博報堂DYホールディングら、AIでコンセプト開発を支援する「STRATEGY BLOOM CONCEPT」導入

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2024/11/13 09:00

 博報堂DYホールディングスと博報堂テクノロジーズは、統合マーケティングプラットフォーム「CREATIVITY ENGINE BLOOM(クリエイティビティ エンジン ブルーム)」において、AIを活用してマーケティングにおけるコンセプト開発を支援する「STRATEGY BLOOM CONCEPT」を開発し、社内での利用を開始した。博報堂DYグループの著名クリエイターのコンセプト開発手法を効率的に実践できるプロダクトで、AIが“壁打ち”形式でアイデアの拡散や整理を支援し、より創造的なコンセプトの提案を実現する。

背景/課題

 市場の飽和や人口減少、消費活動の変化を背景として、広範囲のビジネス領域で環境が急速に変化している。その結果、多くの企業で新たな成長領域への投資シフトが進行し、提案能力の多角化が求められており、幅広い領域での迅速なコンセプト開発が重要になってきている。

 他方で、広告会社において著名なクリエイターが持つ企画力やコミュニケーションを設計するノウハウは、専門のスタッフがともに業務を経験するなかで継承されることが多いため暗黙知にとどまり、社内において実践的なノウハウの共有に課題がある。

 そうしたなか、マーケティングコミュニケーション全般で生成AIを活用するニーズが高まっており、技術的な観点でも、プラニングプロセスの一部を生成AIにインプットすることで業務を型化し、効率的なコンセプト開発業務を行うことが可能になってきている。

プロダクト概要

 STRATEGY BLOOM CONCEPTは、TBWA HAKUHODO 細田高広Chief Creative Officer(CCO)が提唱する「インサイト型ストーリー」という、数々の経験によって得られたコンセプト開発手法を学習したAIの支援を得ながらコンセプトの開発を行うことができる。ユーザーがクライアント企業の課題を設定すると、「ターゲット」「インサイト」「競合」「ベネフィット」についてAIが複数の候補を提案してくれる。ユーザー自身の感覚とも照らし合わせながらAIが提案した候補を修正していくことで、AIと人が共創してコンセプトを導き出すことができる。

 コンセプト開発を型に沿ってAIを活用しながら効率的に行うことで、プラニングの初心者や専門スタッフではない社員であってもコンセプト開発業務を行うことが可能。

※記載の内容は実在する商品やサービスとは一切関係ありません。画像は生成AIを利用し作成。

1.クライアント課題の入力

クライアント企業の商材の特徴や課題、コンセプト開発に関わる方針など詳細な情報をユーザー自身が記入する。(※入力した情報は博報堂DYグループ内のセキュアな環境で保管される)

2.ターゲットの設定

クライアント課題に沿った複数のターゲット候補をAIが生成します。ユーザーは候補を参考に、想定するターゲットを設定する。

3.インサイトの発見

インサイト発見に有効な「AだけどB」という相反するAとBを設定する構文に沿って、AIが複数の候補と説明文を生成する。AIには博報堂DYグループが保有する生活者調査データを読み込ませているため、対象を多角的に捉えた提案が可能。

4.競合ブランド/サービスの整理

市場の空白を見つけるため、同じカテゴリーの競合、顧客の同じ不満に対応する競合、顧客の同じ時間を奪いあう競合を整理する。AIはそれぞれの競合について弱点となりうるポイントとあわせて候補を生成するため、優位性を検討する材料を得ることができる。

5.ベネフィットの検討

これまでに、クライアント企業の課題感、ターゲットのインサイト、競合の弱点まで整理できている。AIはそれらをふまえて、ターゲットに特に強く訴求することができるベネフィットの候補を複数生成する。

6.コンセプトメイク

ここまでに決定した内容をふまえ、ターゲットに提供する新たな価値を示す言葉としてコンセプトを提案する。コンセプトは価値を端的に伝えられることが重要なため、1行のキーフレーズとして完成することを目指す。この際、細田CCOの実践知から生まれた「記号化」や「矛盾法」など10とおりの構文に沿ったキーフレーズ化を行う機能を搭載しており、コンセプトを磨き上げることができる。

また、最後には一連の決定内容をまとめたコンセプトシートの自動生成が可能で、提案業務を支援することができる。

 人間中心のAI活用(Human Centered AI) を促進するため、画面左側にAIの提案・右側にユーザーの記入領域を設ける独自のユーザーインターフェース(特許出願中)を搭載しており、ユーザーはいわゆる壁打ち相手のようにAIとやりとりする。

提供価値

 提示される手順に沿って情報を入力することで、コンセプトを作り出すことができるため、コンセプト開発業務における初期のアイデア創出段階の効率化に貢献する。また、博報堂DYグループのマーケティング知見を搭載したAIが壁打ち役になることで、企画の着想や課題を解決する新たな問いに短時間で気づくことができ、より質の高いコミュニケーションコンセプトや商品コンセプトを作り出すことが期待できる。社内での利用を促進し、博報堂DYグループのマーケティング活動の効率化・高度化につなげる。

今後の展望

 STRATEGY BLOOM CONCEPTは今後、博報堂DYグループのほかの有名クリエイターやプラナーの実践知も搭載し、得意先ニーズやプラナーの個性にマッチするAIを選択できるようにすることで、より質の高いコンセプト開発業務が可能な環境を提供する。また博報堂DYグループが保有する生活者DATA PLATFORMに蓄積された大規模アンケートデータや社会や生活者の潜在的な欲求を導く多種多様なデータと連携することでAIの分析・提案能力を向上させ、コンセプト開発業務のさらなる高度化を目指す。

 また、別途開発を推進しているCREATIVE BLOOMやMEDIA BLOOMとシームレスに連携していくことで、マーケティング戦略、メディア戦略、クリエイティブ戦略を統合し、統合マーケティング業務の効率化と高度化に貢献していく。