サイバーエージェントら、デジタル社会における人々の意識を探る「全体分析編」の調査結果を発表

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2022/10/20 12:00

 サイバーエージェントの官公庁・自治体への DX 推進支援を行う「デジタル・ガバメント推進室」は、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(「GLOCOM」)のレジリエントシティ研究ラボおよびセールスフォース・ジャパンとともに、社会のデジタル化に対する人々の意識について調査し、その調査結果を踏まえてさまざまな統計分析および機械学習を用いた共同調査研究を実施した。

 同調査発表の第1弾では、人々の社会のデジタル化に対する姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4分類に分け調査研究を行う「意識別クラスター分析編」について発表。今回の第2弾では「全体分析編」として、社会のデジタル化への意識について単純集計に基づく調査結果を発表する。

 同調査研究は、デジタル社会に対する人々の考え方やイメージ、またどのような生活の価値観がデジタル技術でサポートされてほしいかというニーズの把握を目的として、インターネット調査による結果をもとに、さまざまな統計分析および機械学習を用いて回答傾向の分析を行った。意識別クラスターとして、デジタル化の進展に対する人々の姿勢を「デジタル積極層」「中立層」「置き去り層」「反デジタル層」の4つの層(クラスター)に分類し、デジタル技術に対して各層がどのようなニーズや暮らしの価値観を持っているのかについて深掘りした。

 なお、同調査研究は、国際大学GLOCOMの30周年記念事業の一環として実施し、サイバーエージェントは利用者にとって使いやすい行政サービスを追求する観点から、セールスフォース・ジャパンは行政が住民1人ひとりのニーズに合ったサービスを再構築するのを支援する観点から、3者共同の調査実施に至った。

「いつでもどこでも自分が欲しい情報やサービスにアクセスできること」がデジタル化のメリット

 社会のデジタル化の有意義な点として過半数の人が挙げたのは、「いつでもどこでも自分が欲しい情報やサービスにアクセスできる」(66.4%)、「知らなかった知識や世界に触れられる」(56.9%)、「さまざまなデータがつながることで利便性が高まる」(53.4%)、「直接人と会わなくても用事を済ませられる」(50.3%)、という項目だった。

 一方で、ほかの項目に比べて少なかった項目は、「生活費の節約」や「精神的な幸福度が高まる」「知らなかった人とつながりやすくなる」だった。

 「幸福度=生活への満足度」はデジタル社会への意識形成に影響を与える項目であることがわかっており(参照:第1弾の調査リリース「意識別クラスター分析編」)、今後注視すべき観点だと考えられる。2021年に発表した「デジタル・ガバメントに関するニーズ調査」(2020年12月から2021年1月にかけて国際大学グローバル・コミュニケーション・センターおよび株式会社サイバーエージェントが共同で実施したデジタル・ガバメントに関する住民ニーズについてのアンケート調査)では、住民の生活の価値観として、「近隣住民とのつながりやコミュニティづくり」「いいまちに住んでいる満足感」「利便性のある行政サービス」との回答項目が、自分の暮らしの状況に応じたパーソナライズサービス(オンラインサービス)の利用意向にプラスの影響を与えていることがわかった。

情報を盗まれるのではないかという不安と問題発生時におけるサポート体制への不安がデジタル化の大きな懸念点

 社会のデジタル化の懸念点について、過半数の人が挙げたのは「自分の情報を盗まれるのではないかという不安」。次いで「何か問題が発生した時のサポート体制に不安」だった。

 第1弾の調査リリースにおける「意識別クラスター分析編」で、「置き去り層=デジタル化の進展にポジティブな意見を持っているがついていけていないと答えた人々」が、行政のオンラインサービスに対する改善点として「わからないことがあった場合のサポート体制」を重視していることも判明している。

民間オンラインサービスと行政オンラインサービスの利用目的は異なる

 民間オンラインサービスを利用する理由および、行政オンラインサービスを利用する際に重視する目的をたずねた結果、民間・行政のオンラインサービスともに重視されている項目は、「利便性」や「使いやすさ」だった。

 民間と行政のオンラインサービスの利用理由や重視する目的において、回答に顕著な違いが見られたのは、「楽しいから」「ほかの人と交流したいから」「困ったときに丁寧にサポートしてもらえるから」「個人情報保護など安全性に信頼がおけるから」といった項目だった(民間と行政のポイントが10%以上開いたもの)。

 民間オンラインサービスの利用理由で、「楽しさ」や「社会性(ほかの人との交流)」が重視されているのに対し、行政オンラインサービスではこれらを重視する回答は少なかった。

 一方、行政オンラインサービスで重視する項目で回答の多かった「サポート体制」「個人情報保護」は、民間オンラインサービスの利用理由としては5%前後の回答となった。

「防災・減災」「犯罪対策」「医療・介護」など、“理想の暮らし”の回答率が高い一方で“現実の暮らし”は満足度が低い結果に

 生活の価値観を探るため、同じ項目に対して、現在実現できていると思う暮らしと理想の暮らしについてたずねた。現在実現できていると思う暮らし、理想の暮らしともに「快適な住環境」の回答がもっとも多かった。

 現実と理想の暮らしのポイント差が10%以上開いたのは、「犯罪から守られた安心できる毎日」「家族みんなが幸せな暮らし」「医療・介護サービスへのアクセスがしっかりしている暮らし」「防災・減災対応が十分になされている暮らし」「経済的支援による安心感のある暮らし」「信頼できる自治体に住んでいる安心感のある暮らし」「分かりやすく使い勝手の良い行政サービスのある暮らし」。

 ここに挙げられたような生活の価値観をいかにデジタル活用でサポートできるかが、生活の満足感を上げることにつながると推察される。

行政オンラインサービスに求める改善点は「オンライン完結」と「情報セキュリティ」

 自分が住んでいる自治体の行政サービスをオンライン上で使いたいかどうかたずねた質問では、約6割が「とても使いたい」「どちらかといえば使いたい」と回答。

 オンラインサービスの利用意向に加えて今後充実するべき点あるいは改善点についてもたずねたところ、「オンラインで(手続きが)完結する」、「情報セキュリティ」のふたつが各々約過半数の回答となり、次いで「わからないことがあった場合のサポート体制」。

 オンラインサービスに限らず、国や自治体が提供するサービスの満足度をたずねたところ、「とても満足している」「満足している」が合わせて23%、「普通」62%、「満足していない」「まったく満足していない」が合わせて15%との結果となった 。

 「満足していない」「まったく満足していない」と回答した人を対象に、その理由について自由回答でたずねたところ、次のような結果となった。

 もっとも多くの人が回答した「情報」は、「情報が遅い」「情報が多くどこを見ればよいのかわからない、たどりつけない」「情報を積極的に発信してほしい」「情報共有が不十分」「情報が少ない」「情報を見てもよく理解できない」「情報が縦割り」「情報を探しに行かないとどんなサービスがあるのかがわからない」といった文脈で言及されていた。

 「対応」「手続き」「窓口」のキーワードについては、手続きがオンラインで完結しないことに起因する意見が多く寄せられた。加えて、手続きが難しい、処理状況がわからない、時間がかかるといった意見があった。デジタル化にまったく対応していない、あるいはデジタル上で完結しないという、中途半端なオンラインサービスに満足していない層が一定数いることが判明した。

調査概要
  • 調査主体:サイバーエージェント、セールスフォース・ジャパン、国際大学GLOCOM
  • 調査委託先:マクロミル
  • 調査時期:2022年6月24日~6月27日
  • 調査方法:インターネットリサーチ
  • 調査対象:全国15歳~89歳 4,128人(マクロミルのパネル30,875人を対象として、全国15歳~89歳の4,128人を人口構成比に基づく割当法により抽出)