ベンチャーキャピタルのD4V(Design for Ventures)は、日本国内のスタートアップにおけるデザインの活用・運用の実態調査に基づくレポート「Design in Japanese Start-ups 2022」を発表した。
レポートでは上場前のスタートアップ約150社に所属する経営層の調査回答をもとに、国内スタートアップにおけるデザイン人材の雇用状況や役割、デザインを実務に取り入れるうえでの困難などを取りまとめ、専門家の知見や取り組みかたのヒントとともに紹介している。
デザインやユーザー体験を重視したプロダクトの成功や、デザイナー採用市場の活況は、 日本のスタートアップでデザイン人材の活躍が広がっていることを示唆している。一方、スタートアップにおけるデザイナーの雇用状況や担っている役割の実態について、現況を俯瞰する情報が不足していた。
同社は経営とデザインの両面でスタートアップの成長を支援するベンチャーキャピタルとして、スタートアップの経営者とデザイナー双方に役立つ情報の提供を目的に「Design in Japanese Start-ups 2022」のアンケート調査を実施。国内外の専門家へのインタビュー内容や、同社に蓄積したスタートアップおよびデザイン実務に関する知見とともに、調査結果をレポートに取りまとめている。
調査結果の概要
調査の結果からは、優れたデザインと優れたユーザー体験が多くの製品の成功に不可欠であるという認識が日本の起業家の間で広まっている現状とともに、デザイナーとその役割に対する幅広い期待が見られた。一方で、日本のスタートアップがデザイナーを採用し、組織機能のひとつとしてデザインを組み込み、成長させていく道のりには、採用をはじめとする多くの困難や試行錯誤がともなう実態も明らかになった。
6つのKey Insight
1.日本のスタートアップの約半数がデザイン業務を内製化している(図1):副業・パートタイムを含め、デザイナーをひとり以上雇用し、デザイン業務の内製化に乗り出しているスタートアップ企業の割合は全体の57%となった。
2.日本のスタートアップでは、シリーズAの調達までデザインチーム(社内にふたり以上のデザイナーがいる体制)を組成しない会社が多数を占める:デザイナーがふたり以上所属してデザインチームを組成している会社の割合は、シード・プレシリーズAまでのアーリー期には10%程度にとどまり、シリーズA以降のグロース期で半数近くにまで伸びる。
3.日本のスタートアップにおいてデザイナーの貢献はブランディングとUI/UXが中心で、プロダクト戦略に関わる機会は限られている:自社デザイナーが担っている役割としてブランディング、UI・UXデザインを挙げるスタートアップ企業が90%を超える一方、プロダクト戦略や経営戦略といったビジネスのより上流にデザイナーが貢献している企業は大きく割合を下げる。
4.日本の起業家の間で、ブランド構築から製品開発、顧客の獲得に至るまで、デザイナーがスタートアップの事業にもたらすポジティブな影響は幅広く認識されている。(図2)
5.創業時にデザイナーがひとり以上在籍している日本のスタートアップ企業は全体の5分の1:創業当時からデザイナーが在籍しているスタートアップは全体の20%。シード、プレシリーズAを合わせたアーリー期の採用が全体の約半数を占める。
6.「採用」が日本のスタートアップがデザイン機能を強化するうえで最大の課題に。(図3)
「Design in Japanese Start-ups 2022」調査概要
153件の回答を、日本を拠点とする未上場のスタートアップ企業(ステージ問わず)の経営・マネジメント層から回収。
- 調査方法:オンラインフォーム記入によるアンケート
- 調査実施時期:2022年8月
- 調査の設計・配布・実施:D4V