ドコモ、個人情報を自動削除したうえで顧客の行動や興味関心を3次元バーチャル空間に可視化する技術を開発

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2023/04/27 13:00

 NTTドコモは、スマートフォンや監視カメラなどの映像から、個人情報を削除したうえで人物の行動や興味関心を可視化する技術を開発した。同技術では2次元映像から人物の骨格などの3次元情報を取得することが可能なため、3次元バーチャル空間上で実際の人物・顧客行動を追体験するなど、従来とは異なる映像・顧客分析の活用が期待される。

 同技術では、映像から人物の骨格情報などの必要なデータを取り出したあと、顔や服装などの個人情報を映像から削除し、人物の骨格を線で描画。個人情報を自動で削除するため、プライバシーを保護したうえで人物行動の可視化が可能となる。また、削除した人物の背景を自動で生成するため、モザイクなどの加工映像と比較してより自然な映像になる。

 さらに同技術適用前の映像は、閉域網で高セキュリティな「docomo MEC」網へ送信され、「docomo MEC」網内で加工されるため、サイバー攻撃の際の情報漏えいリスクの軽減をしながら、人物・顧客行動を分析することが可能となっている。

カメラ映像のプライバシー保護イメージ
カメラ映像のプライバシー保護イメージ

 また、スマートフォンや監視カメラなどで撮影した映像から、人物の滞在時間や目線、物体タッチの情報を取得し、映像から自動作成した3次元のバーチャル空間上に投影することが可能。

 たとえば、同技術をコンビニエンスストアや商業施設の店舗などで利用すると、顧客人数のカウント、性別・年代推定に加え、顧客の商品タッチ・目線、店内動線・立ち止まりのヒートマップを取得することができる。これらの顧客行動データを参照することで、手に取られやすい・目に入りやすい棚や商品、通行量の多いメイン通路、商品購入時に比較検討されやすい商品などを特定でき、商品配置の変更や人流改善などの施策検討、さらにはリアルタイムでの実店舗でのサイネージ変更などの高度な店舗マーケティングへの活用が期待できる。

 さらに、近年注目されているメタバースと、映像から人物行動を取得する同技術が融合することで、たとえば実空間で行動する人々がバーチャル空間へ転写され、バーチャル空間上の人物とともに楽しめるテーマパークなど、さまざまな新しいサービスに対して活用できる可能性がある。

人物行動(商品タッチ)のバーチャル空間表示イメージ
人物行動(商品タッチ)のバーチャル空間表示イメージ

 同社は同技術を用いて2023年4月から、コクヨ、ドコモグループの法人事業を担うNTTコミュニケーションズとオフィス空間内の人物行動可視化に関する実証実験を行う。客観的なオフィス評価の実現に向け、歩行および立ち止まり箇所のヒートマップなどを取得し、コクヨ社のオフィス内で従業員の人流や行動の解析を行い、同技術の有効性をともに検証する。

スマートフォンで撮影した映像から作成したコクヨ社オフィスにおける従業員動線イメージ
スマートフォンで撮影した映像から作成したコクヨ社オフィスにおける従業員動線イメージ

 同社は同技術を通じて、デジタル化社会におけるさらなるプライバシー課題の解決や、メタバースとの融合を今後も検討していく。なお同技術は、2023年度末の商用化を目指す。