日立とNVIDIAが協業し、生成AIによるDXを加速

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2024/03/21 06:30

 日立製作所(以下、日立)は、NVIDIA Corporation(以下、NVIDIA)と協業し、日立のエネルギー、モビリティ、コネクテッドシステムといったOT(制御・運用技術)領域でのリーダーシップおよびデジタルソリューションと、NVIDIAの生成AIに関するノウハウを組み合わせることで、DXによる社会イノベーションを加速することを発表した。

 今回の協業により、生成AIのケイパビリティをエネルギーやモビリティ、産業などOT領域へと拡大。OT領域においてセンサーやデバイス、機器・設備から生成される膨大なデータを取り込み、生成AIを適用することで、パフォーマンスを効率化し、洞察(インサイト)を深め、これまでは不可能だったアクションを自動化することができるようになる。

 日立はNVIDIAと連携しながら、エグゼクティブリーダーシップチームの選出およびCoE(Center of Excellence)の設立をおこない、戦略的なマイルストーンに沿って、日立のOT領域でのドメインナレッジをNVIDIAの高度なAIソフトウェアやGPU技術と融合した業種向けソリューションを開発・展開する。

 また、日立は、CUDA、NVIDIA AI Enterprise、Omniverse、ModulusなどのNVIDIA ソフトウェア プラットフォームに関するエンジニアの育成強化に投資していく。これらの取り組みにより、社会に価値を生み出す新たなイノベーションを起こしていく。

背景

 生成AIは、タスク自動化や効率性の向上、製品やサービスの強化など組織のパフォーマンスを向上させるめざましい成果により、業界・業務を問わず幅広く適用が進み、現在、イノベーションや企業成長には欠かせない重要な技術となった。

 NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティング プラットフォームは、大規模な言語モデルとクリエイティブな生成をサポートし、AIソフトウェアとシミュレーションにおける高度な技術力は、エネルギーから創薬、製造まで、あらゆる業界のイノベーションに貢献している。

 一方、日立は、IT、OT、プロダクトを強みとし、エネルギー、モビリティ、製造業など幅広い分野に先進的なソリューションを提供するリーディングカンパニー。2023年5月にGenerative AIセンターを設立し、生成 AIの安全・有効な社内外での利活用を推進してきた。生成AIを活用した数多くのユースケースで効率性と生産性の向上を推進し、国内外で100件以上のプロジェクトを獲得し、課題解決やイノベーションの創出を支援している。さらに、AIトランスフォーメーションを加速するために、NVIDIA アクセラレーテッド コンピューティング プラットフォーム上で動作する環境を構築・導入した。今後、日立のドメインナレッジやアプリケーション開発の強みを取り入れた生成AI共通基盤として段階的に強化していく。

 日立の執行役副社長 兼 デジタルシステム&サービス統括本部長の德永 俊昭氏は、「日立は創業以来、『優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する』という企業理念のもと、お客さまや社会が抱える課題の解決に取り組んできました。今回、NVIDIAとの先進的なコラボレーションを通じて、日立がミッションクリティカルな分野で培ってきた深いドメインナレッジとNVIDIAの生成AIソリューション群を組み合わせることで、複雑な現実世界の課題を解決し、画期的な成果をもたらす社会イノベーションを加速することができると期待しています」と述べている。

 また、NVIDIAのWorldwide Field Operations でExecutive Vice PresidentであるJay Puri(ジェイ プリ)氏は、「企業は、生産性、効率性、自動化のニーズに対応するために、生成AIの最新かつベストなツールを求めています。日立とNVIDIAの技術を組み合わせることで、企業は、インダストリアリゼーション(産業構造の変化)の限界を越え、DXの次の波へと進んでいくことができます。」と述べている。

協業内容について

NVIDIA Omniverseとドメインナレッジによる次世代デジタルツイン環境の開発・活用

 日立は、従来の枠を超えた壮大なプロジェクトのビジョンを策定。具体的には、OpenUSDアプリケーションを接続および開発するためのプラットフォームであるNVIDIA Omniverseと、Physics-ML(物理に基づいた機械学習)モデルの構築やトレーニング、ファインチューニングのためのフレームワークNVIDIA Modulusを活用することで、デジタルツイン環境で、エネルギーやモビリティなどミッションクリティカルな日立のさまざまなアセットやプロセスをシミュレーションし、最適化することが可能となる。そして、その結果を現実の世界に反映させることで、グリーンエネルギーへの移行加速やヘルスケアでの新たなイノベーションの実現、交通システムの安全性の向上など、大規模なソリューションを共同で開発し、その有効性を検証・改善することが可能となる。

Lumada AIソリューションとNVIDIA AI Enterpriseの統合

 日立がさまざまな業界で価値創出の実績を積み上げてきたLumadaのAIソリューションのライブラリと、NVIDIA AI EnterpriseやModulusのプラットフォームを統合。日立のデザイン・デジタルエンジニアリングのケイパビリティを活用したこれらのソリューションは、モビリティやエネルギー、製造業、金融などのさまざまな業種のユーザーがイノベーションを加速し、オファリングの強化やインテリジェントなAIソリューションを創出することを可能にする。

NVIDIA DGX BasePOD認証適合の新AIソリューション「Hitachi IQ」提供

 今回の協業により、日立の米国子会社であるHitachi Vantaraは、NVIDIA DGX BasePOD認証を取得した「Hitachi iQ」ポートフォリオの第1弾製品を発表し、NVIDIA DGXインフラストラクチャと高信頼性ストレージ上に構築された認証済みの統合ソリューションを提供。そして、複数のコンサンプションモデルにより、ユーザーが必要なものだけを利用できる仕組みを提供し、オンプレミスのパフォーマンスや投資収益率(ROI)の向上を可能にする。

 今後、「Hitachi iQ」は、NVIDIA H100を搭載したハイエンドのNVIDIA HGX製品とNVIDIA H100TensorコアGPUとL40S GPUで構成されるPCI-Eベースのミッドレンジ製品などラインアップを強化していくとともに、これらのGPU製品を補完するものとして、エンタープライズグレードのAIツールとフレームワークからなるソフトウェアプラットフォームであるNVIDIA AI Enterpriseも提供していく。

 さらに、Hitachi Vantaraは、ファイルストレージ技術「Hitachi Content Software for File」 を活用した第5世代ベースの新しい高速ストレージノードを提供する予定であり、複雑なAIワークロードに対応する非常に高速なストレージソリューションの提供が可能となる。Hitachi Vantaraは、「Hitachi iQ」ポートフォリオを2024年度第1四半期に提供開始する予定。

 日立は、これらのNVIDIAとの協業を通じて、社会により良いインパクトを与え、サステナブルな社会の実現に貢献していく。