Z世代は購入までのプロセスが複合・複雑な回遊型に変化/SHIBUYA109 lab.×CCCMK調査

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2022/11/04 12:00

 SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.(シブヤイチマルキューラボ)」と、「Tカード」を起点とした多種多様なデータをもとにマーケティングソリューション事業を展開する「CCCMKホールディングス」は、Z世代の女性の消費行動を、定性調査およびウェブ調査にて明らかにした。

 今回は、ファッション・コスメ・飲料に関して、どのような“体験”がきっかけとなって購入に至り、リピート消費、ブランドのファン化につながるのかについて調査を実施。特にそのなかでもトライアル時の購買決定プロセスについて彼らのインサイトを深掘りし、CCCMKホールディングスの保有する実購買データにも照らし合わせながら購買行動の実態を分析している。

 なお、同調査での「飲料」にアルコール飲料は含まれていない。

ひとつずつステップを踏む直線的なモデルは古い?購買決定プロセスは“回遊型”へ

 SNSが普及した現代において、Z世代は日々大量の情報を浴びている。さらに情報量だけでなく情報の種類も以前に比べて多様化しており、既存の「マスメディア」や「リアル店舗」「OOH」のほか、「ネット(通販サイトなど含む)」「SNS」「口コミ」など、チャネルも情報の特性も多岐に渡っている。

 デジタルネイティブであるZ世代の消費行動は、そういった環境下で、SNSなど特定の情報に偏るのではなく、多様な情報を組み合わせ、商品の認知、検討、購入といった行動に移しているのが特徴的である。

 今回の調査では、それらの商品・ブランドとの接点を「体験」と定義し、Z世代の購買プロセスを紐解いた。

 Z世代の購買決定プロセスにおいて特徴的なのは、膨大な情報を日々受け取っている環境だからこそ“回遊型”になっていること。これまでの購買プロセスは順を追って直線的にステップを踏むものが多く提示されてきたが、現代においては、無意識に膨大な“体験” を同時にしているため、購入までのプロセスが複合・複雑な回遊型に変化している。

 実際にグループインタビューでも「ファッションは洋服を見るため商業施設を回っているときに、『そういえばこれ好きなインフルエンサーが着ていたブランドだ』と思い出して店舗に入る」「コスメはSNSや広告、友達の投稿などで見る機会が多いと気になる。買うかどうかはSNSや口コミアプリなどで検索して確認してから買う」「飲料はInstagramのストーリーズで友達の投稿を見かけたり、CMで見かけることもある。普段は意識していないが、店頭で『この飲料見たことある』と気付き、興味が湧く」などの意見があがった。

 “友人の投稿”“インフルエンサー・SNS上での口コミ”“店舗での実体験”など膨大で多様な体験に高速で触れながら、「認知」「興味」「検索」「共有」といったフェーズをほぼ同時に、順番もランダムに回遊しながら経験し、購入に至っていることがわかる。

カテゴリ別 Z世代の購買決定プロセス

 続いて、「ファッション」「コスメ」「飲料」に分け、各カテゴリの購買実態について調査してみると、カテゴリによって異なることがわかった。そのなかでも「トライアル」に焦点を当て、購入に至るまでの体験や、それによる気持ち・行動の変化を追った。

ファッション:SNSや自分のイメージと合うかが大切 Z世代の“世界観買い”

 ファッションに関しては、「ブランド公式ショップを訪れた(24.6%)」「Instagramを見た(22.7%)」といった体験をしているZ世代が多く、「Instagramの発見タブを見ているなかで見かける。ブランドのプロデューサーの発信でブランドを理解することが多い」「商業施設を回っているときに『これ、○○さんのブランドだ』と気づいて入店することが増えた」という意見が寄せられた。

 また、おでかけした様子を友達と写真に撮ってSNSに投稿することも増えたことから、「ファッションは、遊ぶ人や遊ぶ場所に合わせて選ぶことが多い」という声も多く、自分のSNSアカウントの世界観にファッションが合致するかどうかも洋服を購入する基準として重視されていると推察。実際にデプスインタビューでは、「店舗や洋服の世界観が自分に合っていると、そのブランドのことが気になる」などといった意見が聞かれ、ブランドの世界観を理解するために、“SNSでどのような写真が撮影されているか”をチェックしている。また、リアルな店舗にて試着や店員の話から着るイメージをより明確にし、商品購入に至っていた。「店員と話すと新しいコーディネートの提案や、自分では気づかなかったその商品やブランドの良さを知ることができる」といった声もあがった。

コスメ:口コミを中心に購入前の情報収集を念入りに “自分向け”の情報をチェック

 購入前の情報収集がもっとも熱心に行われていたのがコスメカテゴリだった。 「Instagram(35.4%)」や「動画配信サービス(26.4%)」、「口コミサイト・アプリ(19.4%)」などインターネットメディアを積極的に活用して、口コミをチェックしている様子がうかがえた。デブスインタビューでも「普段から情報収集している」という声が多数聞かれ、「コスメは発色や落ちにくさが重要。Instagramでは画像、TikTokでは動画でそのメイクの発色などを確認している。口コミアプリではパーソナルカラーや肌質などが自分と同じ人、かつ複数人の意見を確認する」など、各ツールの特徴を理解しながら必要な情報を収集しているのが特徴的。「コスメはテスターを直接試せないことも多いので、SNSを使ってほかの人の使用感を見る。ファッションにおける試着の代わりをしているイメージ。そのため、オンライン上の情報で買うものはほぼ決まっており、店頭で最終確認をする。安ければECで買うことも多い」といった意見も聞かれた。

 そのほか、「自分が一重なので、一重の人が発信している動画配信サービスを見ることが多い」「好きな顔の人がいると『○○(タレント名)コスメ』と検索して使っているコスメを探すことがある」「地雷系メイクは地雷系のまとめアカウントから調べている」など、自分の顔の特徴や理想のテイストをしっかりと把握して、情報収集していることも判明した。

飲料:店頭で目についたものから失敗しない商品を選択

 購入頻度は高いものの、「調べることは少ない」という声が多い飲料は、実際に定量調査でも「量販店を訪れた(50.0%)」体験が圧倒的多数に。デプスインタビューでも、「店頭に行って買うものを選ぶ。同じものばかり買うと面白くないので、ローテーションで『今度はコレ買おう』と店頭で決めて買う。新商品はすぐ買ってしまうこともある」「毎朝お茶を買う。お茶は気分で買いわけている」といった意見が寄せられた。

 商品を選ぶ基準として、「パッケージのデザインや文面をSNSで見たことがあると目に付きやすい」「失敗したくないので、味のイメージができて美味しそうだと確信を持てるものを買う」「健康に良いなどメリットがあるもの、友達と話のネタになりそうなものは買いたくなる」という声があった。

調査概要

1)T会員対象ウェブ調査

  • 調査期間:2022年8月19日~2022年8月25日
  • 調査機関:CCCMKホールディングス Tアンケート(T会員へのウェブ調査)
  • 調査対象:全国の15~24歳の女性
  • サンプル数:2,019s

2)SHIBUYA109 lab.による定性調査(デプスインタビュー)

  • 対象者条件:女子大学生
  • 人数:6名
  • そのほか過去定性調査をもとに考察