「社内のミドルマン」として奮闘 toBアバターサービスを提供するAVITAひとりめデザイナーの心がけ

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2023/10/06 08:00

「社内のツッコミ屋」「深掘り役」として意識している「言語化」

――ひとりめのデザイナーとしてどのようなことを意識していますか?

デザイナーなので「可視化」は当たり前だとは思っているのですが、いつも意識しているのは「言語化」です。あまりデザインに関係ないようなテーマであっても会議に入り、「社内のツッコミ屋」「深掘り役」として空中戦の議論になりがちな部分を整理していくことも多いです。

またデザイナーとして、役割に明確な線引きを設けないようにしています。とくにひとりめだと、なにもかもゼロから取り組まなければいけないため、誰も拾えていないボールを積極的に拾いにいったりすることなども意識していますね。あらゆるところに顔を出していくため面倒くさいなと思われている可能性もありますが(笑)、決まったものをブレイクダウンしていくよりも、会議体のデザインから行ったり、最初のフェーズから関わっていく姿勢がないと、正しくデザインの成果をだすことは難しいと考えています。

デザイナーとして、セールスやマーケティング、エンジニア、さらには経営層などさまざまな立場・職種のメンバーと話す機会がありますが、各職域に独自の言葉づかいがあります。スタートアップの場合はとくに、十分にキャッチアップする時間をとることが難しいケースも多いため、それぞれのメンバーにとって適切な言葉を使うこと、また短い時間でコアな議論ができるようなわかりやすい言葉選びも常に意識しています。

以前携わっていたゲーム業界は、toCのなかでもフィクションを通して感情に訴えかけることが重視されていたように思います。ですがtoBはビジネスにコミットしなければいけないため、このプロダクトを活用することで得られるメリットをイメージするための「説得力」が必要。その部分は大きな違いでしょう。こと私たちのアバターサービスで言えば、ただ「アバターを使って複数拠点にアクセスできる」ことを押しだしても、なかなかビジネスでの利用シーンを想像しづらい。そのため、先進性や革新性をアピールするのではなく「オフィスの外線電話を使うようなイメージのプロダクトです」など、心理的負荷を下げるような言い回しをビジネスサイドのメンバーに示し、お客さまに伝えやすい言葉にすることも心がけています。

――最後に展望をお聞かせください。

私たちが提供しているようなアバターサービスが受け入れられるかどうかは、価値観の問題が大きいように思っています。私自身、欧米のスタートアップが好きなのですが、UberやAirbnbのようなシェアリングエコノミーの概念が最初から受け入れられたかというとそういうわけではないでしょう。赤の他人に自分の家の鍵を渡したり、知らない人を自分の車に乗せたりすることが当たり前になったのは、かなりダイナミックな価値観の変化だったはず。そう考えると、プロダクトをわかりやすくしていくことももちろん大切ではありますが、それ以外の部分にもカギがあるように思うんです。

連絡手段は手紙から電話に、電話がメールになり、今ではビデオ通話も珍しいものではなくなりました。ですが、そういった技術自体はかなり昔からあったんですよね。それがコロナ禍という外的要因で価値観が大きく変わりました。それ以外にも、日本では労働人口の減少やダイバーシティの推進といった社会課題が山積みです。それらの課題を価値観が変わるチャンスだと捉えると、社会課題解決という点でも「アバター技術」がひとつのブレイクスルーになるのではないかと考えています。

「当たり前にアバターを使ってもらえる価値観の変化」をどのようにつくっていくか。それをどのようにプロダクトとして表現していくか。そこに挑戦していけたらと思っています。

――岩﨑さん、ありがとうございました!