社ほどが契約。登録しているクリエイターも続々と増えている。そんなopusrを立ち上げたのは、ヒューリズムのCEO・多湖大師さんとCOOをつとめる諸石真吾さん。マーケティングとクリエイティブの両方にバックグラウンドをもつふたりだ。どのようにopusrは生まれ、サービス開発の過程でどんな気づきを得たのだろう。そのプロセスからは、クリエイティブを取り巻く課題の本質が見えてきた。

目指したのは、「実力のあるクリエイターが作品をもとに選ばれる世界」

――まずはおふたりのご経歴と、ヒューリズムを起業されてから事業を立ち上げるまでの経緯を教えてください。

多湖 高校生のときに制作をしていた映像を仕事にするために名古屋から東京の大学に進学し、上京後は、縁があってさまざまな企業と動画コンテンツの企画・制作に関わっていました。コンテンツの企画や制作に関わる仕事に関心があったものの、入社したのはマーケティングの会社であるフリークアウト。いくつかの事業立ち上げに携わり、最後にはTVerに関わる仕事もしていたため、結果としてテレビに関する仕事もできましたね。クリエイティブの領域に関わりつつ、メインは広告のテクノロジー領域で経験を積んできました。

諸石 僕は高校から社会人になるまでバンドをやっており、自分が作った曲が人の感情を動かすという体験が大きなものになっていました。仕事でもそうした体験がしたいと思い、大学卒業後1年ほどバンド活動をしたのち、小さな広告制作会社に就職しました。そこで3年ほどグラフィックデザイン、映像やウェブの制作提案・ディレクションを経験し、デジタルガレージに転職。ウェブ広告代理店事業のセールス、マネジメントを経験したあと、デジタルサイネージ事業の立ち上げなどに携わりました。

多湖 僕も諸石も、前職で関西支社の責任者をつとめていた縁で顔見知りでしたが、意気投合したのはふたりとも東京に戻ってきたあと。家も近かったため、よく会うようになったんです。当時はコロナ禍だったこともあり飲みに行くこともできなかったため、家の近くの芝生で当時携わっていた事業のことなどいろいろとディスカッションして……。そんなことを1年くらい続ける中で、ちょうどお互いが関わっている事業も落ち着いてきたタイミングがあり、一緒にやろうという話に自然となりました。事業アイディアはいくつかあったのですが、諸石がデザインの領域で感じていた課題をもとに、opusrの構想が固まっていきました。

諸石 僕は広告制作会社での下請けのような仕事をやっていたり、代理店側で制作会社に依頼したこともあったため、受発注両方の経験があるのですが、発注側として感じていたのは、予算や要件に合うパートナーと出会うのが非常に難しいということです。知人づてで紹介してもらってポートフォリオを見て良いなと思っても実際の制作はさらに外注しているケースも多く、期待したものと成果物とのギャップが大きい。結局ディレクションの手間が多くかかってしまうことがよくありました。そうした経験から、Pinterestのように作品を一覧で閲覧することができ、そのまま発注できるプラットフォームがあったら良いのではないか、というアイディアが出てきたんです。

多湖 僕も何度もデザイナーを探したことがあるのですが、既存のサービスやプラットフォームを通して探しても要件に合うデザイナーに出会える確率はとても低かったですし、こちらがかなりディレクションしてようやく形になるといった経験もしていたため、その感覚がなんとなく理解できた。諸石の話を聞いて、クリエイターが作品をもとに選ばれる世界観や環境を作ることで、そうした課題が解決できるのではないかと考えました。

株式会社ヒューリズム 代表取締役/CEO 多湖大師さん
株式会社ヒューリズム 代表取締役/CEO 多湖大師さん

諸石 ただ、ビジネスとして成り立つだけのマーケットがあるのか、プロフェッショナルなクリエイターが登録してくれるのか。そんな懸念もありましたね。

多湖 名前が知られていたり、能力や実績があったりするクリエイターは、そういったサービスがなくても仕事には困らないのではないかと思ったんです。その仮説を検証するべく、デスクリサーチでは意味がないと考え、クリエイター約100人、企業30社に腹をくくってデプスインタビューを行うことに。その結果、両者から求められる新しいサービスになるという手ごたえをつかんだため、2022年末にまずはクローズドでリリースしました。

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