サイバーエージェントはAI事業本部において、AIを活用し漫画などの海外展開に向けたローカライズを支援する専門組織「AIローカライズセンター」を新設した。
背景
世界から注目を集める漫画やアニメをはじめとした日本コンテンツの海外展開においては、翻訳のプロジェクトチームによる徹底的なキャラクターや文脈の理解、原作の一貫性を担保するためのルール制定、写植作業者(レタラー)による文字入れや作画修正、ネイティブによる翻訳チェックといった膨大な翻訳工程が必要であるとともに、原作者の意図や原作の世界観を損なわずに、展開先であるその国の文化や特性も考慮してローカライズしていくことが重要。
さらに、各国の文章読み順への最適化や縦読みフォーマットへの変更および、最適なオンラインプラットフォームでの販売方法の検討など、販売チャネルの多様化に伴う関係各所との権利調整やプロモーション企画など、海外特有のデジタルマーケティング戦略の策定と実行が必要となってくる。
同社の取り組み
同社は「広告効果の最大化」を戦略として掲げており、2016年にAI研究開発組織「AI Lab」を設立するなどAI研究と社会実装に必要な開発力を高め、強みとするデジタルマーケティング力を磨いてきた。また、大学との産学連携を積極的に推進し、AIで広告効果を最大化する「極予測シリーズ」を提供するなど、AIを活用することでクリエイターがより広告効果の高いクリエイティブ制作を行えるような業務支援にも向き合ってきた。
また、2023年11月には広告クリエイティブ表現に特化した独自日本語OCR(光学文字認識)モデルを開発するなど、複雑化するクリエイティブ内の文字フォントやレイアウトに対し高精度な文字認識を実現。さらに近年は日本語LLMの開発にも取り組み、2023年5月にはCyberAgentLM・2023年11月にはそのバージョン2を一般公開するなど自然言語処理技術発展への貢献に努めている。
概要
このような背景のもと、AIを活用し漫画などの海外展開に向けたローカライズを支援する専門組織「AIローカライズセンター」を設立した。これまで当社が取り組んできたインターネット広告の知見を活かし、漫画やアニメ、ゲームなどの海外展開における国や地域の文化や特性を考慮したデジタルマーケティングの戦略策定および実行支援を行うとともに、多言語対応や文脈理解のAI研究を強化し各配信国や地域に合わせたローカライズ支援に取り組んでいく。
AI研究では同社がこれまで取り組んできた高度な自然言語処理技術を応用し、擬音語や擬態語などのオノマトぺといった日本語作品ならではの特殊な表現や意味・文脈理解の研究をはじめ、作品の配信対象となる国や地域の文化・慣習、宗教や法律、表現規制を考慮した最適な表現方法と原作の一貫性を保つためのルール制定作業や翻訳業務などへのAI活用を視野に入れている。原作者はもちろん作品に携わる翻訳者や写植者、編集者など全てのクリエイターの作業をサポートするAI技術の研究に尽力していく。
研究強化分野
物体検出/文字認識/自然言語処理/コンピュータ・ビジョン/画像処理/機械学習/画像・映像生成/音声生成など