「社会課題に取り組むデザイナーをもっと増やしたい」 医療の未来をつくろうとするメドレーデザイン部とは

「社会課題に取り組むデザイナーをもっと増やしたい」 医療の未来をつくろうとするメドレーデザイン部とは
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2019/12/26 11:00

 12月のマザーズ上場でも広く知られるようになった医療系スタートアップのメドレー。提供するサービスのひとつ「クラウド診療支援システムCLINICS」は、2019年度グッドデザイン・ベスト100に選出された。医療ヘルスケアのさまざまな課題に対し、まず未来のあるべき姿"グランドデザイン"を描き、全体最適の観点で「新しい医療体験を創造する」ためのプロダクトを作っているメドレー。そのメドレーで、デザイナーはどのような仕事をしているのだろうか。新規事業、ジョブメドレーの担当、そしてデザイン部部長の3人のデザイナーに話を聞いた。

メドレーのデザイナーの仕事とは

 “医療ヘルスケアの未来をつくる”をミッションに掲げ、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」「クラウド診療支援システムCLINICS」など、医療領域に特化したサービスを提供するメドレー。2009年の設立以来、医療系のスタートアップ企業として注目を浴びながら成長を続けている。

 メドレーが提供する各プロダクトから、コーポーレートブランディングにいたるすべてのデザインを担当するのが「デザイン部」だ。総勢5人でこれらの仕事を受け持っていると言う。

 メドレーのサービスは、医療のさまざまな課題に対し、医療のデジタルトランスフォーメーションを推進することで解決に取り組んでいる。利用するのは医療関係者や医療サービスを受ける患者であり、デジタルリテラシーが高いユーザー向けのみのサービスではないため、デザインを考え抜く必要があると言える。

 会社としてもサービスそのものを「広義のデザイン」と捉えており、「クラウド診療支援システムCLINICS」は2019年度グッドデザイン・ベスト100を受賞しているが、審査員からの評価は「医療を患者の視点から捉え直している点、そのためのオープンAPI、シンプルだが洗練されたUI/UX、そして規制産業の中で政府や多様な関係者への丁寧で地道な働きかけを行っている」というもの。UI/UXなどのデザイン面だけでなく、サービス全体の取り組みで受賞している。

 “医療ヘルスケアの未来をつくる”メドレーのデザイナーの仕事、そしてデザインや仕事への考えかた、ミッションとは? デザイン部の3人に話を聞いた。

デザインが目的ではなく、デザインで社会の課題を解決したい人が集まるのがメドレー

 メドレー デザイン部の5人の経歴はさまざまだ。今回取材に協力してくれた波切雅也さんは、グラフィックデザイナ―、ウェブデザイナーを経験してからメドレーへ。現在は、CTOが管轄するプロダクト戦略室で新規事業のデザインを担当している。小山敬介さんは、空間デザイン事務所からデザインコンサルティングファームを経て、現在は「ジョブメドレー」のデザインを担当。そして前田邦織さんは、制作会社から事業会社の経験を経て、2017年からメドレーのデザイン部長を務めている。

 さまざまな選択肢から、医療系ウェブサービスを提供する事業会社のデザイナーを選んだ動機はどのようなものだろう。

「前職のデザインコンサルティングファームに勤務していたときから、医療関係の仕事を行うようになりました。いくつか担当するうちに子どもが生まれ、退院する際に育児のコツを複数の助産師さんからアドバイスしていただいたのですが、皆さんバラバラだったんですね。はじめて親になる者にとってみれば、一体どれが正しいのか不安を覚えます。それをきっかけに、きちんとした医療関係の情報を提供する会社の仕事がしたいと思うようになりました。

メドレーは、前職で競合調査をしていたときに知り、おもしろそうだと思っていました。転職の際に調べてみると、『医療の課題を解決する』ということをいろいろなところで謳っていた。そういう医療系サービスの会社はほかにはなかったと記憶しています。本当に課題を解決したいなら、小さいことの積み重ねを繰り返して、泥臭いことをやっていく必要があると思うのですが、実際にサービスに触れてみて、メッセージと実際の取り組みがリンクしていると感じました。医療はレガシーな業界ですから、“衝撃を与える”のではなく、ソフトランディングでサービスをローンチしていく必要がある。前のめりでアクセル全開のスタートアップっぽくないところにも惹かれて、メドレーで働くことを選びました」(小山さん)

株式会社メドレーデザイン部 デザイナー 小山敬介さん
株式会社メドレー デザイン部 デザイナー 小山敬介さん

 事業会社、しかも医療業界にかかわるサービスをデザインすることは、デザイン自体が目的でなく、課題を解決するためのデザインなのだと前田さんは言う。

「オンライン診療アプリ『CLINICS(クリニクス)』は、スマホのビデオチャットを使うことで、直接対面せずとも医師に診察してもらえるというものです。ITを使うことによって、患者の移動時間や待ち時間を軽減することができる。メドレーのサービスは、インターネットを介して患者と医療機関をつなぐプロダクトなのです。被災地におけるオンライン診療での活用事例として、首相へのプレゼン経験もあります。

一般的なウェブサービスは、サイトを訪れたユーザーのうち、より多くの人がコンバージョンするのが良いとされます。そう考えると、良いデザインとは、コンバージョンに貢献するデザインということになります。一方で、CLINICSは医療機関向けのシステムを提供しており、日々使い続けるシステムです。そのため、UI/UXの良し悪しが業務オペレーションの効率にダイレクトに影響します。よりデザインに対して責任を求められるのが、SaaSシステムのおもしろいところだと思っています。

メドレーのデザイナーは“プロダクトデザイン”を突き詰めるのが仕事であり、純粋なウェブデザインの表現とは異なるところがおもしろい。小山も言うように、レガシーな医療業界をITで劇的にすぐ変えられるかと言うと難しいです。しかし、代表取締役医師の豊田を軸に、医療業界で働いていた人たちがサービスの制作にアプローチする環境はなかなかないと思います。プロダクトの開発と並行して、行政にもアプローチしている点も、メドレーの仕事における魅力のひとつです」

株式会社メドレー デザイン部部長 前田邦織さん
株式会社メドレー デザイン部部長 前田邦織さん

メドレーではデザイナーを募集しています

メドレーでは、医療ヘルスケアの未来をデザインで変えていきたいデザイナーを募集しています。興味のある方はぜひこちらのページからご応募ください。

デザインで社会の課題を解決するために、日々のデザインでアウトプットするべきこと

 携わるサービスが社会の課題解決につながること、社内の医師とともに行政ともやりとりをして仕事を進めていく地道な積み重ね、そして医療にかかわるサービスだからこそデジタルに強くない人のことも踏まえてプロダクトを作っていくこと。このような状況下で、メドレーのデザイナーは日々、なにを考えてデザインの仕事に取り組んでいるのだろうか。

「ひとことで言うと、メドレーのデザインにはムダがありません。オフィスのレイアウトもそうですが、“凡事徹底”を掲げていて、それがプロダクト全体に表現されています。とくだん言語化はしていないけれど、自然に意識しているところがあるかもしれません。そして、プロダクトとして機能的であるために、デザインの細かいところまで理由を考えながら設計しているのも特徴です。さらに、エンジニアや医師とも検討を重ねながら、最適なUIを提供できるよう日々改善を重ねています」(前田さん)

 たしかにメドレーを訪問するとまず、真っ白な壁にロゴが掘られた受付が目に入る。それを踏まえると、「ジョブメドレー」のサイトは少しカラフルにも見えるがその意図とは。

「たしかに『ジョブメドレー』は色をたくさん使っていますが、意図しない装飾はありません。装飾にもそれぞれ意味や機能を持たせています。尖ったデザインは尖った人にしか刺さらない。さまざまなユーザーが使えるようなものってなんだろうと意識しながらデザインをしています。メドレーのそれぞれのサービスを利用するユーザーは、20代もいれば持病のあるおばあさんもいて幅が広い。その幅の広さを意識しないと、誰にも使われないサービスになってしまいます」(小山さん)

国内最大級の医療介護分野の求人サイト「ジョブメドレー」。2009年11月にサービスを開始し、累計会員数は40万人を突破している。
国内最大級の医療介護分野の求人サイト「ジョブメドレー」。2009年11月にサービスを開始し、累計会員数は40万人を突破している。

「アウトプット1つひとつの意味が何なのかを考えるようにしています。見た目も機能も、それぞれの意味を問うことをメドレーのデザイナーは意識しています」(波切さん)

株式会社メドレー デザイン部 デザイナー 波切雅也さん
株式会社メドレー デザイン部 デザイナー 波切雅也さん

業界を知らずしてデザインはできない わからないことを自覚し、聞いて学べる関係を築くこと

 ウェブ制作会社で技術を身につけてから事業会社へ、事業会社にはいるけれどより社会に貢献するサービスに携わりたい。そのように自身のキャリアを考えている人も少なくないだろう。メドレーのような会社で求められるデザイナー像は、どのようなものだろうか。

「これまでお話してきたように、ここにいる3人を見ても、経歴もタイプもバラバラです。何かしら得意な領域があって、個性があればいいのではないでしょうか。お互いが影響し合い、成長できる環境であればと思っています。事業会社では、その業界の知識を、自分から学習していく意欲は求められると思います。自らキャッチアップしに行き、仕組みや制度を理解しないとデザインはできません。最初は難しいけれど、深堀りすることに興味がある人が向いているかもしれませんね。テクノロジーに興味を持っていて、エンジニアとコミュニケーションを密にとれる環境は、おもしろいと感じてもらえると思います」(前田さん)

「自分の知らない領域であっても、それに自覚的であればいいと思います。メドレーは複数人の医師をはじめ専門家揃いですから、わからないことは聞けばいい。しっかり聞ける関係を築くことがとても重要だと思います。自覚的であること、聞ける関係を構築できること。このふたつがあればやっていけますし、ないと難しいかもしれません」(小山さん)

「私が今所属しているのは、ゼロからイチを作り出しているチームです。事業を立ち上げるための仕事は多様で、自分が経験したことがなかったり知らないことであっても、調べながら取り組むことが大事だと思っています。私たちはデザイナーですが、チームとして必要であればディレクターのような仕事をする場合もあります。1つひとつの仕事が事業にとってどんな意味があるのかを考え学びながら仕事をしています」(波切さん)

メドレーではデザイナーを募集しています

メドレーでは、医療ヘルスケアの未来をデザインで変えていきたいデザイナーを募集しています。興味のある方はぜひこちらのページからご応募ください。

トレンドに左右されず、必要なものを取り入れるスタンス

 デザインが主役ではないとしながらも、さまざまなトピックスやテクノロジーが次々に飛び出すのがデジタル業界だ。そうした流行りものとはどのように付き合っているのだろうか。

「新しいものの中にも、正しいソリューションはありますから、まったく気にしないのはおかしいですよね。自分たちの知識が固定化するのも良くないから、アンテナを張ることは重要だと思っています。流行りに飛びつくのではなく、正しい解決策だと思ったら採用する。そういう姿勢は大事かなと思います」(小山さん)

「今の時代ウェブに限らず流行り廃りが早いので、なんでもすぐに飛びつくのではなく意味があると判断したものは早く取り入れる、くらいの姿勢でいます。ものごとを俯瞰して見られるようになったのは、メドレーのような会社に入ったことも大きいと思います」(波切さん)

「最新のデザインツールやコミュニケーションツールも積極的に活用して、効率化につなげています。必要であれば取り入れますが、トレンドはあまり気にしていませんね」(前田さん)

デザイナーの領域を越えていく

 医療業界、ひいては社会の課題をプロダクトデザインで解決していこうと取り組むメドレーのデザイン部。先進的な彼らは、どのような仲間を欲しているのだろうか。

「私の担当している『ジョブメドレー』については、サービスの規模が大きくなっているので、デザイナーが担当する幅も広がってきています。サービスのUI/UXをデザインしながら、テレビCM制作にも携わったりします。ぜひそんな『ジョブメドレー』に携わりたい、という人に入っていただきたいですね。仕事の幅は広がっているからこそ、それぞれに特化したメンバーで構成するのもいいかもしれない。ひとつのプロダクトに対して、真摯に向き合えるデザイナーをきちんと配置することで、会社の印象も決まってくるのではないかと考えています」(小山さん)

「デザイン部としては、今後はブランディングにも注力してやっていけたらと思っています。そのほかにもプロダクトマネジメントの役割をデザイナーは期待されていますが、まだまだ応えきれていない部分も多いと感じています。課題を解決するためにはどのような事業が必要で、だからプロダクトをどうデザインしていくのか。そういった考えのデザイナーには、メドレーは良いと思っています」(波切さん)

「メドレーの知名度は少しずつ上がっていますが、具体的に何をしている会社なのかはまだまだ伝えきれていないと感じています。コーポレートのブランディングにも注力していきたいので、それを担ってくださる方にも来ていただきたいですね」(前田さん)

 医療ヘルスケア分野の課題解決に、10年後、20年後の未来を見据え、今できる最大限の力を発揮して丁寧にデザインに落とし込み、結果を積み重ねていきたい。そんなデザイナーは、メドレーの門戸を叩いてみるのもひとつの選択肢かもしれない。

メドレーではデザイナーを募集しています

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