アドビ、ビデオコラボレーションプラットフォーム「Frame.io」をAdobe Creative Cloudメンバーに提供開始

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2022/04/14 07:00

 アドビは、ビデオコラボレーションプラットフォームであるFrame.ioを数百万にのぼるAdobe Creative Cloudメンバーに提供開始し、Adobe After EffectsのM1ネイティブサポートを含むAdobe After EffectsとAdobe Premiere Proの最新バージョンをリリースしたことを発表した。

 Frame.ioをAdobe Creative Cloudに組み込んだ「Frame.io for Adobe Creative Cloud」を活用すれば、プロデューサー、代理店、クライアントなどの主要なプロジェクト関係者がクラウド上で映像編集者とシームレスにコラボレーションできるようになる。これは、ポストプロダクション特化型のレビューおよび承認ワークフローであり、制作者が最終承認を得るまでのプロセスを迅速かつ容易なものにする。大量のコンテンツが作成され、遠隔地でのチームワークがニューノーマル(新常態)となりつつあるデジタル経済において、ビデオコラボレーションソリューションへの需要は高まってきている。

 Adobe Creative Cloudサブスクリプションの一環として提供されるこの機能が映像制作者にもたらすメリットは次のとおり。

  • 制作進行中の作品を世界中のレビューアー(人数無制限)と共有できる。
  • Adobe Premiere ProとAdobe After Effectsのタイムラインを離れることなく、レビューアーからコメントや注釈をビデオのフレーム単位で直接取得できる。
  • Frame.ioの高速ファイル転送技術により、100GBのFrame.io専用ストレージを介したメディアの高速アップロードとダウンロードが行うことができる。
  • 最大5つのプロジェクトに他のリモートユーザーと同時に取り組むことができる。
  • 映像編集者やモーションデザイナーなどの作業担当者にカメラからのフッテージを最速で、もっとも簡単かつ安全に受け渡せる「Camera to Cloud」ワークフローが使用できる。

 「Adobe Creative CloudとFrame.ioの組み合わせにより、映像の取り込みから編集、出力までをカバーする、映像制作のための世界で唯一の完結したエンドツーエンドソリューションを提供できるようになりました。これは、未来の映像制作のための強力なクラウドベースプラットフォームの構築に向けた第一歩です」と、アドビのデジタルビデオ&オーディオ製品担当バイスプレジデントのスティーブ ワーナー(Steve Warner)氏は述べている。

 著名な映画制作者はすでにAdobe Premiere ProとFrame.ioの組み合わせによるリモートコラボレーションのメリットを実感している。アメリカの映画スタジオA24が制作した『Everything Everywhere All At Once』(現在アメリカで公開中)では、このふたつのソリューションをワークフローに取り入れている。同社の映像編集担当であるポール ロジャース(Paul Rogers)氏は、次のように述べている。「Adobe Premiere Proは素晴らしく、映像編集に他のプログラムを使うことは考えられません。Frame.ioとの組み合わせでワークフロー全体が非常に直感的なものとなり、ツールの操作ではなく映画制作に集中することができました」

 最近のAdobe Premiere Proプロジェクトで注目すべきものには、ほかにも『After Yang』(A24配給)、『The Green Knight』(A24配給)、アカデミー賞ノミネート作『Ascension』(MTV Documentary Films配給)、TVシリーズ『Atlanta』(FX放映)などがある。

作業をより速く、より効率化するAdobe After EffectsとAdobe Premiere Proの最新アップデート

Adobe Creative Cloudのビデオアプリケーションの最新リリースも提供する。次のように、映像制作のプロフェッショナルやSNS動画制作者が魅力的な作品をつくれるよう支援する、数々の新機能とワークフローの改良が施されている。

Adobe After Effects

  • Apple M1へのネイティブサポートにより、M1 Macでは、Intel 10-Core搭載のiMac Proと比較して起動が最大7倍高速化し、コンポジションのレンダリングも2倍速くなった。これにより、モーションデザイナーのクリエイティビティの可能性が広がり、これまで以上に高速に反復改善のプロセスを回せるようになった。
  • Adobe Sensei搭載の「シーン編集検出」機能は、編集済みクリップに含まれるシーンの繋ぎ目を自動的に検出し、シーンを個別のレイヤーとして配置したり、編集ポイントにマーカーを作成して、プロジェクトのセットアップを迅速化する。
  • 「拡張ビューア」では、ドラフト3Dプレビューを有効化した際に、フレームの外側にある2Dおよび3Dオブジェクトも表示されるようになり、デザインの確認、3D空間のナビゲート、3Dレイヤーの移動がより簡単に行うことができる。フレームからはみ出た部分を隠したり、透明度を変更することで、最終的なショットの見た目を確認することも可能。
  • 3Dレイヤーの「ビン化インジケーター」は、同じ3D空間で一緒にレンダリングされ、互いに交差したり影を落としたりする3Dレイヤーのグループ(ビン)を示すため、Adobe After Effectsで2D・3Dの各レイヤーがどのように合成されるのかを視覚的に把握しやすくなる。

Adobe Premiere Pro

読み込み・書き出しエクスペリエンスの刷新とヘッダーバーUIの追加:先行的にパブリックベータ版に搭載されていたこれらの強化により、コアワークフローのデザインが一新され、より直感的かつビジュアルなものになった。

  • 新しい読み込みモードは、従来のように新規プロジェクトの仕様設定から始まるのではなく、異なる場所に保存されたファイルをブラウズしたりプレビューしながら読み込むファイルを指定していく、よりメディアにフォーカスしたワークフローを提供する。これにより、映像のプロはより速く、初心者ユーザーはより簡単にプロジェクトを始めることができる。
  • ヘッダーバーUIの追加により、読み込み、編集、書き出しの各主要タスクをすばやく切り替えられるようになり、より整理された集中型ナビゲーションが実現した。
  • 新しい書き出しモードでは、YouTube、Facebook、Twitterなどの人気SNSに作品をすばやく、直接アップロードできる。エンコーディングなど各SNSに合わせた推奨書き出し設定から選べるスマートプリセットを搭載しているので準備の手間も省かれ、初心者ユーザーも映像のプロも簡単にコンテンツを投稿できる。

Adobe Sensei搭載の「オートカラー」は、AIを使用して経験の浅いユーザーでも迅速にカラーコレクションをおこなえるようにする。初心者ユーザーにはカラー調整に慣れる環境を提供する一方で、経験豊富なユーザーには肌色や空色の微調整に入る前段までの作業を簡素化して、カラーコレクションが迅速におこなえるようになる。この機能は、2021年のAdobe Premiere Proパブリックベータ版で初めて「オートトーン」という名称で導入された。

パフォーマンスとワークフローの改善には、カラー分類によるマーカーの表示/非表示機能、オーディオクリップのリミックス処理の進捗インジケーター、トリムモードにおけるループ再生の改善などが含まれる。

Adobe Stockの無料アセットも追加提供される。数千もの新しいHDビデオ映像やモーショングラフィックステンプレートなどにアプリから直接アクセスできるため、際立つビデオが制作できる。

価格と提供開始時期

4月12日(米国時間)より、Frame.io for Adobe Creative Cloudは、Adobe Premiere ProとAdobe After Effectsにプリインストール提供される。Adobe Creative Cloudメンバーは、Adobe Premiere ProまたはAdobe After EffectsからAdobe IDを使ってFrame.ioにログインすることができる。Adobe Premiere ProおよびAdobe After Effectsアプリのアップデートは、4月12日(米国時間)より全世界に段階的におこなわれ、今週末までにはすべての資格あるメンバーに対して提供される予定。