多様な事業とサービスをつなぐために Figmaでのプロトタイピング導入と生成AI活用法とは

多様な事業とサービスをつなぐために Figmaでのプロトタイピング導入と生成AI活用法とは
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 FigmaやFigJamを活用するDMM.comが、その効果的な活用や実践法について解説する本連載。第5回は、「Figmaでのプロトタイピング導入と生成AI活用法」についてです。

 こんにちは。合同会社 DMM.com(以下、DMM)のデザインセンターにあたるデザイン部 で部長を務める齊藤です。普段はUI/UX領域を起点にしたスペシャリストとデザインマネジメント職と並行する、プレイングマネジメントに従事しています。

 DMMでは2018年以降、デザイナー職の約100名に対し、職能評価・人材教育・先進技術の方針策定や推進に努めること、そのうえで重要なテーマのひとつに「事業とサービスを理解し、他職能人材と協業しプロダクトを前進させるデザイナーを一人でも多く輩出すること」を掲げてきました。

 60以上の事業をさまざまな業態で展開しているDMMにとって、ビジネスとプロダクトの構築、そしてグロースに至るまで、なくてはならない重要なプロセスである「プロトタイピング」。本記事ではその背景と、実際の取り組みについて解説していきます。

“プロトタイピング能力”をDMMデザイナーの人材設計に組み込むワケ

 デザイナー職の人材設計を進める際に力を入れてきたのは「インハウスデザイナーの活躍像を設け、プロダクトデザイナー職を育成すること」です。とくに「スピード」と「変化」への対応が求められるDMMデザイナーにとって、「デザイン」という専門性を発揮するアプローチとして、プロトタイピングは非常に重要です。

 なぜなら、多種多様な業態や商材を支えるデジタルプラットフォームを多く開発・運営しサービス群を形成しているのが、DMMの企業特性だからです。それらをふまえ、デザイナーに期待される能力は次のとおりです。

  • CX(カスタマーエクスペリエンス):マーケティング活動とのプロダクトの親和性
  • UX(ユーザーエクスペリエンス):サービスの優位性やシーズを届けきる体験設計
  • UI(ユーザーインターフェース):情報設計によるUXの具現化
  • BX(ブランドエクスペリエンス):ブランド力を活かしてサービスの信頼を増幅させる

 これらは事業状況(フェーズ)によって変化するものの、その多くでUI/UXのデザイン力が求められます。

プロダクトサイクルごとに求められるスキルが変わる。
プロダクトサイクルごとに求められるスキルが変わる。

 UXとUIを考え抜いて出来あがったプロダクトイメージを素早くステークホルダーへ確認し、実装前の調整を繰り返したうえで開発プロセスに進むことができるプロトタイピングは、DMMにとって欠かせないプロセスなのです。

 上の図で示した各フェーズの検討に関わるのは、開発のエンジニアやディレクターだけではありません。事業企画、マーケティング、営業担当者のほか、重要な機能やサービス全体に影響する事項については事業責任者や役員レイヤーまで関与することになります。

 長期の開発においては、そういったメンバーとの合意形成なしに、プロダクトのリリース後にビジネス要求やサービスとしてのアイデンティティが満たされているかがわかるようではリスクが高すぎます。

 このような背景から、デザイナーもひとりのビジネスパーソンとして、次のことが期待されています。

  • ビジネスの機会損失を極小化するスピード
  • 多種多様なビジネス要件のバランスや社内外の状況の変化への対応力
  • 他職能者とコラボレーションするための高いコミュニケーション力/説明能力

 プロトタイピングはこれらを適切に表現できるという意味でも、極めて有効なアプローチになっています。