アドビ、Adobe MAX 2021にて次世代Adobe Creative Cloudを発表 Adobe Photoshop web版の発表も

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2021/10/28 09:00

 アドビはクリエイティブ カンファレンスAdobe MAX 2021を開催。Adobe Creative Cloudの主要アプリケーションの大幅なアップデートとあわせ、新たなコラボレーション機能の導入により、学生、ソーシャルメディアクリエイター、クリエイティブプロフェッショナルなど、世界中の何百万人ものユーザーのクリエイティビティを新次元へと解放するイノベーションの数々を発表した。

 Adobe MAX 2021では、アドビの人工知能(AI)と機械学習のプラットフォームであるAdobe Senseiを搭載したAdobe Creative Cloudの主要アプリケーションが大幅にアップデートされたほか、Frame.ioの買収による動画制作プロセスの加速化および、3Dの強化と没入型体験におけるオーサリング機能を追加。また、「Adobe Creative Cloud カンバス」や「Adobe Creative Cloud スペース」といった、Adobe Creative Cloudでのコラボレーション機能のお披露目および、Adobe Photoshop web版、Adobe Illustrator web版を発表した。

 また、アドビが主導する「コンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative)」の一環として、Adobe Photoshopに「コンテンツ クレデンシャル(Content Credentials)」機能を導入。これは、コンテンツを制作した人のプロフィールと編集履歴を作品に埋め込むことで、クリエイターが作品の作者として確実に認知されるようにする機能で、希望する人は誰でも利用できる。このコンテンツ クレデンシャル機能は、NFTマーケットプレイスでも表示されるようになる。さらに、アドビが運営するソーシャルプラットフォームであるBehanceにサブスクリプションモデルを導入し、自分の作品をプレミアムコンテンツとして公開し、有料サブスクリプションとして対価を得ることができるようになった。

 アドビのCreative Cloud担当エグゼクティブ バイスプレジデント兼CPO(最高製品責任者)のスコット ベルスキー(Scott Belsky)氏は、次のように述べている。

「クリエイティビティは、新しい働き方に合わせて進化しています。アドビは、ユーザーのクリエイティブな可能性を最大化するコラボレーション機能、さらに拡充したAI搭載機能の数々、そしてWebファーストのアプリケーションを、Adobe Creative Cloudに新たに導入します。Adobe Creative Cloudの製品とサービスを再構築することで、チームを結びつけ、新しいクリエイティビティの方法を可能にし、クリエイターたちのキャリアをさらに強化します」

クリエイティブなイノベーションの解放 

アドビは、Adobe Creative Cloudの主要アプリケーションの最新版に、Adobe Senseiを搭載した新機能を導入し、継続的なイノベーションを通じてクリエイティビティの未来について定義。Adobe MAX 2021で発表された新機能のうち、おもなものは次のとおり。

  • Adobe Photoshop:AIを搭載した3つの「ニューラルフィルター」をPhotoshopデスクトップ版に追加し、Photoshop iPad版ではCamera Rawファイルをサポート。
  • Adobe Lightroom/Adobe Lightroom Classic:機械学習の応用でパワーと精度を強化した「マスク作成」機能、「おすすめプリセット」、「コミュニティリミックス」機能。 
  • Adobe Premiere Pro:「音声のテキスト化」機能の強化と、Adobe Senseiを搭載した「リミックス」機能(ベータ版)。   
  • Adobe After Effects:「マルチフレームレンダリング」によるプレビューとレンダリングの高速化と、Adobe Sensei搭載した「シーン編集の検出」機能(ベータ版)が追加。 
  • Adobe Illustrator:Illustrator デスクトップ版では「新しい3D効果とマテリアル機能」でAdobe Substance 3Dマテリアルへのアクセスが可能になり、Illustrator iPad版ではAdobe Sensei搭載の「ベクタライズ」機能(テクノロジープレビュー)を追加。
  • Adobe Character Animator:作成者の身体全体の動作からアニメーションを作成できる、Adobe Sensei搭載の「ボディトラッカー」機能を追加。
  • Adobe Substance 3D: Adobe Illustrator、Adobe XD、Adobe Stockにおける3Dコンテンツやエフェクトならびに機能の統合が強化され、新しいAdobe Substance 3D Modeler(プライベートベータ版)アプリがSubstance 3D Collectionに加わり、未来のエクスペリエンスの創造における、3Dを含む没入型テクノロジーの重要性を実感できるようになりました。
  • Adobe Fresco:描画レイヤーをアニメーションレイヤーに変換してモーションを追加する「モーションとアニメーション」機能、新しい「遠近グリッドとガイド」機能、カラーを自由に試行錯誤できる非破壊的調整レイヤーの追加。

協調型クリエイティビティの実現  

Adobe MAX 2021では、クリエイティブチームがデバイスや場所を問わず、複数のデバイスやスクリーンを横断しながら関係者とリアルタイムにコラボレーションできる、ウェブをフル活用したクリエイティブの未来を一足先にお披露目した。

Frame.io

Frame.ioの買収により、Adobe Premiere ProおよびAdobe After Effectsと、Frame.ioのレビュー・承認機能の組み合わせが実現。これにより、クリエイティブなプロセスを根本的に加速させる強力なコラボレーションプラットフォームが完成。Frame.ioのクラウドネイティブなプラットフォームは、ビデオ制作のプロセスに関わるすべての関係者から安全かつエレガントにフィードバックを収集する方法であり、クリエイティブなプロセスに効果的に貢献できるようになる。

Adobe Photoshop web版(パブリックベータ版)とAdobe Illustrator web版(プライベートベータ版)

何百万人もの個人、チーム、関係者がウェブ上でクラウドドキュメントをブラウズ、共有、コメントできる、ブラウザベースのエクスペリエンスを提供。Adobe Creative Cloudのサブスクリプションの契約者ならAdobe Photoshop web版でプロジェクトの共同作業者としてクイックな画像編集やレタッチならびに調整をおこなうことができたり、またAdobe Illustrator web版でプロジェクトの共同作業者として必要なデザインツールや編集ワークフローにアクセスすることができる(ベータ期間中は機能が限定される)。

Adobe Creative Cloud スペース(プライベートベータ版)

チーム間のコラボレーションを促進するための共有デジタルスペースで、プロジェクトに必要なあらゆるものをすべてひとつの場所に置くことで意思決定を簡素化する。このAdobe Creative Cloudスペースには、プロジェクトファイル、ライブラリ、外部リンクが含まれており、チームの誰もが「いつでも、どこでも、誰とでも」アクセスが可能になり、クリエイティブなプロジェクトを最初から最後まで進めることができる。Adobe Creative Cloudスペースは、Adobe Creative Cloudデスクトップアプリならびにweb版を通じて、PCとモバイルデバイスからアクセスでき、Adobe Photoshop、Adobe Illustrator、Adobe Fresco、Adobe XDのプロジェクトで利用が可能。

Adobe Creative Cloud カンバス(プライベートベータ版)

クリエイティブな作品のレイアウト、視覚化、レビューまでをすべてリアルタイムに、ブラウザだけで完結できるアプリケーションで、チームのコラボレーションを新次元へと引き上げる。Adobe Creative Cloudカンバスには、シェイプ、テキスト、画像、ステッカーのほか、Adobe Creative Cloudアプリからリンクされたドキュメントを配置することができる。リンクされたドキュメントをクリックするだけで対応するアプリがオリジナルを開き、誰もが素早く編集を加えられる。

 また、Adobe Photoshop用の新しいWorkfrontのプラグインは、コンテキストに沿ったコラボレーションを可能にする。Adobe Photoshopに組み込まれたWorkfrontのアップデート画面で、クリエイターは作業中のプロジェクトに関連するタスクや課題を確認したり、コメントを投稿・閲覧したりすることができる。

クリエイターのキャリアの強化

アドビはクリエイターの作品の収益化をサポートする。クリエイターは、Behanceプラットフォーム上で自分の作品をプレミアムコンテンツとして公開し、有料サブスクリプションとして対価を得ることができるようになった。共有するコンテンツはクリエイターが完全にコントロールでき、サブスクリプションへの入り口はBehanceのプロジェクトページやライブストリーミングページに自然な形で組み込まれる。

また、Behanceに掲載済みのプロジェクトはどれでも、いつでもサブスクリプション専用に指定できる。クリエイターは、アドビにプラットフォーム手数料を支払うことなく、自身のサブスクライバーから収益を100%得ることが可能。

フェイク情報に対抗するための「コンテンツ認証イニシアチブ (Content Authenticity Initiative)」

「コンテンツ認証イニシアチブ (CAI)」を立ち上げてから2年を経て、アドビはコンテンツにその帰属を含めた来歴情報を実装するテクノロジーを提供開始する。コンテンツ認証イニシアチブに基づいて開発された「コンテンツ クレデンシャル (Contents Credentials) 」機能をまずAdobe Photoshopに導入し、コンテンツの帰属情報を含めた来歴を記載し、誰もが確認できるようになる。この機能は希望すれば誰でも利用でき、クリエイターの身元、編集内容、写真が撮影された時間と場所など、画像に関するコンテンツの詳細な来歴を作品に埋め込んで表明することができる。

また、作品の作者が正当に認知されることを確実なものとするために、コンテンツ クレデンシャル機能をNFTマーケットプレイスにも接続し、より明確に作品の帰属情報が表示されるようにしている。また、Adobe Stockからダウンロードする画像には自動的にコンテンツクレデンシャルが添付されるようになる。