[新連載]「ものづくり」とコミュニティのこれから ――FabCafeのこれまでを振り返る

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 本連載のテーマは「FAB」とコミュニティ。紹介してくださるのは、FabCafe TokyoでCTO兼事業責任者をつとめる金岡大輝さん。FabCafeの活動を通じて、クリエイターとビジネスプロジェクトのコラボレーションのありかたを探ります。初回は「FABのこれまで」についてです。

「FAB」前夜

 私の「FAB」との出会いは2010年の冬。出会いといっても、当時はそれを「FAB」とは認識していなかった。

 当時私はイギリスのマンチェスター大学で建築を学んでいた。図面は手書きであったし、模型も手作り。それらを毎週教授に見せて、3ヵ月かけて建築を計画するスタジオが年に3回ほどあった。モノを作ることは好きだったものの、アナログでの作業に少々のストレスを感じていた。

 そんな折に、先輩に連れられて行ったModelmaking workshop(建築模型制作室)でレーザーカッターに出会った。木材をデータどおりに切ったり削ったりできるレーザーカッターは、当時の私にとってはまさに魔法のツール。衝撃の出会いだった。

  レーザーカッターは学生に大人気で、とくに提出日の直前になると予約でいっぱいになる。ただ、Modelmaking workshopにはレーザーカッターが1台しかなく、予約をしたいときはボスのJimに伝え、彼が持っているノートに彼自身に記入してもらうほかなかった。しかも、レーザーカッターの操作はJimにやってもらうのがルール。Jimは学生に大人気で、忙しいと予約時間の半分も使えないことがしばしば。そんなときには、「また来週戻ってきて!」なんて軽く言われることもよくあった(その“来週”がしばしば提出日だったりする)。イギリス人らしく頻繁にお茶をしに出かけてるし、16:30にはきっちり帰宅してしまう。

B.15 Modelmaking workshopのJim Backhouse氏(右)

B.15 Modelmaking workshopのJim Backhouse氏(右)

 そこで私はJimがいなくても操作できるよう、自分でレーザーカッターの使いかたを覚え、3Dモデリングや2D CADを学んだ。またJimに予約を融通してもらえるよう、ほかの学生のレーザーカットを手伝ったりもしていた。

 そのころから、建築デザインよりもその周辺のエンジニアリング、レーザーカッターやウォータージェットカッター、3Dプリンターなどにより魅力を感じるようになり、デジタル空間で作ったモノをフィジカルに取り出せる体験に私は夢中になっていた。それは、経験やスキルがバラバラでも、データさえ作れればアイディアを素早く伝えられるという、非常にクールな体験だった。それが私と「FAB」の出会いである。

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