アプリが適しているのは「コアファンの育成」
ヤプリが提供するのは、プログラミングのコードを書かずにアプリの構築ができるノーコードのプラットフォーム「Yappli」だ。Yappliを導入している企業は、飲食や小売業から、BtoB企業などさまざま。「特定の業界や用途に特化しているわけではなく、幅広く支援できるのがヤプリの特徴のひとつ」と神田氏は語る。
ECにおけるアプリのユーザーは、コロナ禍以前と比較すると30%近く増加。デジタルの利便性を実感したユーザーは、外出の規制が緩和されていく中でもリアルにおける買い物とECアプリを使い分けるようになったため、2021年と2022年を比較してもセッション数は伸びているのだ。
「消費者にデジタルの環境をしっかり用意すること。それが企業やブランドとしてもいっそう大切になってきているのではないでしょうか」(神田氏)
だが、ひとくちにデジタルと言ってもその接点は多岐にわたる。企業はこれらをどのように使い分ければ良いのだろうか。神田氏はアプリならではの特性を解説するため、次の図を提示した。
これは、ユーザーと企業のつながりごとに、ウェブサイト、SNS、アプリがどのようなユーザーに届くのかを示したものだ。ピラミッドの上段がコアファン向け、下段が新規ユーザー向けとなっている。
「最近ではTikTokをはじめとしたSNSの活用が広まりました。また、検索をしなくてもSNSのレコメンドによって気になる商品と出会えるなど、情報収集の手段は多様化しています。その中でアプリが適しているのは、ユーザーとのつながりを深めること。コアファンの醸成に非常に向いていると言えます」(神田氏)
スマートフォンの画面にアプリのアイコンを設置すると自然と目に触れる機会が増えるため、ユーザーが再訪しやすくなるという効果もある。「ちょっと気になるけれどお店に行く時間はない」というユーザーでも、アプリを見れば新作商品の情報などを簡単にチェックすることができる点もアプリのメリットだ。
また、アプリではプッシュ通知でリアルタイムに情報を届けたり、コンテンツをストックしたりすることも可能。こういったアプリの特徴を活かし、長く深いつながりを醸成するために用いるのが適切な活用方法だと言えるだろう。
新機能「Block UI」で目的に合わせたデザインを実現
続いて登壇した鏑木氏は、ヤプリの機能性やデザイン性の高さに触れながら、「全く新しいアプリ基盤でモダンなUI」と謳われた画面作成の新機能「Block UI」を紹介。この機能は、ブロックを縦に積み重ねることで容易に画面を構成することができるものだ。
「従来のヤプリでは、まっさらな画面に要素を足しながらアプリの画面を作成していくことが一般的でした。今回リリースしたBlock UIでは、機能を呼び出し設置するという概念のもとで作成できる点は大きな特徴です。『お知らせ』『購入履歴』『ポイント』といったブロックをひとつの画面で積み重ねながら表現することが可能なため、非常に自由度が高い、ネイティブアプリを簡単に制作することができます」(鏑木氏)
そんなBlock UIを効果的に活用したアプリの事例ふたつを鏑木氏が紹介。ひとつめに挙げたのは、SHIPSの公式アプリだ。同社は顧客との接点を広げることを目的にアプリのリニューアルを行い、ECの回遊に特化したUIを実現。バナーや各要素を、少しでも購入に近づけるような形で配置している。
またアプリを通じたEC経由の売上を伸ばすのみならず、店舗体験を豊かにしたいという思いで設計されている点もポイントだ。たとえば店舗で会員証を表示する際、アプリを操作し会員証のみが表示されている画面を提示するUIが多いが、SHIPS公式アプリでは、ECの購入履歴や試着の申し込み履歴と同じ画面に会員証が表示される。これにより、アプリを操作するストレスを減らしている点が「非常に洗練されたUI」だと鏑木氏は語る。
ふたつめは子育てメディアアプリ「リトルママ公式アプリ」。本アプリでは、エンジニアではない担当者が、Block UIをうまく活用することでアプリのリニューアルを行うことができたという。電子書籍を更新したり、プッシュを打ったりしたタイミングでアプリ画面そのものが自動更新される仕組みのため、運用担当者の作業時間を削減することも可能。担当者、ユーザーの双方に易しい仕様になっている。
アプリを活用した施策のポイント 値引きではないインセンティブとは
続けて鏑木氏は、アプリを活用して独自の施策を行った事例として3つを挙げた。
ひとつめは、藤崎百貨店公式アプリが実施したログインスタンプの取り組み。ログインスタンプと言うと貯めることで割引やポイント付与などを報奨とするケースが多い中、同社は提携している八木山動物公園のスマトラトラ「ダマイ」君へのおもてなしをインセンティブとした。1週間で貯まったスタンプ数に応じて、ランディングページが更新される仕様になっており、ダマイくんへ愛着を抱いたユーザーが思わずおもてなしをしたくなるようなストーリー設計が特徴である。
「企画終了後、実際にたまったお肉をダマイ君が食べる様子が動画で公開されます。値引きではないインセンティブでも、ユーザーが満足感を得られるようなコミュニケーションを実施した好例です」(鏑木氏)
また、値引き以外の特典がユニークな一例として、「お仏壇のはせがわ」の公式アプリも紹介。アプリで1日1回おみくじを引くことができ、その日の運勢やためになる仏教用語、かわいらしい動物の絵がランダムで表示される仕組みになっている。売上ではなく、「ユーザーと密な接点を持つ」ことを目的としているため、思わず毎日アプリを開きたくなるコンテンツを実装したと言う。
3つめに挙げたのは、ライフスタイルカンパニーである「生活の木」の公式アプリ。「マイアロマ」という診断コンテンツを備えることで、ユーザーとの接点強化を図っている。
質問に答えることで自身に合った「マイアロマ」がレコメンドされ、登録者限定クーポンが表示される。鏑木氏は「ユーザーの状態に合わせて表示が変わるだけでなく、クーポンも搭載することで購入促進に寄与できる設計」だと解説。「担当者おひとりですべて実装された点もポイント」だと補足した。
アプリのプラットフォームだけでなく、顧客管理システムも提供するヤプリ
最後に再び登場した神田氏は、ヤプリが提供するサービスについて紹介。ヤプリでは、最初のアプリ開発は同社が担当するが、その後の運用は企業の担当者が行えるよう、管理画面を提供している。ドラッグ&ドロップで容易に機能を追加できるだけでなく、反映される様子も同じ画面で確認できる。活用する企業が多い「プッシュ通知機能」も、テキストや画像を選択するのみ。その操作は1分程度で完了すると言う。
また施策や機能を追加したあとに重要な効果測定においても工夫が施されている。Yappliではログインした最初の画面にダッシュボードが表示されており、ダウンロード数やアクティブユーザー数などのデータを確認することが可能。すぐに振り返りをすることができるため、トライアンドエラーをしながらさまざまな施策を試すことが可能なのだ。
そしてヤプリが開発・提供しているのはアプリのプラットフォームだけではない。2021年10には、シナリオ設計もすべてノーコードで実現できる顧客管理システム「Yappli CRM」をリリースしている。
一般的に顧客管理システムはアプリと別に用意し、連携させながら施策を進める企業が多い。神田氏は「ヤプリもそういったかたちで長く支援を行ってきたため、既存の顧客管理システムと連携したアプリ活用も可能」としたうえで、「これからアプリとシステムを準備する企業さまには、その両方を即時でリリースできるCRMもオススメしたい」とアピール。顧客管理以外にも、ポイント管理、アプリCRM施策などを行うことができるため、アプリを中心にデジタル上のユーザー体験を高めたい企業は「Yappli CRM」も必見だ。
神田氏は最後にこのように語り、セッションを締めくくった。
「アプリを作るプラットフォームのYappliと、CRMのツールを活用することによって、さらに精度の高いモバイルマーケティングを実現することが可能になっています。これからアプリの施策を検討されている方、またお客さまとより良い関係を構築しLTVを高めていきたい企業さまは、ぜひお声掛けください」
▼ヤプリが提供するアプリプラットフォーム「Yappli」のお役立ち情報は、お役立ち資料ページよりダウンロードいただけます。