ゴールから設計!品質で勝負するために選択したサービスデザインの手法とは

ゴールから設計!品質で勝負するために選択したサービスデザインの手法とは
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 株式会社サイバーエージェントのCL事業部では、LDHのエンタテインメントコンテンツを届けるFanTechサービス「CL(シーエル)」を開発しています。その過程で培ったノウハウを連載形式でお届け。第2回はデザイン設計についてです。

 はじめまして。CyberLDHが提供するFanTech(ファンテック)サービスでデジタルプロダクトデザイナー兼チーフクリエイティブマネージャーを務める及川です。第2回のテーマは「CL」のデザイン設計です。品質で勝負すべく、エンジニアメンバーには疎まれる可能性があるとわかりながらも通常とは異なる進めかたをしたことについて解説します。

「とにかくイケてるプロダクトに」 経営層からの期待大なプロジェクトとして開始

 私は、前職を含めて20年以上にわたってIT業界で「デザイン」領域に触れています。

 サイバーエージェントには2012年に中途入社し、コミュニティ系サービスの立ちあげと運用を経て、2015年からAmebaのデザインチームのリーダーとして、デザイナー兼マネージャーを務めました。2018年から「CL」の立ち上げを行うタイミングでチームに参画しています。

 チームのマネジメント業務が増え、デザイナーとして自身のアウトプットを増やしたいと思っていたタイミングで、社長の藤田や執行役員兼クリエイティブ統括室 室長の佐藤から「とにかくイケてるプロダクトにしてくれ」という期待の大きい「CL」というプロジェクトに声をかけてもらいました。クリエイターとしてどこまでできるのかをチャレンジしたいという思いから、本プロジェクトへの参画を決めました。

開発済みのアプリと同じくらい細部まで作りこんだ「モックアップ」を完成させる

 プロジェクトの立ちあげ段階において、機能要件整理とプロダクトとしての設計はもちろん、審美性を考慮したUIデザイン制作を同時に進めました。それと並行して、さらにインタラクションやアニメーションなどの体感品質に影響する要素まで、すべての理想状態を再現したモックアップを制作。スマートフォンの端末上で触れると、そのモックアップは一見実装されたアプリと区別が付かない品質になりました。

 自分たちが何を作ろうとしているのか、市場やファンに対してどのようなサービスを提供しようとしているのか――。LDH社とサイバーエージェントの両社含めて多くのメンバーが関わるプロジェクトであったため、メンバー間でブレのない共通認識を形成するために、この手法を用いました。

 通常は、サービスとして提供しようとする価値にニーズはあるのか、または何らかの課題解決を意図したサービスであれば、狙い通りに機能するのかといった検討からスタート。そしてそれを検証するための最小要素に対して、仮説→実装(またはプロトタイピング)→検証というサイクルを回して精度を高めていくことが多いと思います。

 これに対し「CL」のプロジェクト立ち上げでは、LDHのコンテンツを視聴するという体験の価値については、前身サービスの「LDH TV」においてすでに検証済みでニーズが保証されていたこと。また、動画サービスのプロダクトデザインや開発においても「ABEMA」やそのほかのサービスでの経験が社内に蓄積されていたことで、最初から品質で勝負するための進めかたができたのです。

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