撮影料のベースとなるのは「カット数」と「拘束時間」
事前準備も整い、相性の良いフォトグラファーを見つけ、撮影環境を伝達して整えたら、あとは、撮影に臨むだけ……と言いたいところではありますが、撮影費など、契約周りの手続きも欠かすことはできません。
たとえば、フォトグラファーへの撮影依頼料ひとつとっても、フォトグラファーによってさまざまです。料金や条件などは、フォトグラファー自身のホームページで明示していることもあるので、それを参考に撮影プランを選んでいくのが一般的です。
一方、明示されていない場合には、納品してほしいカット数、その撮影のために必要なフォトグラファーの拘束時間をベースに考えていきます。
だいたいのフォトグラファーは、必要なカット数の数倍以上、場合によっては数十倍、数百倍にのぼる数のシャッターを切ります。たった1カットだけでも、テスト撮影から担当者チェック、アングルや光の調整、本命撮影と、シャッターを切りながら本当に必要な1カットを探しながら撮影を行います。
たとえば、50商品を1カットずつ、計50カット撮影してほしいとします。商品のサイズが均一で、全商品をすべて同アングルで撮影できるなら、最初にカメラ位置を固定してしまえば、テンポ良く進められるかもしれませんが、商品を入れ替えて配置する時間も考慮すると、1商品あたり5分で撮影できたとしても250分、つまり4時間はかかる計算になります。
これを鑑みて、弊社が運営するfotowa bizでは、商品写真50カット納品の場合、4時間拘束で72,000円(税抜)、人物写真なら1時間拘束、30カット程度で39,000円(税抜)など6種類のプランを提示しています。
このようにカット数と拘束時間をベースにし、フォトグラファーに交渉します。
「撮影料金に含まれるもの」は契約書に明示すべし
トラブルを回避するためにも、撮影料金にどこまで含まれるのかはフォトグラファーと合意しておくことが大事です。
事前の打ち合わせやロケハンの労力に対する対価は撮影料金に含まれているのか、撮影場所までの交通費はどうするのか……。高度なレタッチ技術を要求する場合は、レタッチ代を別途用意したほうが良い場合もあります。
そのほかにも、納品期日や納品枚数、キャンセル、返金規定などの取りきめもきちんと確認をし、契約書に明記するようにしましょう。
そして、意外と抜けてしまいがちなポイントが「著作権」の扱いです。
写真を受け取る依頼人側からすれば、自分が依頼して対価を払い写真データを受け取ったのだから、写真は自分たちのものと思いがちですが、原則として、写真の著作権は撮影したフォトグラファーにあります。このため、著作権者であるフォトグラファーが、撮影した写真をどう扱おうとも、本来はフォトグラファーの自由です。被写体が人物である場合は、肖像権への配慮から、フォトグラファーも自分の著作物だからといってみだりにインターネットやSNSで公開することはないと思いますが、手がけた仕事の実績としてポートフォリオに加えたいと考えるフォトグラファーは多いでしょう。
依頼人が保有できる権利は、著作権者であるフォトグラファーが許諾した範囲の「使用権」です。
たとえば、商品を紹介する特設サイトに掲載するための写真として依頼・受理されたのなら、その写真は「特設サイトに掲載する」ことしか使用範囲は認められていないことになります。それ以外の用途に使用したい場合は、著作権者であるフォトグラファーに都度、使用の許可をもらわねばなりません。
さらに、写真の加工についても著作権者の許諾が必要です。著作者は、自分の著作物のタイトルや内容を、自分以外の誰かに勝手に変えられない権利を持っています。このため、依頼人といえどもフォトグラファーに無断で写真をトリミングしたり色調を変えることはできません。加工が必要なことがわかっているなら、あらかじめ、加工についての許諾も契約書内に含めておくと良いでしょう。
また、著作権者であるフォトグラファーはクレジット表記の有無を求める権利があります。プロダクトによっては、クレジット表記が難しい場合もあると思いますので、クレジットの取り扱いも、あらかじめ合意しておきましょう。
こうした制限なく利用したい場合や、反対にフォトグラファーの使用を制限したい場合は、写真データを著作権ごと買い取ることを提案する方法もあります。
いずれにせよ、撮影を依頼する際には、カット数(納品枚数)や拘束時間だけでなく、交通費、事前の打ち合わせ代、納品期日、レタッチの有無、支払い期日、保証、写真の利用範囲と条件、情報漏えいリスクに対する約束ごと、著作権の扱いまで、契約書に記載しておくとよいでしょう。