放送/映像関連機器の開発・製造・販売・輸出入を手掛けるフォトロンは、数十台のハイスピードカメラを用いて、高速現象を3Dモデル動画化する受託サービス「High Speed Volumetric Capture(ハイスピードボリュメトリックキャプチャ/以下、「HSVC」)を2023年6月中旬より開始する。
同社では、1秒間に1,000枚以上の撮影が可能なハイスピードカメラ41台を用いて対象を撮影し、そこから取得した膨大な画像データを合成・最適化して3Dモデル動画にする技術「High Speed Volumetric Capture」の開発に成功した。同技術を活用することにより、従来の解析シミュレーションソフトウェアでは数ヵ月はかかっていた開発工数を、数日に短縮できる。
また、数十台のハイスピードカメラを試験現場に用意することは容易ではないため、実験・撮影可能なスタジオ(栃木テクニカルセンター)も新たに開設。同システムを受託サービスとして提供し、より多くのユーザーが利用できるようにした。
「HSVC」システムはエアバッグ展開試験だけではなく、さまざまな実験においてシミュレーションと実現象の合致度を見える化し、実験結果および解析情報がMBDやデジタルツインで活用されることの促進に貢献する。
「High Speed Volumetric Capture」 の特徴
40方向以上からの高解像度動画撮影
「HSVC」は数十台のハイスピードカメラを使用し、被写体を全方位的に撮影するため、死角が発生するリスクを軽減できる。高解像度カメラによりエアバッグの展開現象も細部まで撮影することができる。これまで見えていなかった部分を見ることで、製品の改良方法検討やシミュレーションの精度向上につなげることが可能。
自由視点から確認できる3D形状動画
数十台のハイスピードカメラで同期撮影し、データを張り合わせることで、3Dモデルデータを作成する。通常のボリュメトリックキャプチャは静止画だが、「HSVC」は動画データの3Dモデルを作成することが可能。高速現象を自由な視点で確認することができ、これまでは見えていなかった部分の情報をシミュレーションに反映できる。
ハイスピードカメラの撮影専門技術スタッフが対応
3Dモデルを作成するためには高い精度の撮影データが必要となる。試験物の色、サイズ、材料特性などを考慮した照明や撮影手法、データ化をワンストップで対応。高い精度の撮影データから高品質の3Dモデルを作成することで、シミュレーションデータとの差分を把握することが可能となっている。
栃木テクニカルセンター開設
同社は「HSVC」受託サービスを円滑におこなうため、新たに「栃木テクニカルセンター(栃木県下野市)」を開設した。ハイスピードカメラを取り付ける試験設備は幅約6メートル×奥行約4メートルのサイズとなり、周囲も車1台分を動かせる収納スペースを確保し、実車によるエアバッグ展開試験も行える。
今後も設備を充実させ、エアバッグ展開試験以外の要望にも柔軟に対応できるようにしていく。