アドビは、Adobe AcrobatにおけるAIの大幅な革新を発表。Acrobatのユーザーは、テキストプロンプトを使用して、現在流通しているPDF内にAdobe Fireflyで画像を生成したり、編集できるようになる。Acrobatはアプリ内で画像生成機能を提供する最初のPDFソリューション。また、Acrobat ReaderとAcrobatのワークフローに深く統合された対話型エンジンである「Acrobat AI Assistant」の新機能により、ユーザーはPDFドキュメントやその他の形式(Microsoft Word、Microsoft PowerPoint、テキストファイルなど)のファイルを複数選択し、それら全体を横断して情報を取得したり、質問をしたり、インサイトを得たりできるようになるほか、コンテンツの作成も可能になる。さらに、AI Assistantの議事録作成機能の強化も発表した。日本語版の提供開始時期は未定。
アドビのDocument Cloudのシニアバイスプレジデントであるアビギャン モーディ(Abhigyan Modi)氏は、次のように述べている。
「アドビは編集と共有から保護と書き出しに至るまで、一貫してPDFを革新し続け、静的なページからコラボレーティブなワークスペースへと変貌させてきました。生成AIによって、私たちは新たな文書タイプにわたる画像生成とインサイトでこのカテゴリーを再び前進させます。シンプルなプロンプトで容易に素早く、情報を説得力のあるコンテンツに変換するための深い分析と能力をユーザーに提供します」
Adobe FireflyがPDFに初めて対応
Acrobatの新機能により、ユーザーはアプリを起動したまま、ドキュメント内の画像に手を加えたり、生成AIを使用して魅力的な新規画像を生成したりできるようになる。おもな機能は次のとおり。
- Acrobatの「画像を編集」には、Fireflyを活用した「生成塗りつぶし」、「背景の削除」、「切り抜き」といった使いやすいツールが用意されており、ドキュメントに含まれる画像コンテンツの追加、削除、再構成を簡単に行うことが可能。不要なオブジェクトの消去から背景の削除、新しい画像の追加まで、ユーザーはPDF内のビジュアルを完全に、簡単にコントロールできる。
- Acrobatの「画像を生成」機能を使用すれば、Adobe Firefly Image 3 Modelによる、魅力的な新しい画像を簡単にPDFに追加することができる。画像サイズやスタイルをすばやく調整して、ドキュメントの任意の場所に追加することが可能。このデザインツールを使用すれば、画像を用いてプロフェッショナルかつクリエイティブに仕上げることができる。
「画像を編集」と「画像を生成」は、Acrobatで誰もが簡単に、魅力的なビジュアルを作成できる機能で、クリエイティブな専門知識は必要ない。営業チームは、「画像を生成」機能を使ってテキストばかりのビジネスプランに業界の状況を反映した画像を追加し、ビジュアル面でのアピール力を高め、読みやすくすることができる。起業家は、投資家向けのプレゼンテーション資料の画像を「画像を生成」と「画像を編集」機能でカスタマイズし、ストーリーに合わせて資料をアップデートすることが可能。中小企業経営者は、「画像を生成」と「画像を編集」機能を使って、販促資料の背景をさまざまな季節や文化的なイベントに合わせて瞬時に変更し、簡単に更新することができる。
Acrobat AI Assistantで生産性と価値を向上
調査、試験勉強、データ分析、あるいは議事録などの資料の読み込みを行う際、必要な情報がすべてひとつのファイル形式に統一されていたり、ひとつのドキュメントにまとめられていたりすることは稀。この障害を取り除くのがAcrobat AI Assistantの新機能で、誰もが迅速かつ簡単に、ドキュメント内の情報からインサイトを得たり、コンテンツを整えて共有したりできるようになる。新機能には次の内容が含まれる。
複数のドキュメントを横断してインサイトを取得
一連のドキュメントを選択し、それらに共通するテーマやトレンドを発見し、異なるソースからの情報を集約することで、迅速な考察から徹底的な調査までが可能。これにより、インパクトのあるコンテンツを生成し、フォーマットに落とし込むことができる。たとえば、マーケターがPDF、Microsoft Word、Microsoft PowerPointのドキュメント群の情報から、Z世代の顧客にリーチする方法を調査しようとしているとする。これらのドキュメントすべてをAcrobat AI Assistantにドラッグ&ドロップするだけですぐに、「これらのドキュメントで提示されている主なテーマの概要を説明してください」などの推奨される質問が生成される。マーケター自ら「Z世代のSNS利用習慣はどのようなものですか?」といった質問をすることもできる。AI Assistantはドキュメント群の情報に基づいて回答を生成し、インテリジェントな引用が含まれるため、マーケターは簡単にその回答の情報ソースを検証できるほか、素早いナビゲーションで、より詳細な分析を行うことが可能。
さらに、マーケターはそれらのインサイトを特定の目的に合ったコンテンツにフォーマットすることもできる。たとえば、「これらのドキュメントのキーポイントを電子メールに変換してください」と指示して、生成された文章を幅広いチームと簡単に共有し、マーケティングキャンペーンに役立てることも可能。
議事録作成機能
この機能は会議の主催者、参加者、欠席者のために、議事録をもとに主要トピック、重要ポイント、アクションアイテムを含む、会議の内容がすばやく把握できる生成サマリーを自動的に作成。また、音声コマンドによるモバイルアクセス機能により、音声を使ってどこからでもAI Assistantと対話することが可能。
AI活用における信頼性の構築
アドビは、顧客データを使って生成AIモデルをトレーニングすることはない。Adobe FireflyやAcrobat AI Assistantを含むアドビのAI機能は、説明責任、責任、透明性というアドビのAI倫理に沿って開発されている。Adobe Fireflyは、適切に管理されたAdobe Stock画像や著作権が失効したパブリックドメイン画像を含む権利取得済みのコンテンツでトレーニングされており、安全に商用利用できるよう設計されている。クリエイティブプロセスにおける生成AIの使用に関する透明性を示すため、Adobe AcrobatのAdobe Firefly搭載機能で作成または編集されたデジタルコンテンツに、自動的にコンテンツクレデンシャルを付与し、ユーザーとの信頼関係を構築するデジタル成分表示ラベルが提供される。アドビは、トレーニング、テスト、多様なAI倫理審査委員会が監督するレビュープロセスなど、設計から開発、展開までの標準化されたプロセスを構築し、ユーザーが安心して機能を使用できるようにしている。それには次の内容が含まれる。
データセキュリティプロトコル
Acrobat ReaderおよびAcrobatのAI Assistant機能は、エンジニアリングプロセス、事前処理および事後処理におけるテスト評価方法を含む、データセキュリティプロトコルによって管理されている。
信頼性の向上
アドビは、LLMを受賞歴のあるLiquid Modeと同じ人工知能と機械学習モデルで補完し、ドキュメントの構造と内容を正確に理解することで、Acrobat AI Assistantのアウトプットの品質と信頼性を高めている。
LLMのガードレール
サードパーティのLLMを使用する際、アドビは中立的なアプローチをとり、さまざまな顧客のユースケースに対応する最高峰のテクノロジーを選択している。さらにアドビは、サードパーティのLLMに対して、アドビ独自の基準と一致する機密保持およびセキュリティプロトコルの使用することを契約上義務付けており、サードパーティのLLMがアドビ の顧客データを手動で確認したり、トレーニングすることを禁止している。
AIデータガバナンスの合理化
Acrobat AI Assistantは、企業の情報管理を維持し、幅広い企業情報からではなく、ユーザーが提供した文書にもとづいたインサイトを提供する。また、ほかの形式のデータが分析され、意図しない目的で使用されることを防ぐ。
情報の引用元を表示
Acrobat AI Assistantは生成された回答に属性を含めることで、従業員が情報の出典を簡単に確認できるようにする。また、アプリ内のメッセージで、AI Assistantが提供する回答の出典を再確認するよう従業員に知らせることができる。
責任の共有
Acrobat ReaderとAcrobatのAI Assistantによるアウトプットは、主にユーザー自身が提供した文書にもとづいている。ユーザーがAcrobat AI Assistantを使用する場合、責任を持って機能を使用することに同意するものとなる。