ガートナー、CXに影響をもたらす先進テクノロジ・トレンドトップ5を発表 1位はAI

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2020/01/27 17:35

 ガートナー ジャパン(以下、ガートナー) は、今後3年間で企業のカスタマー・エクスペリエンス (CX) プロジェクトに大きな影響をもたらす先進テクノロジ・トレンドのトップ5を発表した。

 ガートナーが2019年4月に世界で実施したCXのイノベーションに関する調査 (Customer Experience Innovation Survey) において、今後3年間で企業のCXプロジェクトに大きな影響をもたらす先進テクノロジについて尋ねたところ、人工知能 (AI) が53%ともっとも多く、次いで仮想顧客アシスタント/チャットボット (39%)、マルチチャネル顧客エンゲージメント (37%) が挙げられた。

 ディスティングイッシュト バイスプレジデントのドン・シャイベンライフ (Don Scheibenreif)氏は次のように述べた。

「先進テクノロジはそれ自体がディスラプティブ (破壊的) なテクノロジですが、それと同時に、企業に競争優位性をもたらすテクノロジであることはあまり認識されていません。先進テクノロジのほとんどは、ガートナーのハイプ・サイクル上で『生産性の安定期』に至るまでに5~10年以上かかるとみられています。先進的な企業は、これらのテクノロジが自社のCXに影響をもたらし、CXを改善するものの、利益が出るまでには何年もかかるという前提で実装を進めていくでしょう」

 ガートナーが発表したCXに影響をもたらす先進テクノロジ・トレンドのトップ5は、以下のとおり。

トレンド1:AI

AIは多様なインテリジェンスと自律性から成る多数のテクノロジで構成されています。ガートナーはAIのテクノロジを大きく3つのタイプに分けています。ひとつめは人間のようなエンゲージメントをもたらすシステムであり、コンピュータ・ビジョン、チャットボット/エージェント、自然言語ベースのユーザー・インタフェースが挙げられる。ふたつめは自動化と最適化のためのテクノロジであり、自己最適化スマート・マシン、自律走行車、リアルタイム脅威検知システムなどが挙げられる。3つめは、データ、画像、音声に基づく隠れたシグナルや予測からインサイトを導き出す、ディープ・ニューラル・ネットワークなどの高度なテクノロジー。

企業は、膨大かつ豊富で、増え続けるデータに対応しきれなくなっており、人間のインサイトに加えて、AIテクノロジとアナリティクスのスピードと精度が、未来のCXに求められる継続的なインテリジェンスを提供するとガートナーはみている。

ガートナーは、2023年までに、デジタル・コマースにAIを活用する企業の80%が、顧客満足度、売上、コスト削減のいずれかにおいて少なくとも25%の改善を達成すると予測している。

トレンド2:仮想顧客アシスタント/チャットボット

ガートナーの2019年CIOアジェンダ・サーベイにおいて、CIOの26%は、自社で使用しているAIベースのメイン・アプリケーションがチャットボットであると回答。テキストや音声会話を介したアプリケーションやサービスとのチャット機能は、CXに新しいイノベーションをもたらしている。

ガートナーは、2030年までに、顧客サービスに関する10億件のリクエストが企業所有のボットによって自動生成されると予測。シャイベンライフ氏は次のように述べている。

「仮想顧客アシスタントやボットは、膨大かつ反復的な顧客サービスのリクエストに24時間体制で対応する役割を果たします。将来的には、顧客も気軽なエクスペリエンスを望むようになり、顧客主導での自動化を実現するセルフサービスが標準になるでしょう」

トレンド3:マルチチャネル顧客エンゲージメント

マルチチャネル顧客エンゲージメントは、顧客とやりとりを行うすべてのチャネルとデバイスに対応し、顧客エンゲージメント・ルール、コンテンツ、ワークフローを処理する。顧客とのあらゆるチャネルでのエンゲージメントは、AI機能により自動化され、それにより、パーソナライゼーション、高度なアナリティクス、ビデオチャット、共同ブラウジング、モバイル・サポートの利用が促進される。

2022年までに、顧客サービス応対では、機械学習、チャットボット、モバイル・メッセージング・アプリなどの先進テクノロジが活用され、その割合が2018年の15%から70%にまで伸びると、ガートナーは予測している。

トレンド4:イベント駆動型アーキテクチャ

イベント駆動型アーキテクチャ (EDA) は、リアルタイムに知覚するデジタル・ビジネスの中核。企業は、IoTデバイス、モバイル・アプリケーション、エコシステム、ソーシャル・ネットワークやビジネス・ネットワークなどのイベント情報を「聞く」ことで、物理的な世界の「イベント」をデジタル形式で捉える。たとえば、顧客が注文すると、イベントが発生する。EDAベースのシステムでは、ソースによってデジタル・レコードが生成され、そして、ネットワーク全体に通知され、関連する担当者に認識・処理される。

2022年までに、顧客エンゲージメント・ハブ・アーキテクチャに取り入れられるリアルタイムのイベント・ストリーミングやストリーミング・アナリティクスは10%超にとどまると、ガートナーは予測。

トレンド5:モノのインターネット (IoT)

IoTは、モノ、通信、アプリケーション、データ・アナリティクス、セキュリティ、モニタリング、マネジメント、プロフェッショナル・サービスを含むエコシステムで構成されている。2022年までに、230億のモノがインターネットにつながるようになると、ガートナーはみています。IoTデバイスはさらにインテリジェントになり、家庭や医療施設を含むあらゆる場所で、AI対応システムの能力を潜在的に提供するようになると期待されている。

 ガートナーはきたる2020年2月13日~14日、東京コンファレンスセンター・品川 (東京都港区) において「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジ サミット 2020」を開催。本サミットでは、「将来のカスタマー・エクスペリエンスに備えよ」をテーマに、CXの施策を実現するための取り組み、主要な新興テクノロジとトレンド、先進企業による事例など、CXに関する知見と洞察を提供する。