東芝デジタルソリューションズは、放送局をはじめとするメディア向け顔認識AI「カオメタ」のサービス提供を開始した。映像に映る人物の顔を高い精度でリアルタイムに認識し、人物特定することで、迅速かつ正確な番組制作などの業務をサポートする。
放送局では、取材、制作、編集、オンエアなど多くの業務で「映像のどのシーンに誰が映っているか」を非常に重視しており、番組制作現場では多くの時間と人手を割いて人物の本人確認を行っている。本人確認作業が間に合わないと放送素材をオンエアするタイミングを逃してしまうこともあり、番組制作における確認作業の正確性向上と効率化が課題となっている。
同社が今回提供を開始する「カオメタ」は、映像から人物を特定する顔認識AIで、メディアのクライアントからのニーズが高いリアルタイム性を重視したオンプレ版サービス。東芝独自の顔認識技術を活用している。さまざまな撮影環境や顔の向きに対して高精度でリアルタイムな認識を実現し、照明や顔の向き、表情といった多くの変動要因を含んだ画像からでも、正確に人物を特定するための情報を抽出できる技術を有している。複数枚の顔画像を用意する必要はなく、ひとりにつき1枚の顔画像を登録するだけで高精度な顔認識を実現。さらに、検出した顔の領域を追跡することで認識を途切れさせない人物トラッキング機能や、複数の映像を同時に扱うマルチ画面に映し出された小さな顔の認識など、放送局に特化した機能も搭載している。
今回、同サービスを提供するにあたり、日本テレビの協力のもと、選挙特番をモチーフにした実証実験で効果を検証。同サービスのプロトタイプ版を日本テレビの放送システムに接続し、2019年7月に放送された生放送特番「2019 参議院選挙特番」において、映像に映った立候補者の人物名確認作業などに適用。本人適合率99.74%の精度で顔を正しく認識し、本人確認作業時間が大幅短縮されたことで、映像素材のオンエア率が倍増した。
同社は今後も、番組制作現場の負荷軽減に向けた放送システムとの連携や、システム環境を意識せずに利用可能なクラウドサービス化など、放送局の業務に寄り添う機能の拡充を進める。また、リアルタイム認識に加え、今まで対応が難しかった大容量の過去の映像に映る人物特定(メタデータ付与)など、さらなる放送映像の活用に貢献していく考え。