2025年度にはマルチアングル映像配信プラットフォーム市場が80倍に拡大の予想/富士キメラ総研調査

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2020/08/24 05:00

 マーケティング&コンサルテーションの富士キメラ総研は、5G通信の提供エリア拡大や対応端末の普及にともない、今後の利用拡大が想定されるクラウドゲーミングサービスやマルチアングル映像配信プラットフォームなどの市場を調査。同調査では、サービス/ソリューション22品目(BtoC 3品目/BtoB 19品目)と移動体通信サービス2品目の市場を調査・分析し、将来を展望した。

 同調査結果の概要は、次のとおり。

サービス/ソリューション22品目の市場

 2020年度の市場は、5,984億円(2019年度比4.3%増)が見込まれる。今後も市場は拡大を続けていくとみられ、2025年度には、9,371億円(2019年度比63.3%増)と予測される。

 BtoC市場は、防犯や見守りで利用されるホームセキュリティ/見守りサービスが堅調に伸びている。また、クラウドゲーミングサービスは、ゲームの操作処理をクラウド上で行うため5G通信の特徴である低遅延のニーズが高く、5G通信の提供エリア拡大や対応端末の普及により利用が進むとみられ、拡大をけん引していくと予想される。

 BtoB市場は、防犯や防災に加えマーケティングでの利用が広がる監視カメラソリューションを中心に、労働力不足対策や業務効率化を背景に伸びている遠隔作業支援ソリューションや音楽ライブやスポーツ大会の配信、eスポーツの実況中継など、活用分野の広がりが期待されるマルチアングル映像配信プラットフォームが拡大をけん引していくとみられる。

 注目市場については、次のとおり。

クラウドゲーミングサービス

 クラウド上のサーバーにゲーム専用のハードウェアを用意し、コントローラーの操作情報と映像や音声をインターネット経由でやりとりすることで、手元のハードウェアの性能に依存することなく、ハイスペックなゲーム体験を提供するサービスを対象とする。

 2020年度の市場は、29億円(2019年度比2.4倍)が見込まれる。クラウドゲーミングサービスは、ゲームの操作処理をクラウド上で行うため安定した通信インフラが求められており、現状は家庭での固定インターネット回線利用が中心である。今後も固定インターネット回線利用が中心になるが、5G通信の提供エリア拡大と対応端末の普及とともに、5G通信を利用してクラウドゲーミングサービスを楽しむユーザーが増え、市場拡大に寄与するとみられる。また、もっとも重視される「低遅延」のメリットをより享受できるフル5GであるSA(スタンドアローン)方式の運用が本格化する2023年以降に、サービスの利用が加速するとみられる。

マルチアングル映像配信プラットフォーム

 複数のアングルから撮影された映像を視聴者側で視点の切り替えができる映像配信方法である。マルチアングル映像のストリーミング配信を目的として、インターネット経由でアップロードされた各カメラからの映像データをデータセンター内のクラウドサーバーで配信可能な形式へ変換し、視聴者まで伝送するシステムを対象とする。

 2020年度の市場は、7億円(2019年度比75.0%増)が見込まれる。携帯電話キャリアによる5G通信提供開始に伴うデータ容量無制限といった料金プランやCMによる宣伝効果、音楽ライブやスポーツのオンライン配信数増加などを背景に市場は拡大するとみられる。

 今後は、マルチアングルの映像配信技術を自社利用していた企業の参入や、eスポーツやファッションショー、教育機関での利用、商品PRの配信、イベント会場における各地点の監視など、新規分野での活用増加によって市場は拡大していくとみられる。

ホームセキュリティ/見守りサービス

 住宅内に設置されセンサーによる侵入者や高齢者状態異常の自動通知、または、居住者や高齢者自身からの通知により警備員が駆け付ける防犯サービス、見守りサービスを対象とする。

 2020年度の市場は、2,655億円(2019年度比9.3%増)が見込まれる。大手警備会社を中心とするサービス提供会社が展開しており、戸建住宅を中心にユーザー獲得が進んでいる。現状は、センサーデータを収集し固定インターネット回線、または、電話回線を通じた利用が中心であるが、3G/4G通信の利用も増加している。

 今後大容量データ通信や低遅延を実現する5G通信の普及が進むと、特に防犯サービスでは不審者を侵入させないように戸外周辺をリアルタイムに画像で監視して異常を察知するなど、サービスの向上が図れることから、需要は高まるとみられる。

遠隔作業支援ソリューション

 遠隔地にいる指示者と現場にいる作業者がコミュニケーションのみではなく、音声や映像などをリアルタイムで共有することで業務の効率化や作業品質の向上が図れる、AR表示を活用した業務支援が可能なソリューションを対象とする。

 2020年度の市場は、37億円(2019年度比48.0%増)が見込まれる。2019年頃からの実証実験を終えて本格導入を始めた企業や、国内工場や海外工場との遠隔通信用途や新型コロナウイルス感染症の感染予防対策として利用を開始した企業が増えていることから、拡大するとみられる。

 今後は、引き続き、国内工場や海外工場との遠隔通信用途で需要増加が予想される。また、人手不足解消や業務効率化へのニーズが高まっており、市場は好調に拡大していくとみられる。

調査概要

調査対象
調査方法

富士キメラ総研専門調査員によるヒアリングおよび関連文献、データベース活用による調査・分析

調査期間

2020年3月~6月