インターブランドジャパンは、顧客体験価値(CX:Customer Experience)のランキング2023を発表した。同ランキングは、顧客視点でのすべての体験を通じたブランドの「顧客体験価値(CX)スコア」を算定・分析しており、本年度で5回目となる。商品やサービスの機能や性能などの機能的価値だけでなく、そのブランドや企業に関わるすべての体験を通じて顧客が経験する、喜びや満足感などの情緒的価値まで含めた総合的な価値を数値化している。
顧客体験価値(CX)ランキング 2023概況
CXランキングTOP20ブランドの顧客体験価値スコアは、いずれの指標も一様に低下(-8.4%)。昨年夏以降の消費者物価指数の上昇やコロナ禍の終焉などにより、顧客の体験価値に対する評価が厳格なものに変化したように見受けられる。
2020年から2022年までのコロナ禍の顧客体験価値評価では、先が見通せない深刻な状況の中で、顧客の立場に立った体験を提供してくれるブランドに対する評価が高く、また、そうしたブランドを応援する声も多く確認された。しかし、コロナ禍が終焉しつつある状況下の今回の評価では、日常が変化し、リアルなブランド接点や体験も多くなったことがランキングに反映される結果に。また、物価上昇の局面において、ブランドへの評価のハードルが上がっていることも特徴となっている。
生協/コープ(6位)、大丸(18位)、東急ハンズ(36位)、肌ラボ(49位)の4ブランドが新たにランクインする一方、タニタ(16位)、モスバーガー(30位)、ウエルシア薬局(32位)、イトーヨーカ堂(38位)、ローソン(40位)、マックスバリュ(44位)、サンリオ(45位)、ユニクロ(47位)など、リアルな顧客体験が比較的重視される多くのブランドが、50位圏外から再ランクインしたことも本年の特徴となっている。
楽天トラベル(5位)がすべての項目でスコアが低下している一方で、JTB(28位)は、「私にとって意味がある」「私の立場で考えてくれる」など4つの指標でプラスに。また、回答者のうち40%は「過去ユーザー」であることから、コロナ終焉後、対面サービスの価値への見直しがうかがえる。
また、ローソン(40位)は、すべての指標が大幅に向上し、現ユーザーの回答者割合が高く、コロナで閉塞した気持ちを元気にしてくれた「プチ贅沢」なスイーツなど、「わくわく感」や「楽しさ」といった情緒的価値が評価され、顧客へクーポンやポイントの活用を上手く促がし「お得感」を提供していることも評価につながっている。
今回、CXスコアが上昇したブランドは「私向けのものだと思える」「私にとって意味がある」が高評価となった。
Top 3 ブランドの顧客体験評価詳細
帝国ホテル:1位 CXスコア6.53(前回比:+0.15)
昨年の14位から1位へと大きく躍進。「いい気分にさせてくれる」「私にとって意味がある」の評価が大きく向上した。食事の際のもてなしや目配り・気配りなど、人を通じた「ホスピタリティ」が高く評価された。
サイゼリヤ:2位 CXスコア6.42(前回比:+0.03)
昨年の13位から2位へと大きな躍進となった。「私向けのものだと思える」の評価が大きく向上した。とくに、20代の回答者割合が相対的に高いのも特徴。「コストパフォーマンス」の良さに関連するものが多くあげられた。また、「値上げしない」という企業の宣言に対し、消費者に寄り添った企業姿勢に共感する意見も多数見られた。
ファンケル:3位 CXスコア6.37 (前年比:+1.23)
昨年の36位から3位へと飛躍的に伸び、スコア上昇ブランドのなかでも2位に。「私の立場で考えてくれる」をはじめすべての指標が大きく向上した。とくに50~60代の回答者割合が相対的に高いのが特徴。店舗でのスタッフの接客対応の顧客体験が多く、評価の理由としてあげられた。
業種別平均CXスコア
業種別のCXスコアを分析すると、「旅行・交通」がトップとなった。「製薬会社、ドラッグストア、健康食品」「美容・パーソナルケア・家庭用品」が大幅に順位を上昇させるなど、コロナ終焉後、移動が可能となり、比較的身近な顧客体験が生じる業界に変化がみられた。