ヤマハ、音楽制作実証実験に「VOCALOID β-STUDIO」のAIを活用した試作プラグイン「VX-β」を提供

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2024/03/09 10:00

 ヤマハは、プロ音楽クリエイターを中心に構成されるAI生成ツール研究会「ARS」(AI Resonate Society)がおこなう音楽制作実証実験に協力し、同社の「VOCALOID β-STUDIO」が開発するAIを活用した歌声合成の試作プラグイン「VX-β(ブイエックス ベータ)」を提供した。今回提供した「VX-β」には、同実証実験のために特別に、プロの音楽制作現場で使えることを目指して新開発した専用のボイスバンクを搭載している。

 「VOCALOID β-STUDIO」は、合成音声の常識を打ち破ることを目的とする研究スタジオとして誕生。2023年8月には、音楽制作ソフト(Digital Audio Workstation : DAW)上で歌声合成を可能にするAIを活用した試作プラグイン「VX-β」を一般公開(抽選制)し、従来の音楽制作の枠にとらわれない音楽作品の創出のありかたを模索している。

 今回のARSに参加するプロ作曲家による実証実験は、音楽業界で活躍するクリエイターが「VX-β」を用いて楽曲を制作することで、AI歌唱がもたらす楽曲や制作プロセスの新たな価値を検証するもの。また、制作された楽曲のパラデータやMIDIデータ、セッションデータも公開することで、これらデータを用いた二次創作の可能性を探求するとともに、新たなビジネスの展望についても考察を行う。

 ヤマハは同実証実験に賛同し、ストレートな声質が魅力のシンガーソングライターElleyさんの歌声をベースにした、プロ音楽クリエイター向けのVX-β専用ボイスバンク「L(エル)」を新たに開発・提供した。「L」は特にポップスのジャンルに強みを持ち、メインボーカルからコーラスまで幅広くこなせる”プロの音楽制作現場で使える"ことを目指して開発された。同社は音楽制作を生業とするプロの音楽家に「VX-β」を提供することで、いわゆるボーカロイド楽曲といった特定のジャンルに限らない幅広い音楽ジャンルで、従来の歌声合成の常識を覆すような楽曲が生み出されることを期待している。なお、「L」の一般配布予定はない。

 同実証実験には現在、浅田祐介氏、田辺恵二氏、中山翔吾氏をはじめとする音楽クリエイター約40名が参加しており、その楽曲は、ARS公式ウェブサイトなどで公開されている。