日本では2021年後半ごろからバズワード化し、クリエイター界隈でも聞くようになった「NFT(Non-Fungible Token)」という言葉。簡単に説明すると、インターネット上にあるイラストや漫画、音声などのデジタルデータを、現実世界のように流通したり売買したりすることができる暗号技術(ブロックチェーン技術)で、「デジタル資産」とも言われています。
2021年にはNFTアートのオークションにて、アーティストのせきぐちあいみさんのVRアート作品が約1,300万円で、鉄腕アトムのモザイクアートNFTが約5,600万円で落札されるなど、高額取引もしばしば話題にあがっています。
しかし、最近生まれた新しい概念かつ複雑な仕組みのため実態がわかりにくく、参入障壁が高いと感じてしまうクリエイターも少なくありません。そこで連載の第1回では、「NFTの概念」や「クリエイターがNFTを活用するメリット」を解説します。
「Web3」で広がるデジタル作品の可能性
まずNFTを理解する上で欠かせないのが、「Web3」という考えかたです。Web3は2014年、暗号通貨のプラットフォームである「イーサリアム」の共同創設者ギャビン・ウッド氏が作った言葉だとされています。
Web1はユーザーがウェブサイトを閲覧するだけの一方通行だった「ホームページ期」(1995年~2005年)、Web2は双方のコミュニケーションが取れるようになったSNS期(2005年~2018年)と分類されています。
Web3は前述のとおり新しい考えかたということもあり、明確な定義は確立されていません。そのためさまざまな捉えかたがありますが、Mintoでは「ブロックチェーン技術を活用した分散型ウェブ・サービスの総称」と定義。Web3を構成する要素のひとつに「NFT」が含まれていると考えています。
冬の時代を経て、2021年にNFTブームが再燃した理由
弊社ではキャラクタービジネスの新しいありかたを模索する中で、2018年からNFTに着目し、ブロックチェーン技術を活用したサービスを提供してきています。
2017年にはカナダのIT企業・DapperLabs社が提供したNFT猫育成ゲーム「CryptoKitties(クリプトキティズ)」でNFTの可能性を感じたことをきっかけに、翌年の5月、宝石をモチーフにしたNFTゲーム「CryptoCrystal(クリプトクリスタル)」を開発・提供しました。
宝石をモチーフにしたキャラクターを「掘って」、「育てて」、「交換して」発掘するというアプリゲームです。キャラクターたちがブロックチェーン上に存在することにより、「代替不可能」、「有限」、「希少性」が担保されています。リリース前には海外を中心に約15万人の事前予約がありました。
しかし、2019年〜2020年はNFTが冬の時代となったことを受け、CryptoCrystalのアクセスも落ち込み、期待していたようなインパクトは生まれませんでした。
NFTが再び脚光を浴びるようになったのは、2021年に入ってからです。この背景には、「デジタルデータを刻む=NFTを生み出す」ことが技術的に二度とできないため、ヴィンテージワインの価値と同様、「古いプロジェクトやNFTであるほど価値がある」という考えが広がったためです。実際に、時間が経っても価値が上がり続けるNFTやプロジェクトを「Vintage NFT」、「Historical NFT」、「OG:Original Gangser」と呼ぶこともあります。CryptoPunksなど、2017年から2018年にリリースされたNFTプロジェクトの価値がOpenSeaで高騰し、CryptoCrystalも高額で交換されるようになりました。
実はCryptoCrystalが宝石をモチーフにしているのも、「宝石のように時間をかけて管理していることに希少性を持たせたい」という思いからでした。