フォントワークスは、フォントのさらなる可能性を求めて、高齢者、視覚障がい(弱視)者にとって可読性と判読性が高いフォント「インクルーシブデザインフォント(IDフォント)」の開発・リリースをした。
同社はこれまで、ユニバーサルデザインという観点からUDフォントの研究と開発を行ない、すべての人に有効なデザインを目指したUDフォントを提供してきた。
しかし、多方面に渡るユーザーへのヒアリングのなかで、すべての人に有効なデザインをひとつ行うよりも、特定のグループごとに最適化したものを提供するほうが、結果的に、すべての人に最適なデザインを届けられるのではないのかということを考えるようになった。
最初のUDフォントの研究では、高齢者と若年者間には見えかたにあまり違いがないと結論づけ、同社UDフォントを2015年よりリリース。しかし、前段で述べた考えに照らすと「あまり違いがない」とするのではなく、小さな違いに対応する必要があると考え、高齢化が進む社会にも対応ができるように取り組みを開始いたしました。また、同時に高齢者だけではなく、視覚障害者(弱視)のためのフォントの研究と開発も進めてきた。
2年にわたる研究結果をもとに、今回インクルーシブデザインの概念を取り込んだ高齢者・視覚障害者(弱視)にとって最適な「インクルーシブデザインフォント(IDフォント)」が完成した。
インクルーシブデザインとは
高齢者、障害者、外国人など、従来デザインプロセスや製品・サービスのユーザーから除外されてきた多様な人々を、デザインプロセスの上流から巻き込み、一緒にデザインを行っていくロンドンの英国王立芸術大学院から生まれたデザイン手法のこと。
「インクルーシブデザインフォント(IDフォント)」書体説明
美しく読みやすい、長文などに最適な「UD角ゴ_スモールB」をベースに、高齢者や視覚障害者(弱視)にとって、より一層可読性・判別性を向上した書体。
1.可読性の向上
通常、漢字の書体デザインは、縦画を横画より太くすることで画線の太さが同じに見えるように調整するが、IDフォントの漢字は、横画を従来のものより太く調整。
理由として、漢字の書体デザインはいくつかの錯視を意識しており、そのなかに横画が太く見える(フィック)錯視がある。このため、通常は縦画を横画よりも太くすることで画線の太さが同じに見えるように調整するが、この錯視量は加齢にともなって変わると言われている。そこで、比較評価実験をしたところ、横画を太らせたフォントのほうが読みやすいと判断され、横画を太くした。
2.判別性の向上
研究結果より判別性が芳しくないと判明した文字「ソ」「ン」「シ」「ツ」「ぼ」「ぽ」「l(エル)」「0(ゼロ)」「水」「門がまえ(部首)」ついて、判別性向上のためデザインを変更した。
今後、インクルーシブデザインフォント(IDフォント)は、さらに特定のグループにとって「可読性」「判別性」が高いフォントを開発し、より多くの人に最適なフォントを届けていく。