人手不足や地方問題をVTuberが解決! VTuberと他業界を掛け合わせた事業開発の成功法

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VTuberを通してECサイトでの商品販促を加速させる「バーチャル物産展」

 uyetが実施する「バーチャル物産展」はオンライン上で繰り広げられる物産展。VTuberたちが特設オンライン会場で生配信を実施し、出品される商品をVTuberが配信内で「食レポ」してPRすることにより、商品の販促を狙います。

出典:YouTube【バーチャル物産展 梅雨の飲み倒れフェス】食レポアーカイブ【紅羽ミトラ/Vtuber】(「バーチャル物産展」の生配信の様子)
出典:YouTube【バーチャル物産展 梅雨の飲み倒れフェス】食レポアーカイブ【紅羽ミトラ/Vtuber】(「バーチャル物産展」の生配信の様子)

 「EC販売をしてみたいがやりかたがわからない」「ECサイトを開設したが上手く売上につなげることができていない」「自社商品をSNSを用いてPRをしたいもののどのように進めればよいかわからない」といった事業者さんに向けて、VTuberを活用したネット上での商品プロモーションを行っています。

 実際にバーチャル物産展を通して初めてのEC販売が成功したり、通常のEC販売よりもし倍以上の売上数を記録したりと、SNSでの商品PRにも貢献しています。

 2024年はJA全農さんの運営するECショップである「JAタウン」と共同でバーチャル物産展を実施した際には、地方の物産品を全国に発信し、イベント開催時はECショップが一時サーバーダウンするほど大盛況となりました。

VTuberを活用しふるさと納税のPRを図る「まちスパチャプロジェクト」

 次に紹介するのは、uyetで実施している「まちスパチャプロジェクト」。VTuberとSNSを活用し、さまざまな地域のふるさと納税の拡大やシティプロモーションに貢献しています。

 このプロジェクトでの狙いは、若年層をターゲットとした地域の認知拡大や観光客の誘致、若年層に対するふるさと納税への興味関心の強化などを通して寄附者増加を図ること。そのために、VTuber出演の漫画・生配信の実施や地元事業者さんとのコラボ商品の開発、現地イベントの実施、ふるさと応援広告企画と呼ばれる“推し活”文脈の取り組みなどを行い、VTuberと地域を絡めた企画を実施しています。

まちスパチャプロジェクトで制作されたマンガ
まちスパチャプロジェクトで制作されたマンガ

 これらの取り組みを行うことで、SNS上では本取り組みに関するUGCが生成されたほか、VTuberファンのコミュニティ内での情報発信を促すことができ、それらが自然とシティプロモーションが行われる仕組みをつくりました。

 またコラボ商品をふるさと納税の返礼品として取り扱うことで納税数が増えたり、現地イベントやふるさと応援広告企画を行うことで観光客がその地域に訪れたりといった機会創出にもつながっています。

まちスパチャプロジェクトによる現地イベントの様子
まちスパチャプロジェクトによる現地イベントの様子

他業界の課題を解決するために大切なのは、「解像度」を高めること

 ここまで、他業界の課題解決のために開発されたVTuber事業の事例についてお伝えしてきました。

 僕が「バーチャル物産展」や「まちスパチャプロジェクト」を行う中でひしひしと思うことは、こういった他業界を絡めた事業を成立させるためには、VTuber業界や事業を行う上でターゲットとなるユーザー(VTuberファン)だけでなく、関わってくる他業界への解像度を高めることも非常に大切だということです。

 つまり重要なのは、VTuber業界と他業界に対する解像度の高さの“バランス”です。どちらかが高くても、もう片方の解像度が低ければその事業は成立しませんし、事業を開発する上で解決したいと思っていた課題を解決することもできません。

 通常であれば、自分が関わっている業界のことはよく知っていても、他業界のことは詳しくないケースがほとんどだと思います。だからこそ、エキスパート人材やプロによるコンサルティングの需要があるわけですが、事業に関わる人は、関連のあるほかの業界の知識も兼ね備えておく必要があると考えています。

 その業界の基礎知識だけではなく、課題とされていることや大切にされている文化/ルール、ファンの消費行動や心理など、事業を行う上で頭に入れておくべきことはたくさんあります。

 とくにVTuber業界は上述したような特有のカルチャーがあり、この文化やルールからそれると、課題解決をするどころか炎上案件となる可能性もあるのです。

自らの実体験や情報回収を通して「解像度」を高めよう

 uyetで「バーチャル物産展」の事業が立ち上がったころに行ったのは、実際に商品を取り扱う事業者さんの会社へ出向いたりしながら、国内の食業界や事業者さん自身が今抱えている課題や商品の魅力・生産者の想いなどを直接聞き、それを踏まえて「VTuber」というコンテンツに何ができるかを考えていくことです。

 「まちスパチャプロジェクト」の場合も同じく、できる限りスタッフが現地に出向きました。その地域住民の方と実際にお話をする中で、その自治体がどういった課題を抱えているか、またその地域の魅力は何なのかをしっかり体感し理解したうえで、どのような取り組みができるのかを考えていきました。

 ただ「商品を売る」「地方をPRをする」のではなく、その業界の魅力や抱えている悩みなどを吸収すること。そして、解像度を上げたうえで事業を創り出すことが、皆さんに楽しんでもらうこともでき、かつ業界の課題を解決できる事業づくりにつながるのではないかと考えています。