生成AIがもたらした変化の本質とは 今までの振り返りと2024年の注目トピックを山本覚さんが語る

生成AIがもたらした変化の本質とは  今までの振り返りと2024年の注目トピックを山本覚さんが語る
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2024/02/13 08:00

 生成AI元年と言われた2023年。クリエイターにとってもどのように生成AIと付き合っていくべきか、頭を悩ませた人も多かったのではないだろうか。今回取材をしたのは山本覚さん。東京大学松尾豊教授のもと人工知能(AI)を専攻し、現在は電通デジタルで執行役員 データ&AI部門の部門長として、同社のAI関連ソリューションに関わる人物だ。2023年、生成AIはビジネスやクリエイティブ制作にどのような変化をもたらしたのか。今後はビジネスシーンにどんな影響を与えていくのか。クリエイティブ面にも触れながら話を聞いた。

なぜ生成AIは一気に普及したのか

――あらゆるシーンで生成AIが話題になった2023年でしたが、なかでもビジネスやクリエイティブ制作に生成AIがもたらした変化は何だったのでしょうか。

生成AIの活用が現実味を帯びたことによって、企業が業務プロセス全般を見直す機運が高まった一年だったのではないでしょうか。

私は生成AI活用には、大きく3つのステップがあると考えています。ひとつは、やりかたが明白で人間にもできるが、面倒な作業をAIに置き換えていくもの。これはコスト削減にもつながりますね。ふたつめは、考えかたの方針はわかっているものの扱う情報量が膨大のため人間が俯瞰で意思決定をしきれない業務に、AIを活用するもの。そして最後が、そもそもやりかたのイメージがわいていない業務をAIと一緒に考えていく。人間が思いつかないアイディア創出をAIにサポートしてもらう活用法です。

マーケティングやクリエイティブワークに絞ってお話しすると、ひとつめのステップに関しては、たとえばマーケティングメッセージとして使えるキーワードの探索をAIに任せるなどの活用ができてきていると思います。

ふたつめのステップとしてイメージしやすいのは、広告の効果予測におけるAI活用ではないでしょうか。効果的なクリエイティブの要点を洗い出し、「良いクリエイティブ」と「悪いクリエイティブ」の定性的な分析を行うためには、大量のデータを一度に扱える生成AIが活躍します。

最後のアイディア創出の部分については、トップクリエイターであれば生成AIを使わずとも、自分の創造力でかなり高いレベルまでたどり着くことができるでしょう。そういった意味でも、まだこのフェーズはAIが追いついていない部分。一方で、経験が浅いクリエイターがトップクリエイターの考えかたを備えたAIを活用することで、自分の不足を教えてもらうといった分野でも、すでに活用が可能になってきていると思います。

――以前から生成AI活用の潮流はあったと思いますが、それが2023年にビジネスシーンにまで一気に広がっていった要因は何なのでしょうか。

生成AIに対して「対話で指示できるようになった」ことが大きいでしょう。それまではデータサイエンティストだけがプログラムを書いていましたが、OpenAIのChatGPT-3.5の登場によって状況が一変しました。「これをこうしてください」とテキストを入力するだけで動くようになったことで裾野が広がり、多くの人が試せるようになったため、ビジネスの現場で使うイメージも湧いたのだと思います。

株式会社電通デジタル 執行役員 データ&AI部門 部門長 山本覚さん
株式会社電通デジタル 執行役員 データ&AI部門 部門長 山本覚さん

僕はそのひとつ前のChatGPT-3を使っていましたが、一定の文法が崩れると動きがおかしくなることが多かった。それが、こちら側の意図を汲み取ってくれるものに変わったのが、GPT-3.5でした。

精度向上の理由は、AIの学習量が増えたからだけではありません。生成AIが出した答えに、人間がその回答が「よい」か「悪い」かをフィードバックする学習機構に変えたんです。それまでのAIの状態はいわば、「本はたくさん読んだことがあるけれど、一度も人と話したことはない」状態でしたが、人間とコミュニケーションすることを学習したため、ChatGPTは人間とのやりとりが得意なAIに成長しました。

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