適用範囲を広げ、より良いものにするために デザインシステムを“拡張”するポイントとは

適用範囲を広げ、より良いものにするために デザインシステムを“拡張”するポイントとは
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 これまでさまざまな組織のデザインシステム構築や運用を支援してきたグッドパッチ。本連載ではデザインシステムにフォーカスし、その概要や歴史、導入から運用、構築にいたるまで網羅的にお届けします。第6回は「デザインシステムの拡張」についてです。

 こんにちは。グッドパッチのUIデザイナーの乗田です。前回の記事では、プロダクトデザインを実施する際に必要なデザインシステムの要素の構築方法について紹介しました。第6回では、「デザインシステムの拡張」をテーマに、プロダクトデザイン以外の領域や組織のメンバーにデザインシステムを広げる手法についてお届けします。

はじめに

 デザインシステムの基本的な要素を構築したあと、デザインシステムをさらにより良いものにするためには「拡張フェーズ」が不可欠です。デザイン原則、スタイルガイド、コンポーネント、コンテンツガイドラインなどの基本的な要素を超え、その適用範囲をブランド領域やコミュニケーション領域へと広げることで、デザインシステムの恩恵を組織全体が享受できるようになります。

 またそれだけでなく、顧客とのタッチポイントの最適化によってサービスとユーザー間のコミュニケーションがより良いものになったり、ブランドアイデンティティが強化されたりといった効果もあります。

 これらを最大化させるために必要なデザインシステムを拡張する方法やポイントを「ブランド領域への拡張」「コミュニケーション領域への拡張」「組織への普及と拡大」の3つのテーマに沿って解説します。

1. ブランド領域への拡張

 「ブランド」は企業/プロダクトの存在価値やユニークさを社内外に伝達する際に機能するものです。ブランドガイドラインは、後述するコミュニケーションデザインやプロダクトデザインの根幹となる要素。言語表現(ブランドアイデンティティ)と非言語表現(ビジュアルアイデンティティ)を組み合わせてアイデンティティを確立し、マーケットにおける企業・プロダクトのポジションを明らかにする役割を果たします。

 ブランドガイドラインを活用することで、プロダクトデザインの一貫性が維持されるだけでなく、顧客とのコミュニケーションがブランド指針を体現したより良いものになるなどの理由から、デザインシステムにブランドガイドラインが包括されることは大きな価値があります。

ブランド領域のコンテンツが充実しているデザインシステムの例(出典:Francfranc Design System)
ブランド領域のコンテンツが充実しているデザインシステムの例(出典:Francfranc Design System

ブランドアイデンティティ

ブランドアイデンティティには、パーソナリティやパーパス、トーンオブボイスなど、ブランドの個性や価値観を確立するための言語表現が含まれます。ブランドの哲学や社会における役割、存在意義を市場に対して説明することで認知や信頼を獲得する機能を持ちます。

ブランドパーソナリティ

ブランドパーソナリティは、ブランドの性格や人格、ユーザーとの接しかたを言葉で定義したもの。「ブランドが顧客とどのようにコミュニケーションを取るか」という指針を明確にするために必要な要素です。デザインシステムに組み込むことで、ブランドのありかたやユーザーへの姿勢が各タッチポイントで一貫したものになるため、結果として顧客の信頼を深め、ブランド認知を高める効果が期待できます。

トーンオブボイス

トーンオブボイスはブランドが伝えるメッセージのスタイルや、情報に付随する感情を定義したものです。デザインシステムに組み込むことで、すべてのコミュニケーションで一貫した文章表現を維持し、前述したブランドパーソナリティをより際立たせることができます。トーンオブボイスは、顧客との関係構築を助け、信頼と共感を促進することで、結果的にユーザーのエンゲージメントやロイヤリティを高める効果があります。

ビジュアルアイデンティティ

ビジュアルアイデンティティにはロゴ、カラースキーム、タイポグラフィ、キャラクターなど、ブランドの印象を確立するための非言語表現が含まれます。短い時間でブランドを即時に伝達したり、直接的な印象を構築する役割を担います。

ロゴ

ロゴのガイドラインは、サービス/コーポレートロゴの使用方法やサイズ、色、配置を規定したものです。デザインシステムに含まれることですべてのタッチポイントでの視認性が規定どおりに保たれます。結果として、マーケットでのサービスや会社に対する認知度、影響力が高まります。

キャラクター

キャラクターガイドラインは、ブランドが使用するキャラクターのデザイン、性格、行動パターンなどを定義しています。これをデザインシステムに組み込み、一貫したキャラクターを表現することで顧客との感情的な結びつきを深められます。その結果、親しみやすさと記憶の定着度合いが増し、ブランドロイヤリティが高まります。

 ブランドガイドラインを活用することで、プロダクトデザインとコミュニケーションデザインにおけるブランドの視覚表現の一貫性が維持されるほか、ブランドらしさや振る舞い、口調などに関するイメージの乖離も防ぐことができます。

 このように、デザインシステムはブランディングにおいて非常に効果的なアセットとなりえます。正しく設計されたデザインシステムは、ブランドアイデンティティの明確化、一貫性の保持、そしてブランド価値の向上に大きく寄与し、結果として顧客の満足度や良い体験を支える基盤となるのです。

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