視聴行動分析サービスを提供するニールセン デジタルは、スマートフォン視聴率情報「ニールセン モバイル ネットビュー(Nielsen Mobile NetView)」のデータをもとに、2019年の12月の日本における無料・有料動画アプリの利用状況を発表。
2019年は「TVer」などの見逃し配信の利用拡大や有料動画サービスでは「Disney DELUXE」がサービス開始するなど、オンライン動画市場全体で活発な動きが見られた。無料動画、有料動画ともにスマートフォンからの視聴が大半を占めることから、今回はスマートフォンアプリの利用状況に着目し、動画視聴動向を分析した。
2019年12月におけるスマホアプリからの無料動画と有料動画の利用者数(上位5アプリを集計)をみると、無料動画は昨年同月から6%増加し4,886万人、有料動画は40%増加し1,170万人となっていた。無料動画の増加率が一桁に留まったのに対し、有料動画は増加率が加速し、ついに1,000万人を超える規模まで成長したことがわかる。(図表1)
ここ数年、有料動画サービス各社がオリジナルコンテンツに力を入れる中で、日本独自のコンテンツも充実し、スマホでの視聴環境の整備もされてきた。これらの要素が影響して、有料動画の視聴はこれほどの規模まで成長したということが考えられる。
各動画利用者数を男女別にみると、無料動画アプリでは男性が2,358万人、女性が2,528万人、有料動画アプリでは男性が559万人、女性が612万人となり、ともに女性の利用者が多い結果となっていた。
とくに有料動画アプリでは、昨年までは男性の利用者数が女性と同程度だったのに対し、2019年は女性利用者が急速に増加し、男性を上回る結果となった。(図表2)
グラフにはないが、女性の利用者数増加を牽引しているのは「Amazon Prime Video」で、昨年同月から59%増加。ここ数年、Amazon Prime Videoは男性の利用者数が多いことが特徴として挙げられてきたが、年々女性との利用者数の差は縮まっている。
次に、各動画アプリの利用回数と利用時間を男女別にみてみたところ、無料動画アプリは利用者数が多いだけでなく、利用回数も有料動画アプリより多く、男性では月間平均44回、女性では35回と1日1回以上利用されていた。また、無料動画アプリの利用者数では女性が多かったのに対し、利用回数と時間は男性の方が多く、エンゲージメントが高いことがわかった。一方で、有料動画アプリでは女性のエンゲージメントが男性よりも高く、月間平均17回、合計約3時間利用されていた(図表3)。
最後に、有料動画アプリ上位5サービスの利用時間シェアを男女別に比較すると、男女ともにAmazon Prime Videoがもっとも多く、約60%を占めていた。2位以降のサービスでは結果が異なり、男性ではU-NEXT、女性ではNetflixが2番目に多く、それぞれ16%、15%の利用時間を占めていた。また、女性ではdTVの利用時間シェアも高く、全体の10%を占めていた(図表4)。
同社のアナリストのコヴァリョヴァ・ソフィヤ氏は、次のように述べている。
「各動画アプリは、昨年に続き大きく利用者数を伸ばしていました。特に、有料動画アプリでは昨年を上回る成長率で利用者数を拡大し、ついに1,000万人規模まで成長しました。有料動画サービスは男性を中心に利用されている傾向が強かったものの、ここ数年で女性の割合が半数を超え、市場全体でサービスが浸透してきていることがわかります。
そのような中で、男女で比較すると、これらのサービスの利用傾向には違いがあることがわかりました。男性では無料動画アプリの利用頻度/時間が多く、女性では有料動画アプリの利用頻度/時間が多くなっていました。また、同じ有料動画アプリの中でも、男性は料金が高い分コンテンツも多い『U-NEXT』、女性は海外ドラマやオリジナルコンテンツが充実している『Netflix』の利用時間シェアが長いことからみて、それぞれが好むコンテンツによって利用するサービスが選択されていることもわかります。
今後も視聴者が自分の嗜好や視聴スタイルに合わせてサービスを選択する傾向は強くなり、また各社がどのようなコンテンツカテゴリーに力を入れていくのかによっても市場ダイナミクスは変わってくるでしょう。このような環境で、コンテンツを提供する企業としては、消費者のサービス利用傾向の変化を把握することが求められており、常に消費者の視聴トレンドを追いながら最適にアプローチできるサービスを選択していくことが重要となります」