こんにちは。DMM.com VPoE室のエクスペリエンスデザイナー・河西です。VPoE室のデザインチームはDMMの多岐にわたるサービス/チームのプロトタイプ作成や情報設計のエキスパートとして活動しています。ビジネス戦略のリードや開発を手がけながら、それらのナレッジを体系化したものを社内外に伝えたりしながら、健全なサービスや組織の成長を促すことがミッションです。
VPoE室の重要な役割のひとつは、組織やサービスの成長に貢献する人材を多く採用すること。なかでも私の使命は、「活躍できる人材を増やす」ための環境やフィールドを展開することです。
本記事では、メンバーの成長を促す環境づくりや、デザインチームがどのようにフィールドを発展させているかなどについて紹介します。
クリエイターの行動特性を評価する
DMMの評価制度には、スキルシートなどの技能的な能力査定や事業評価とは別に、クリエイターとして個人・組織の成長選択ができているかを測る「TechValue(行動評価)」を自ら制定し、フィードバックを行う仕組みがあります。
TechValueは「EVER - CHANGING」と、4つの指標「Agility」「Attractive」「Scientific」「Motivative」に分かれています。これらを解釈し、クリエイター個人だけではなくチームのマネージャーも含めてサービス/組織づくりに向き合い、自身の成長と紐づけてコミットできたかを相互評価します。「サービスの成長」と「組織/個人の成長」を比例させながら高めることができると考えているためです。
またこれによって「なんでもあり」なDMMのカルチャーだけでなく「当たり前を作り続ける」クリエイターマインドにも触れ、成長し続けるクリエイターのメンタルモデルを獲得します。
一般的に事業会社におけるモノづくり組織の多くは、事業の売上や成績に由来するKGIやKPIのツリー構造をもとにした評価になりやすいように思いますが、TechValueでは変動性の高い事業の成績や、特定の組織の制約にとどまらない、クリエイターのあるべき行動特性を育むための評価制度と言えます。
組織内で学習環境をつくる際の落とし穴
抽象度の高い評価システムは懸念点もあります。チームの習熟度や経験値によっては、普段の業務やプロジェクトの中での解釈の幅が狭くなり、これらのシステムが十分に活かされないこともあります。
必ずしもすべてのクリエイターが、日々の業務や関わるサービスでの経験を通して成長したいと考えているわけではありません。新たなインサイトがなくなれば、次第に人材の流動性は鈍化し、モチベーションは失われていきます。
多くの企業が、クリエイターの学習を支援する制度や福利厚生を整えたり、インセンティブを与えたりといった工夫をしていますが、人間は不思議なことに「役に立ちたい」「達成したい」という内発的動機付けから行動したことに「報酬を与えられる」「圧力をかけられる」などの外発的動機が加わることにより、やる気がそがれてしまう現象があります(図1)。書籍購入や資格取得のサポート、カンファレンスやイベントの金銭的な支援制度を整え上司が部下に参加を促したり、ペアワークなどによりシニアクラスのクリエイターに若手メンバーの指導を行わせたりといったケースでは、逆に若手メンバーが学習行為に消極的になったり、無気力になってしまったりすることがあるでしょう。
このことからも、学習フィールドを設ける際に重要なのは、恣意的でなく、いかに内発的な動機に働きかけるか、であることがわかります。組織だけでなく、業界やチームから見た自身のキャリアの自己評価と他己評価を「will」「can」「must」で見える化したり、業務で得た経験やスキルのレベルと自身の成長曲線がフロー状態(図2)にあるかなどをチーム内でふりかえる場を設けたりすることも大切です。