9割が「ECを利用」と回答 視覚障がい者、サイトからの商品情報取得に課題/メルカリ・PXDT共同調査

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2020/12/11 06:00

 メルカリの研究開発組織である「mercari R4D(アールフォーディー)」とアカデミア発技術による社会課題解決に取り組むピクシーダストテクノロジーズ(以下、PXDT)は、異なるレベルの障がいを持つユーザを含めて誰もが利用できる、Eコマースプロダクトのインクルーシブデザイン(高齢者や障がい者など多様なニーズを、製品のデザイン段階から巻き込むことで、多くの人々にとってアクセスでき、使用できる製品を設計するための手法)の研究開発に取り組んでいる。

 今回両社は、共同研究のひとつとして、視覚障がいを持つユーザの課題特定を行うため、国内の視覚障がい者およびそのサポーターを対象に、オンラインショッピングの利用に関するウェブ形式のアンケート調査を実施した。

 同調査の結果概要は、次のとおり。

オンラインショッピングの利用頻度について

 今回の調査対象では、全盲者、弱視者ともに90%近くが「たまに」「よく」「常に」オンラインショッピングを利用しており、利用の頻度が高いことがわかった。まったく利用していない比率は、全盲者群で7%、弱視群で4%。なお、同項目に示しているのは「売る」立場は含まず、「買う」立場としてのみのデータとなっている。

オンラインショッピングで購入する物品について

 全盲者群、弱視者群いずれも、オンラインショッピングにて食品・飲料(全盲者77%、弱視者70%)がもっともよく購入されていた。次に多かったのは、電子デバイス(63%、50%)・家電製品(66%、52%)。一方、衣類(30%、41%)やインテリア(24%、37%)、アクセサリー(10%、13%)などの購入比率は低いことが判明した。

オンラインショッピング利用時に用いているデバイスと遭遇している困難について

 オンラインショッピング利用時に用いるデバイスについては、全盲者・弱視者のいずれも「オンライン通販でのPC利用」(全盲者「常に使う」29%、「よく使う」32%、弱視者「常に使う」24%、「よく使う」22%)が高い結果に。

 また、タブレットの利用に関しては、全盲者において「タブレットブラウザ」(「常に使う」7%、「よく使う」6%)、「タブレットアプリ」(同6%、6%)、弱視者において、「タブレットブラウザ」(同15%、11%)「タブレットアプリ」(同9%、14%)となり、全盲者のタブレット利用が弱視者よりも少ない結果となった。

 加えてスマホの利用に関して、全盲者において「スマホブラウザ」(「常に使う」14%、「よく使う」16%)、「スマホアプリ」(同20%、25%)、弱視者において「スマホブラウザ」(同9%、22%)、「スマホアプリ」(同9%、18%)だった。

 スマートスピーカーの利用者は、一定数いるものの普及はしておらず、全盲者(「まったくない」78%)、弱視者(「まったくない」83%)ともにまったく使っていないという回答が多い結果となった。

 次に、遭遇している困難について、全盲者、弱視者ともに、「個別の画像説明」(「常にある」、「よくある」の合計:全盲者77%、弱視者65%)、「商品の質感」(同76%、76%)、「洋服のサイズや形状」(同83%、72%)、「デザイン、柄」(同60%、70%)などの把握についての困難が大きいことがあらためて浮き彫りに。これに対して、「購入方法」(同20%、24%)などについての困難は比較的少なく、デバイス操作ではなく、販売サイトで提供されている商品情報の取得に関する困難の存在がうかがえる。

物品の販売について

 同アンケートでは、フリマやオークションなども含めた「売る側」としての調査も行った。物品を販売している割合は、全盲者が25%、弱視者が42%。

 また、物品を販売している群において、物品を販売する際の手段についても調査した。

 物品を販売している全盲者群において、もっとも多かったのが「リサイクルショップなどの実店舗」(48%、全回答者のうちの12%)、次にスマートフォン(同38%、9%)、「PC」(同33%、8%)と続く。物品を販売している弱視者群においては、「スマートフォン」(50%、全回答者のうちの21%)がもっとも多く、次に「PC」(同40%、17%)、「タブレット」(同30%、13%)と続き、その次に「リサイクルショップなどの実店舗」(同25%、10%)という結果となった。

 全盲者群が物品の販売・出品を行っている比率は弱視者群よりも低いが、実店舗のみを比べると、販売を行っていない回答者も含めた全体に対する利用比率は、全盲者・弱視者群ともに10%程度と同等。これらのデータは、対面で販売できる実店舗ならば全盲者にも利用が可能であるものの、IT機器を利用しての販売・出品には困難がともなう、あるいは不安があるため利用に慎重になっているという可能性を示している。

 次に物品を販売していない群において、全盲者、弱視者ともに「手続きや操作が難しい、もしくは面倒だ」と回答した比率が8割程度と突出して高い結果だった。これに対して、「特に売る物がない」(34%、39%)あるいは「あえて収入を得たいとは思わない」(17%、7%)と回答した比率は非常に低く、全盲者、弱視者ともに、もし手続きや操作が容易に行えるのであれば物品の販売や出品を行いたいと考えていることが明確になった。

調査概要
  • 調査時期:2020年7月20日〜9月22日
  • 調査方法:ウェブアンケート調査(音声読み上げ対応)
  • 調査対象:全国の15~76歳の男女133人