アドビ、クリエイティブな生成AIモデル「Adobe Firefly」発表 将来的には製品のワークフローに直接搭載

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2023/03/22 00:10

 アドビは、画像生成機能およびテキストエフェクトを中心とした、クリエイティブなジェネレーティブAIモデル「Adobe Firefly」を発表した。将来的にはAdobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloud、Adobe Expressのワークフローに直接搭載され、コンテンツの作成・修正作業にさらなる精度、パワー、スピード、手軽さをもたらすことになる。Fireflyは、アドビのクラウドアプリケーションを横断する、新しいAdobe SenseiのジェネレーティブAIサービスシリーズの一部となる予定。

 アドビは10年以上にわたるAIイノベーションの歴史を持ち、Adobe Senseiを通じて何百ものインテリジェントな機能を、何億人もの人々が信頼しているアプリケーションに提供している。Adobe Photoshopの「ニューラルフィルター」、Adobe After Effectsの「コンテンツに応じた塗りつぶし」、Adobe Experience Platformの「アトリビューションAI」、Adobe Acrobatの「Liquid Mode」などの機能を活用し、パワー、精度、スピード、手軽さをもって、コンテンツの作成、編集、測定、最適化、レビューを行っている。これらのイノベーションは、説明責任、社会的責任、透明性というアドビのAI倫理原則に沿って開発、展開されている。

 アドビのデジタルメディア事業部門代表のデイビッド ワドワーニ(David Wadhwani)氏は次のように述べている。

「ジェネレーティブAIは、AIによるクリエイティビティと生産性の強化を次のステージに進化させ、クリエイターとコンピューター間の会話をより自然で、直感的で、パワフルなものへと変容させます。アドビはFireflyにより、ジェネレーティブAIを搭載した『クリエイティブのみなもと』をユーザーのワークフローに直接導入し、ハイエンドクリエイターから、引き続き盛り上がりを見せているクリエイターエコノミーまで、すべてのクリエイターの生産性とクリエイターの表現力を引き出します」

クリエイターに新たなスーパーパワーをもたらすAdobe Firefly

 アドビは、すべてのクリエイターが自分の想像力そのままのスピードで創作活動ができるようにFireflyを設計している。Fireflyを使用することで、コンテンツを作るすべての人が経験や才能に関係なく、自身の言葉を使い、画像や音声、ベクター、ビデオ、3Dから、ブラシ、カラーグラデーション、動画変換などまで思い描いた通りのコンテンツを、これまで以上に簡単かつスピーディに生成できるようになる。ブランディングを保持しつつ、無限のバリエーションのコンテンツを何度でも、迅速かつ手軽に作成可能。また、アドビのツールやサービスにFirelyを直接搭載することで、ユーザーは既存のワークフローの中で、気軽にジェネレーティブAIを活用できるようになる。

 今回の発表にともない、アドビはAdobe Fireflyのプライベートベータ版を公開。これにより、経験やスキルを問わず、すべてのクリエイターが高品質な画像生成や卓越したテキストエフェクトを体験できる。また、アドビはテクノロジーの力を最大限に発揮するには、人間の素晴らしい想像力が必要不可欠であると考えており、プライベートベータ版のプロセスを通じてクリエイティブコミュニティやユーザーと深く関わりながら、この革新的な技術を進化させ、アプリケーションへの統合を予定している。

 今後、アプリケーションに順次統合され、はじめにAdobe Express、Adobe Experience Manager、Adobe Photoshop、Adobe IllustoratorでFireflyが利用できるよう計画を進めている。

商業用としての安全性を考慮した高画質な画像​

 将来的にFireflyは複数のモデルで構成され、さまざまなスキルセットや技術的バックグラウンドを持つユーザーの幅広いユースケースをカバーできるように調整される。

 最初に搭載されるモデルは、Adobe Stockの画像や一般に公開されているライセンスコンテンツや著作権が失効しているパブリックドメインコンテンツを対象としており、画像やテキストエフェクトを中心に、商業利用として安全性を考慮したコンテンツを生成するように設計されている。

 Adobe Stockで提供されている素材は、高品質な、何億枚ものプロ仕様のライセンス取得済み画像のため、FireflyはほかのクリエイターやブランドのIP(知的財産)を侵害するようなコンテンツの生成は行わない。今後、アドビやそのほかのソースが提供するさまざまなアセットや技術、トレーニングデータを活用した複数のモデルの追加を予定しているが、アドビは引き続き、それらの実装においても潜在的なバイアスに優先的に対処する。

ユーザー中心のアプローチ

 アドビは、クリエイターが自身のスキルや創造性から恩恵を受けられるようにジェネレーティブAIを設計している。

クリエイターの制作効率を向上

コンテンツは世界経済の原動力であり、クリエイティビティとデザインは今日、かつてないほど高く評価されている。最近のアドビの調査によると、過去1年間でコンテンツ需要が2倍以上になったと回答したブランドが88%にのぼり、3分の2の企業が今後2年間でその需要が5倍になると予想している。アドビは、こうした需要の高まりがクリエイターにもたらす負荷を軽減するために、ジェネレーティブAIを活用した迅速でスマート、かつ便利に作業ができるソリューションを提供。それには、ユーザーが所持するコラテラル(画像やマーケティング資料など)でFireflyをトレーニングし、固有のスタイルやブランド言語に基づいてコンテンツを生成できるような機能も含まれる。

クリエイターへの対価

アドビは、Adobe StockやBehanceで行ってきたような、プロフェッショナルクリエイターが自身の作品を収益化できるような機会や仕組みづくりを目指し、ジェネレーティブAIサービスの構築を計画している。Adobe Stockでは、AIのトレーニングにクリエイター(コントリビューター)がストック素材を提供した場合、そのデータセットをもとにFireflyが生成した画像から得られる収益を、クリエイターが享受できるような方法を検討している。詳細については、Fireflyのベータ版が終了した際に、改めて伝える予定。

オープンスタンダードの提言

アドビは、デジタルコンテンツの帰属表明において信頼性のあるグローバルスタンダードを構築するために、コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)を設立した。現在、世界中に900以上のメンバーが加盟している。アドビは、非営利団体Coalition for Content Provenance and Authenticity(C2PA)を通じ、開発が活発なCAIのオープンソースツールを無償提供し、オープンな業界標準を推進している。

これらのゴールには、クリエイター所有のコンテンツがモデルのトレーニングに使用されないよう要求するために、画像のコンテンツクレデンシャルに「Do Not Train」タグを付ける機能も含まれている。コンテンツの使用、公開、保存といったあらゆる局面において、このタグはコンテンツに関連づけられたままとなり、またAIが生成したコンテンツにも、「AI生成」を示すタグが付けられる。

Adobe Fireflyのエコシステム

アドビは、顧客がカスタムワークフローやマーケティングオートメーションに統合できるように、 Fireflyをさまざまなプラットフォーム上のAPI経由で利用できるようにする予定。