Web3でデジタルコンテンツの流通はどう変わるのか エンタメと掛け合わせることで生まれる可能性を探る

Web3でデジタルコンテンツの流通はどう変わるのか エンタメと掛け合わせることで生まれる可能性を探る
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 本連載では、Web3時代にこそクリエイターがおさえておくべきトピックやコンテンツとの関係について、株式会社Mintoの代表取締役・水野和寛さんが解説します。第3回で取りあげるテーマは「Web3とエンタメコンテンツ」です。デジタル世界におけるモノやお金の流通の仕組みに変革をもたらしたWeb3ですが、それをエンタメコンテンツと掛け合わせると、どのような可能性をもたらすのでしょうか。

 まずブロックチェーンを基軸としたWeb3の登場によって、「コンテンツの流通」に変化がもたらされると言われています。

 ブロックチェーンの大きな特徴は、コンテンツの所在を記録し証明すること。そしてそれにより、デジタルコンテンツに価値がつく点がポイントです。

 これまでデジタルコンテンツは無限にコピーすることが可能なため値段をつけることができませんでしたが、いつ、誰によって作られたものであるかを記録することで、オリジナルを特定することができるようになりました。以前はインターネット上での有料販売が難しかったデジタルコンテンツですが、オリジナルコンテンツに付加価値がつくことで、値付けしての販売も可能になったのです。このように、デジタルデータが刻まれたコンテンツ(NFT)の流通を実現した点が、最初の大きな変化であると考えています。

多様化するデジタルコンテンツの流通

 さらに、転売による二次収益がコンテンツホルダーやクリエイターに還元されることも、Web3上でのコンテンツ流通における大きなポイントです。これは、ブロックチェーン自体に実装されたのではなく、NFTの“マーケットプレイス側”がブロックチェーンに記録された履歴を活用し、収益分配を行う仕組みを整備したことで実現されたものです。

 そのマーケットプレイスの代表格と言えるのが「OpenSea」です。現在多くのマーケットプレイスがOpenSeaの仕組みに準拠、または同様の仕組みを導入しており、これにより転売時に生まれた収益がクリエイターやコンテンツホルダーに還元されるようになっています。

 さらに最近はコンテンツの有料販売だけでなく、特定のNFT所有者だけが参加できるイベントチケットなど、証明書として活用されるケースも増えています。コピーとオリジナルの区別が可能になったことで、デジタルコンテンツの活用用途はさらに広がっていくのではないかと考えています。

Web3により、エンタメコンテンツの活用に多面性が生まれる

 なかでもとくに、映画や音楽、ゲームや漫画・アニメといったエンタメコンテンツ分野での活用に多くの可能性があると感じています。

 そのひとつが、オフラインとオンラインでの連動です。Web3で所在や所有の証明ができるため、NFTを介してリアルとメタバースを行き来することが容易になり、より多面的なエンターテイメント体験をプロデュースすることも可能です。たとえば、限定のデジタルコンテンツをNFTとして販売。それをチケットとして活用し、メタバース上やリアルでのイベントを開催するなどの使いかたもできるでしょう。

 また、Web3の仕組みを応用することで、より複雑なファンクラブの仕組みを容易に実現することも可能です。アーティストのファンと言っても、熱量高く支援するファン、たまに音楽を楽しみたいファンなどその熱量はさまざまですが、それに合わせて細かな体験設計を行うのはコストも労力もかかります。しかしWeb3の仕組みを活用すれば、限定のNFT限定イベントを企画し、熱量が高いファン向けの少人数イベントを開催したり、コアファンに向けて特別なインセンティブを提供することもできるのです。

 2022年7月には、音楽バンド「ゲスの極み乙女。」が初の音楽×アートNFTを発行したことが話題になりました。このNFTを購入すると、本作品のために書き下ろした未公開新曲「Gut Feeling」が聴けるだけでなく、オンラインリスニングパーティや、新曲ミュージックビデオ制作過程への意見表明など、さまざまな特典が付与されています。(出典:プレスリリース

出典:プレスリリース
出典:プレスリリース

 このように、Web3の特性を上手く取り入れることで、従来のファンクラブ運営よりも少ない労力で、ファンとの交流やインセンティブなどの体験を提供することが可能となります。

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