冒頭では、まず番所さんが「Fjord(フィヨルド)」について説明した。同氏は、アクセンチュア インタラクティブのことを「顧客体験を軸にビジネスを変革する組織」と説明する。活動内容は、「DESIGN」「BUILD」「COMMUNICATE」「RUN」の4つの領域に分かれる。
こうした活動内容のうち、デザインを担当するのが「Fjord(フィヨルド)」だ。フィヨルドは、元々2001年にロンドンで創立したデザインファームであり、アクセンチュアグループには2013年に参加。グローバルで33のスタジオを展開しており、計1,300名以上のデザイナーが在籍している。東京支部の「Fjord Tokyo」も2019年から活動している。
「ビジネスコンサルティングの得意なアクセンチュアに対し、Fjordは消費者・生活者に注目し、体験を変えることで結果的に企業価値を高めていくことを得意とします。より良い体験を届けるためにサービスや製品はどうあるべきかを考え、強いブランドを作ることを志向するデザイナー集団です」(番所さん)
クライアント事例として、グローバルではアメリカのディズニーやNBAゴールデンステートウォリアーズ、カーニバルなどを紹介。国内では伊予銀行やセブン&アイホールディングスなどが挙げられた。セブン&アイグループのメンバーシッププログラム「セブンマイルプログラム」では、サービスコンセプトの定義からサービスの開発までを、アクセンチュアグループが包括的に担った。
2021年のメタトレンドは「新しい領域の地図づくり」
Fjord Trends(フィヨルドトレンド)は、Fjordが最新のデザイントレンドをまとめたものだ。2008年から毎年発表されており、今年で14回目になる。
「Fjord Trends 2021は、変わりゆく生活者のニーズを満たすために、企業は新たな戦略、サービス、体験を提供しながら、未知の領域を開拓するチャンスがあると論じています」(番所さん)
具体的には、2020年のメタトレンド(個別の現象を引き起こす大きなトレンド)として、「原理原則の再考」を謳っていたことを挙げ、この傾向がCOVID-19の影響を受けて強まったとした。そのうえで分析した2021年のメタトレンドは、「新しい領域の地図づくり」と捉えている。
Fjord Trends 2021で掲げられた7つのトレンドのなかから、今回はとくに日本と関係の深い4つが紹介された。
Fjord Trends 2021
- 歴史的転換期
- DIYイノベーション
- 新しい時代の組織のあり方
- インタラクションの旅立ち
- 流動的なサプライチェーン
- 共感への挑戦
- リチュアルの消失と創造
1.歴史的転換期
2020年は人々が、どこでどのように暮らし、食べ、働き、体験するか、そのすべてが変化した。東京の流出人口が約40万人を超え、2014年以来最多に。エドアルドさんは、「これは永続的な変化ではないかもしれませんが、その影響は何年も続くでしょう」と説明する。
こうした変化にともない、人々の活動の仕方も対面からオンラインへとシフト。身近な存在であったコミュニティが破壊され、人々の関わりかたにも変化が起きた。また、移動パターンが変わり、自宅や近場での体験や交流が重視されるようになった。
「こうした変化により、人々とブランドとの接点が大きく変わり、ブランドのコミュニケーションの仕方にも影響を与えています。ブランドは、”どのように人々の生活に入り込むのか”ということを、考えなくてはならなくなりました」(エドアルドさん)
こうしたトレンドを代表する事例としては、オンラインで実施された「ロンドンマラソン」やバーチャルな購買体験が行える「VRパルコ」、ARを活用したナイキの取り組みなどが紹介された。