コロナ禍でオンライン移行が急速化、モバイルアプリ市場はさらなる成長を続ける/AppsFlyer調査

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2021/01/08 05:00

 モバイル広告効果計測プラットフォームとマーケティングアナリティクスを提供するAppsFlyer Japanは、2020年のモバイルアプリ市場を総括するレポート「State of Japan 2020(ステイトオブジャパン2020)」を発表した。

 同レポートは、同社が保有する2020年1月〜9月における約8,500万件のアプリインストール、月間インストール数が1,000回以上の2,000ものアプリデータを基に、日本国内のモバイルアプリ市場動向を、さまざまな観点から12のアプリカテゴリにわけて詳しくトレンドをまとめている。

2020年の国内市場について

国別のモバイルアプリ事業者シェア

 日本は、アプリストアにおける消費支出の上位国であり(2019年時点世界第4位 - AppAnnie調べ)、海外から多額の投資が集まっているマーケットとなっている。2020年1月から8月の国内モバイルアプリ市場における国別のモバイルアプリのシェアを見ると、全体の42%は日本企業によって開発されたアプリ。続いて、中国企業のシェアが24%、米国が8%、韓国が6%、ロシアが3%、そのほかの地域が17%と続いている。

 日本において代表的な他国が開発したアプリは、中国の「Tik Tok」や「荒野行動」、米国の「Amazon」や「Slack」、韓国では写真アプリの「snow」などが中心に挙げられる。

OS別のモバイルアプリシェア

 2020年8月における、OS別のアプリインストールシェアを見ると、全体ではiOSユーザーが57%、Androidユーザーが43%と、日本においてはiOSユーザーの方がアプリインストールのシェアが高いことがわかる。また、アプリカテゴリ別では、iOSではソーシャル、トラベル、写真アプリのシェアがそれぞれ70%以上と、プラットフォームとして大きな存在感を示している。一方で、iOSと比較するとシェアでは劣るものの、Androidはビジネス(48%)、ゲーム(47%)、エンターテインメント(49%)のインストールシェアが比較的高く、iOSの比率と近しい数値となった。

都道府県別のアプリインストールシェア

 非オーガニックインストールにおける都道府県別(上位10位)のシェアを見ると、日本では都心を中心にインストール数が多い結果に。東京(13.51%)、大阪(8.41%)、神奈川(7.71%)、愛知(6.81%)、埼玉(5.81%)が上位5位を占めており、これらの都府県は、人口が多いことに加えて、ビジネス街や繁華街が多いことが特徴的。また、埼玉、千葉、神奈川は東京、兵庫は大阪、そして静岡は愛知、それぞれがベッドタウンとしても機能しており、都心部まで電車で30分から1時間程度で通勤できる場所に位置している。

 東京とその隣接地域(神奈川・埼玉・千葉)のシェアの合計は約30%、大阪とその隣接地域(兵庫)のシェアは約13%、愛知とその隣接地域(静岡)のシェアは約9%と、これら3エリアだけで47ある都道府県全体の半分以上(52%)となり、主要な経済地域が占める割合が非常に高いことがわかる。

2020年の国内モバイルアプリについて

カテゴリ別のアプリインストール数

 2020年1月〜8月のアプリインストール数全体の推移を見ると、新型コロナウイルス感染拡大が本格化した2月から5月にかけてアプリインストールが緩やかに上昇しており、第1波の感染状況が少し落ち着きを見せて緊急事態宣言が解除された5月から6月にかけて減少。そして、6月から8月にかけて再び徐々に伸びを見せていた。

 カテゴリ別で特に顕著な動きが見られたのは、教育や、エンターテイメント、メディアコンテンツといったカテゴリ。教育では、新型コロナウイルス感染拡大当初より小学校から大学まで幅広い世代で休校が進み、オーガニック・非オーガニックともにインストールが急激に伸びている。また、学校が再開しはじめた6月以降は、非オーガニックインストールは明らかに減少が見られたものの、オーガニックインストールが相対的に伸び続けており、教育業界全体がモバイルアプリの利用を定常化する動きが進んでいることが判明した。

カテゴリ別のアプリ起動数

 インストールされたアプリが実際にユーザーにどのくらい利用されているのか、カテゴリ別にアプリ起動数の推移を見ると、コロナ禍が常態化に向かい始めた2月頃から多くのカテゴリで変動が見られている。

 教育アプリでは、緊急事態宣言により学校が休校(3月上旬)した時期からアプリの起動数が急激に増加し、緊急事態宣言が続いた5月をピークに、学校が再開した時期(6月)から対面の機会も増えたことも影響したのか徐々に減少している。ゲームアプリのアプリ起動数推移においても、同様に在宅時間が増えはじめた2月から増加し、5月にピークを迎えている。

 エンターテインメントアプリは、緊急事態宣言を受けた外出自粛の影響が顕著に現れており、2月から急上昇。家にいる時間が長くなったことで、ユーザーが動画配信サービスを中心にエンターテインメントアプリをより利用するようになったことが如実に数字に表れている。また、6月にプロスポーツリーグの再開がアナウンスされたことも、同じ時期からの再度の利用上昇に場合によって貢献していると考えられる。

カテゴリ別のアプリ内収益推移

 アプリ内における課金とアプリ内広告からの収益を合わせた「アプリ内収益」においても、収益の動きがコロナ禍のトレンドに大きく連動していることがわかる。

 教育アプリは、3月から5月に向けて一気に収益が増加した一方、5月から徐々に落ち着きを見せている。それに対しビジネスアプリは正反対の動きを示しており、在宅勤務が開始した3月から4月にかけて収益が急降下したものの、在宅勤務が長引きはじめた4月以降利用率が高くなり、収益が伸び続けている。また、ファイナンスアプリの収益は全体的に緩やかに右肩上がりに伸びており、コロナ禍による決済のオンライン化の後押しが一因として考えられる。

 エンターテイメントやユーティリティ、ソーシャルアプリも、全体的に収益が向上しているが、特にこの3つのカテゴリで顕著なのは、6月から8月にかけてアプリ内収益が急激に上昇しているという点だという。特にソーシャルが伸びた背景のひとつとして考えられるのは、デーティングアプリのようなジャンルにおいてオンラインデートといった新たなサービス提供が見られるようになったことである。